3 / 178
2話 王太子の不貞
しおりを挟む王太子は、側近候補たちに合図し、リヒトを会場から引きずり出し、学園の門の外へと放り出した。
「ああ… ハメられた!!」
<恐らくは、殿下の側近候補、ブラウ公爵令息とリーラ公爵令息に!!>
立たせないよう、リヒトの身体を、両脇から押さえつけていた、2人のことだ。
午前中、雨が降ったせいで、ぬかるんだ道の真ん中に、座り込み…
卒業パーティー用に母親と共に選んだ礼装のドレスコートが、泥水を吸い淡いレモン色が汚れてゆくのも気付かず、リヒトは涙がこぼれ落ちないように顔をおさえた。
子供の頃、"花の令息"の神託が下ってすぐ王太子フリーゲと婚約を交わした。
その王太子に、たった今リヒトは裏切られ捨てられたのだ。
王太子フリーゲのために、育てられたリヒトは…
王太子だけを思い、見つめ、慕い、生きて来た。
<私はどうすれば良かったの? 本当にわからないよ! 私には殿下のことがわからない!!>
学園に入学してから、生真面目で面白味の無いリヒトはフリーゲに嫌われていると、薄々だが気付いていた。
半年ほど前、生徒会の休憩室で…
だらしなく下衣だけを脱ぎ、フリーゲとギフトは乱れた息づかいで、ソファに転がり抱き合っていた。
世慣れていないリヒトは、最初2人が、何をしているのか、理解できず…
苦しそうな呼吸をしていると、心配でおずおずと、声をかけた。
『…大丈夫ですか、王太子殿下?』
『リ… リヒト!! 何て無粋な奴だ…っ!! さっさと出て行け!! 冷血人間が!!』
顔を真っ赤にして半裸で飛び起きた王太子に、罵詈雑言をあびせられ休憩室を追い出されると…
廊下で待ちぶせていた側近候補たちは、ニヤニヤと笑いリヒトを侮辱した。
『フリーゲ殿下も気の毒に… 婚約者に魅力が足りないから、こうなっても仕方ないさ!』
『本当にそうだな! 口を開けば、説教ばかりで、こんなに可愛げの無い奴を、誰が好ましく思うのさ?』
<決定的だったのは、フリーゲのキスを拒み… 婚姻前に私の身体に触れることを、許さなかった… あの時だ!>
『お前は婚約者のくせに、味見もさせない気か?! つまらない奴だ! お前と一生を共にするなど、考えただけでもウンザリする!!』
「ふふふっ… 味見だって…っ?! アハハハハ―――ッ!!」
ついに、耐えられなくなり、リヒトは狂ったように、笑い出した。
フリーゲとギフトが、淫らに腰を振る姿が、今も心に焼き付いて…
王太子に触れられることを考えると、リヒトは嫌悪感で鳥肌が立つのだ。
<吐き気がする!! どうすれば、この吐き気を止められる?!>
ことがことだけに誰にも相談できず、密かにリヒトは一人で悩み続けていた。
<王太子を嫌悪する私は、王妃にはなれない… 王太子のために、生まれて来たような人生なのにだ!!>
たった今、自分に起きた出来事は…
リヒトにとって、喜劇であり…
悪夢であった。
20
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
いつまでもドアマットと思うなよ
あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる