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147話 リーラ騎士団
しおりを挟む「…父上っ!」
一目でプファオ公爵は、牢内で暴行を受けたと分かる傷や痣が、顔や身体にあり…
握った拳を震わせながら、リヒトは奥歯を食いしばり、父の姿を凝視し続けた。
「もう少しの辛抱だ、もう少しだけだ!」
隣に立つシルトが、リヒトの震える手にそっと触れなだめる。
2人は観客席の左端に立ち、処刑台を睨む。
今回はリヒトが姿変えのペンダントを下げ、顔と髪色を変えている。
襲撃の時間まで、リヒトは処刑台のすぐ近くで待たなければならないからだ。
反対側の右端には顔を半分隠すようにヴァルムとタイヒ、プファオ騎士団の騎士たちがリヒトと同じように怒りを抑えて反撃の時を待っていた。
真ん中にはシュナイエン騎士団の騎士たちと共に、王立騎士団の生き残りの騎士たちが、騎士服を脱ぎ貴族にまぎれて待機している。
王立騎士団の騎士たちも事情を聞き、国の一大事に自分たちばかり休んではいられないと、騎士団長と副団長を含め、満身創痍の身体を引きづるように、処刑場に来ていた。
享楽にふける貴族たちにも怒りを感じるが…
王立騎士団の騎士たちは、リーラ公爵の失策で魔窟の森の前で、多くの騎士仲間を亡くした痛みから、これ以上はリーラ公爵に好き勝手はさせないと復讐心に燃えているのだ。
王立騎士団本部を預かる老騎士のつてを頼り、処刑場には8人の近衛騎士が来ると聞いていた。
処刑場の至る所に、暗い紫色の騎士服を着た騎士たちが… 襲撃者(シルトたち)に、警戒している様子だ。
「これは困ったぞ…? やはり出て来たな、リーラ騎士団が」
困ったと言いながら、シルトの顔に少しも困った様子は無く…
むしろ、獲物を前にした肉食獣のように、シルトは掌をすり合わせ、獰猛な笑みを浮かべた。
敵と味方、人数的には五分五分だ。
リーラ公爵家にもお抱えの騎士団が存在し、普段は南方寄りの地域にある肥沃な領地を公爵の代わりに守り、王都には不在だったが…
シルトたちがプファオ公爵家の親類とブラウ公爵の家族を脱獄させたために、警戒したリーラ公爵が領地から、騎士団を呼び寄せたのだ。
「あっ…! シルト様、あの紫色の髪はリーラ公爵家の者ではないですか?」
「そうだな、恐らく直系の者だ まだ若いからリーラ公爵の長男だろう」
紫の髪をした青年と、その後ろに2人の近衛騎士が続く。
「良いぞ、近衛騎士が8人揃った! よしやれ、リヒト!! 仕留め損ねるなよ?!」
ニヤリと笑いシルトはすぐ近くに立つ、2人のリーラ騎士団の騎士を剣の柄で、難無く気絶させた。
シルトの悪い笑みに釣られて、リヒトもニヤリと笑う。
父親そっくりの赤金色の瞳を光らせて、バチッ…! バチッ…! と音を立て、リヒトは掌に稲妻を作る。
王立騎士団本部で騎士たちを気絶させた時よりも、一回り大きな稲妻をリヒトは処刑台に向かって放つ。
バチッ… バチッ… と光るリヒトの稲妻を合図に、それぞれの位置に着いた騎士たちが同時に動き始めた。
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