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自分の所業の再確認だった!

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皆でもう一度着席して、アジスが落ち着けるように紅茶を入れ直した。

この気遣いが私に無いから信用されないの?

私の悩みを他所にフィーラ様がアジス・・・に確認するように聞く。

「本当にこの場で何を言っても不問ですの?」

フィーラ様、王妃様に頼まれたのは私!
アジスじゃない!

「はい、大丈夫です。
恐らくですが、王妃陛下は遺恨を残すような終わり方をしないように配慮されたのではないでしょうか?」

そんでアジス、あんたは王妃陛下が貴族間の争いを危惧してこの場を設けたのをわかってたのね。

お姉ちゃん、脱帽だよ。

アジスの返答にフィーラ様は目じりをきつくしてラグナと向き合った。

「殿下、殿下が全く婚約者の義務を果たしてないとお解りになっておりますの?」

「ああ。」

「わたくしがここ特Aに入れず、シフォン様だけ入れてわたくしがどれほど笑い者にされているかも?」

「それは昨日知った。申し訳ない。」

「呆れてものも言えませんわ。
王族たるものの自覚もありませんの?」

「返す言葉もない。
すまない。」

だよね~。

「シリル様も同じですの?」

今度はマリン様か。

「シフォン嬢の件は·····」

「正直に仰ってください。」

「シフォン嬢の事はマリンは気にしないと思っていた。
噂に関しては昨日聞いたんだ。」

「気にしないですって?
貴方はご自分が同じ様にされても気になさいませんの?
それとも想像力をお持ちではないのかしら。
婚約者が同じ学園で不貞をしてわたくしがどれだけ馬鹿にされて笑われているか、ほんの少しでも考えられなかったのですか?
こんな男が婚約者だなんて情けなくなりますわ。」

「すまない。」

「謝ってそれで解決できるとでも?
わたくしやフィーラ様が貴方がたの有責で婚約を破棄しても寝盗られ女、婚約者に相手にもされなかった無価値な令嬢とレッテルを貼られ、まともな縁談などきませんわ。
貴方達は男性ですから大した傷にはならないでしょうね。
せいぜい女を見る目がないと言われるだけで、一年もすれば皆忘れてくれますわ。」

マリン様、かなり鬱憤が溜まってたみたい。

そりゃそうよね。
学園で笑い者になるだけじゃなく、女性にとって一生を左右する問題だもんね。

ラグナもシリルも俯いて黙るんじゃない!

下から団栗を二人の膝にこっそり飛ばす。

「「いっ!」」

フフフ、痛いだろうけどこっち見たら駄目だからね。

婚約者に集中しなさい。

「どうなさいましたの?」

フィーラ様は優しいなぁ。
こんな時でも一応聞いてあげるなんて。

「いや、なんでもない。
それよりフィーラ個人が私に望む事があるなら言ってくれ。
グラント公爵家への謝罪とは別にだ。」

「マリンも個人的に俺にして欲しい事はあるか?
フォルツ侯爵家への詫びとは切り離してくれていい。」

二人にしては頑張った方だけど令嬢達の視線は冷たい。

「破滅してくれません?」

フィーラ様、王子に破滅って·····

「死んでくださったら、まだわたくしの立場は保てますわ。」

マリン様の将来が社会的に死ぬから、シリルには物理的に死ねって言いたいのかな?

二人とも真っ青になっててちょっと同情するけど、黙るなって!

「「っ!」」

次に黙ったら団栗連打しちゃうぞ♪♪

「で、できるだけ望みを叶える。」

「俺も自殺はできんが国境地帯の一般兵に志願する。」

あら~、覚悟の発言だったろうに溜息つかれてるよ。

「望んではおりますが、結構ですわ。
王家の恨みは買いたくありませんの。」

ですよね。
ラグナは両陛下に愛されてるからね。

「それより本当に悪いと思っているなら、ご自分達でどうすればいいか考えられませんの?」

マリン様、こいつにそこまで求めちゃ駄目よ。

シリルは脳筋な所があるから。
そんで天邪鬼。
ここまでの流れでシリルが無理して強がってたのがわかった。

全く何が「話すことは無い」よ。
めちゃくちゃあるじゃない。

「大体、婚約者をなんだと思ってますの?
放っておいても婚約したんだからいいだろうって?
思い上がりも甚だしいですわ。」

グサッ!

「こちらは相手を思って努力しても別に頼んでないのに勝手にやってると思ってましたの?」

グサグサッ!

「ご自分は何一つ相手を考えず好き勝手して許されると?
それとも好き勝手してる認識すらなかったのかしら。」

グサグサグサッ!

「貴族なら婚約が何を意味するかくらい5歳児でも知ってますわよ!」

ドスッ!

「わかってるわよ!
婚約の意味を知らなかったってわかったから、どうすればいいのか一生懸命考えてるし、今更って思われても償いたいんじゃない!
そんな気持ち自体が要らないなら要らないって言えばいいじゃない!!」

私に言ってるんじゃない、逆ギレだってわかってるけど、自覚しただけにこれはキツすぎる!

「姉上に言ってるんじゃないからっ!」

「俺は別にそこまで思ってないからっ!」

アジス、私はあいつらラグナ&シリルと同じなのよ!

カルゼ、もうカルゼに会わせる顔がない!

突然叫び出した私に呆気にとられていたフィーラ様とマリン様だったけど、アジスとカルゼがフォローしたのを見て察したように私にも冷たい目を向ける。

「アーシア様はわたくし達側だと思っていましたが·····」

違います、フィーラ様。

「まさかこの屑共と同類だったとは。」

そうなんです、マリン様!

「切腹して償うからーーー!」

泣き出した私をカルゼが優しく抱きしめてくれるけど、その優しさが今は辛い!

「シーちゃんが俺を弟みたいに思ってたの知ってたから。
しんどかったけど、それでも好きなのを止められなかったし、婚約者としてちゃんと見てくれって言えなかった俺にも責任があるんだよ。」

「そんなの言わなくても婚約したんだから、わかってなきゃいけなかったのに!
彼奴らをボコる前に私がカルゼにボコられなきゃいけなかったのよーー!」

「シーちゃんをボコるなんてできないよ。
俺の方が勝手に耐えてたのに我慢できずにここでシーちゃんの悪口言ったんだから俺がシーちゃんにボコられなきゃならないんだから。
それよりこれからは婚約者としてちゃんと俺を見て欲しい。」

「うん!」

カルゼがそうして欲しいなら!

「じゃあ、次の週末に俺の邸に来てくれる?」

「うん、うん?」

えっ、ちょっと待って。

「それで昨日の続きをしよう。」

「いや、それは·····」

カルゼさん、一足飛びしすぎやしませんか?

「これからは婚約者として付き合ってくれるんじゃないの?」

「も、もちろんそのつもりだけど·····」

婚約者だよ。
配偶者じゃないんだよ!

「じゃあ、週末に邸に来てくれるよね。」

「·····」

「来てくれないの?」

「·····わかった。」

涙を湛えた瞳に抗えず承諾してしまったけど、最後の一線は死守せねばカルゼまで軽蔑される。

結婚まで女性の貞操は守らないと駄目なんだよね。
守れなかったら婚約してた男女ともに貞操観念のないだらしない人間のレッテルを貼られる。

男性なんて嗜みとか言って娼館に行くのが普通なのに。

女性だけ純潔を尊ぶって意味わからん。
それじゃあ、女性は再婚も出来なくなるじゃない。

いや、できるけどね。
純潔大事なの初婚だけなんだけどね。

とりあえず今はそんな屁理屈はどうでもいい。

私が週末の約束を承諾したので、カルゼは涙を引っ込め子供のような笑顔で喜んでるから、私は貝になる。

私達の愁嘆場を見ていたフィーラ様とマリン様は白けたようにこちらを見て

「とんだ茶番ですわ。」
「カルゼ様の趣味を疑いますわ。」

と呟いたけど、同じ女性のマリン様に言われるとくるものがあるわ。

確かに切腹よりも婚約者の自覚を求めるカルゼの思考回路がわからない。

私だったらフィーラ様やマリン様と同じように破滅を求めるわよ。

ううっ、昨日までは自分がそこまで駄目駄目だったとは思ってもいなかった。

ラグナとシリルも私と同じで自覚が無かったんだと思ったら余計落ち込むわ。

最低な奴らだと見放そうとしてた幼なじみと同じだと知ってしまった絶望感は筆舌に尽くし難い·····

カルゼを大事にしよう。

でも貞操も結婚までは大事にしたい。

色んな意味で大丈夫かな、私。
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