第二の人生、公爵令嬢として頑張りますぅ?

as

文字の大きさ
29 / 64

皇后の供述

しおりを挟む
「少し一息つきましょう。」
と言ってアルマエル様がお茶とティーカップを出してきた。
あれ、このティーカップ、教会にあった物と一緒の模様。

「冷めていますが教会のお茶ですから安心して飲んで下さい。茶器も教会の物です。」

笑顔で渡される。
ここで出されるのは信じてませんと遠回しに言ってるね。

私も今は皇宮で何を出されても手をつける気になれなかったので有難く頂きます。



一息つけた後、皇后陛下が入ってきた。

「カルサーリ・ユミル・エンダスト皇后陛下、昨年の9の月からの出来事、思いを全て話しなさい。」

皇后様は青い顔をして、私を一瞥してから話し始めた。

「9の月は」

声ちっさ!しかも声が震えてる。
眼鏡父と共謀して追い落とそうとした本人がいてるから余計だろうけど聞こえない。

「我々に聞こえるように。それとクルト・デル・ミルボーンと共謀してマセル家を陥れようとした事はクルトから供述がとれています。」

エジエル様の指導が入る。しかも眼鏡父との関係まで言っちゃったよ。

皇后様は驚愕し、いきなり顔を覆って泣き出した。

「聖玉に両手を付いて話しなさい。」

エジエル様の辞書に容赦の文字は無い·····。

皇后様は泣きながら両手を聖玉に乗せ話し出した。

「9の月は何事もありませんでした。
11の月から、ラノシュやチシスがサウスリアナを悪く言い始め、12の月にはラノシュが婚約を何とか出来ないかとわたくしに相談してきたのです。
ラノシュはサウスリアナが皇太子妃の器では無いと言い、チシスは貴族以下だと憎んでいるようでした。
学園での事は噂で聞こえてきていたので、マセル家の影響を弱める絶好の機会だと思ったのです。」

公爵家だから警戒するのはわかるけど、皇后の生家だって公爵家で結構な力を持ってるし、バランスを取るためにリアナが選ばれただけだ。
彼女は皇后に逆らった事はないと日記に書いていた。

エジエル様に尋問の許可を確認し頷いたので皇后に聞いてみる。

「皇后陛下。わたくしは陛下と権力を争うつもりは無かったと思うのですが」

日記からの推測だけど当たっていたようだ。

「ええ、貴女はわたくしに従順だったわ。
でもマセル公爵はそうではない。
現に彼は皇宮内で公正で情に流されず国内の発展に力を注いで評価を上げているのよ。」

物凄い誤解です。
他は知らないけど公正で情に流されないのは、人の心に鈍感で杓子定規にしか物事を進められないだけです。

「そんな時にラノシュにキリカ嬢を紹介されました。
始めは平民が、と思っていたのですが、特待生だけあって国内の情勢を良く勉強していていました。
少し話しただけでわたくしの気持ちに気付いてくれました。
貴族の派閥間の調整も、皇宮で側妃を牽制し皇后という立場を守るのにも疲れていたのです。
そして何度も会うようになりました。」

日記に皇后様は常に平等に貴族夫人、令嬢に接していたと書いてあった。それはリアナ息子の婚約者に対しても。

「キリカと話していると皇后としての重圧や、サウスリアナとの関係に悩んでいるのも、皇帝陛下の寵愛を笠に着てわたくしを軽んじる側妃も、どうでもよくなっていきました。」


ん?皇后の瞳はだんだん虚ろになってきた。

聖玉が色が消えていってる!
どうしたの?!神の玉!

「皇后陛下!」

アルマエル様が皇后様を強く呼んだ。

「彼女はわたくしが苦しむのはおかしいと、この帝国で一番貴い皇后を悩ます者が悪いのだと、わたくしが·····」

独り言のように言い始めた皇后様にアルマエル様の言葉は聞こえないようだった。

その姿に私はぞっとした。







しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...