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番外編
まだ落ち着かない!(後編)
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いや~な空気になったけどどうしよっかな。
うーん、うん。
ここは当事者にぶん投げよう。
「そういう訳でラグナ殿下、シリル様、後はよろしく。」
かなり前から来ていたカルゼ、アジス、ラグナ、シリルを見て言ったら、フィーラ様とマリン様が振り返った。
二人からは死角の位置にいたから気づかないよね。
ラグナはアジスに拘束されてるけど、話の途中で飛び出してこようとしてたの?
「アジス、ラグナ殿下を離してもいいわよ。」
なんで躊躇ってんのよ。
ラグナが私に喧嘩売りたいなら買うんだから早く離しなさいよ。
「姉上、殿下は一応王族なんです。」
言われなくてもわかってるから早く離しなさい。
アジスは渋々ラグナの拘束を解いたら、ラグナは私に掴みかからんばかりに詰め寄った。
「兄上はそのような方じゃない!
何を根拠に兄上を貶めるんだ!
いくらシーちゃんでもっ!いだだだっ!!」
ラグナがあんまりにも近づいて来るから、思わずアイアンクローをお見舞いしちゃったじゃない。
「ラグナ殿下、近づきすぎです。
フィーラ様、これは浮気じゃないんで誤解なきよう。」
「姉上、手を離して下さいっ。
この状況で浮気なんて誰も思いませんから!」
なら良かった。
顔から手を離すとラグナは蹲って頭を抑えている。
私の手は小さいけど鍛えてるからそれなりに痛いようだ。
「ラグナ殿下、私は仮定の話をして、私が感じた王太子の印象を話しただけです。
不敬罪に問いたければどうぞ。
後、次に人前でシーちゃんって呼んだらお口を引き裂いちゃうぞ♪」
あんたの浮気相手だと思われたら、立ち直れないじゃない。
「申し訳ない、アーシア嬢。」
ラグナもアジスと同じ阿呆可愛い所があるから憎めないんだよね。
「だが兄上への不敬は見逃せない。
根拠はあるのか?!」
はあ?
「ラグナ殿下、姉の発言は確かに不敬ですが、ラグナ殿下を思っての忠言です。
それに僕も同じ意見です。」
言い返そうとしたらアジスがフォローを入れてきた。
「俺も同じだ。」
カルゼもそう言いながら人の腰を抱いて手をにぎにぎしてきた。
いちいち手を握ってこないでよ。
顔が熱くなるんだから!
カルゼもアジスまでとはいかないけど友達思いなんだよね。
恋人思いは程々でいいんだけどね。
「なんで·····兄上が何かしたのか?」
今は私達には何もしてないよ。
「姉上が倫理観のある合理主義者だとして、王太子殿下は倫理観のない合理主義者なんです。
ご自身が有利になるならラグナ殿下を窮地に追いやっても心など痛めないでしょう。
そしてそのようなご自身を上手く隠しておられる。」
あの王太子と並べられるのってちょっと嫌なんだけど。
いちいち言葉なんか選ばないで利己主義だって言えば?
いや、倫理観ないって言ってる時点で言葉選んでないか。
「ラグナもいつも王太子に苦手意識持ってただろ。」
カルゼの言う通り王太子の前ではいつもどこか腰が引けてたもんね。
この子危機察知能力があるから本能でわかってるけど、家族だからって思い込みが強いから認められない。
相手はそんなものゴミ屑程度の認識しかないんだよ、ラグナ。
「あとは自分で判断しなさいよ。
フィーラ様やマリン様も王太子の側室になりたいならいいけど、そうじゃないなら考えた方がいいわよ。
じゃあ私は帰るから。」
おやつ食べそびれてお腹空いてるのよ。
カルゼは自然に私をエスコートして一緒に馬車に乗ってきた。
今日は自分の邸に帰ろうと思ったのに。
「邸に大きな海老が沢山送られてきたんだ。
シーちゃん海老好きだろ。」
好きだけど、飛びつくのは危険だって本能が警鐘を鳴らしてるのよ。
ラグナ程じゃないけど私も危機感は持ってるから。
でもこのアクアマリンの瞳にじーっと見つめられると断りにくいんだけど。
「·····ご飯食べたら帰るからね。」
「わかった。
シーちゃんが来たら料理長が張り切って作ってくれるよ。
いつも美味しそうに食べてくれるからね。」
ご飯を一緒に食べるって言っただけで子供みたいに喜ばないでよ。
お昼ご飯も一緒に食べたじゃない。
でもこれがフィーラ様曰く婚約者の普通なんだよね。
確かに私やラグナやシリルは婚約者失格だった。(その上あいつらは他の女性と親密に過ごしてたので私よりも最悪らしい)
でもカルゼの邸に行くのには二の足を踏んじゃうのよ!
ドゥルド邸に到着してカルゼのお母様の歓迎と海老料理を堪能。
港から離れてるのにプリプリ新鮮な海老は美味しかった。
自然な流れでカルゼの部屋でお茶を飲んでるけど、私は帰るからね。
「シーちゃんの好きそうなお酒が手に入ったんだ。
飲むでしょ。」
いや、帰るんだって!
「今度貰う。
もう遅いからそろそろ帰るね。」
「もう封を開けたから一杯だけ飲んでいったら?」
なんの思惑もありませんって顔で琥珀色のグラスを差し出されると断りづらいな。
「·····ありがとう。」
だから、子供みたいに喜ばないでってば。
ここ何年かは大人びた微笑みしか見てなかったのになぁ。
私に意識してもらうのに無理してたんだそう。
それさえもわからなかったって私の目はどんだけ節穴だったんだ!
商談で商人や貴族の裏の顔を読むのに慣れてるつもりだったのに自信を無くすわ。
「あ、美味しい!」
ちょっとフルーティな香りで喉にスルスルと入っていく。
「このチーズとよく合うよ。
試してみて。」
つまみ用のチーズも美味しい。
トラットリアの飲酒解禁年齢は貴族は15才からで平民は18才から。
貴族は他国との交際でお酒を飲まなきゃいけない時もあるから、社交の場で醜態を晒さない為に、お酒に慣れとかないと駄目だんだよね。
貴族って面子と見栄でできてるから、生きるのに苦労するわ。
その分恩恵も凄いから文句は言えない。
私のグラスにおかわりを入れようとするカルゼの手を止める。
「一杯だけでいいよ。
ご馳走様。美味しかった。」
そんな残念そうに見ないでよ。
一杯だけっていったでしょ。
「じゃあ、また今度飲もう。」
カルゼは琥珀色の瓶をテーブルに置いてキスをしようとしたのですかさず躱した。
「シーちゃん·····」
哀れっぽい声だすな!
「帰るって言ってるでしょ。」
もう流されるシーちゃんはいません。
「キスだけだよ。」
「···最近キスだけじゃ無くなってきてるじゃない。」
「嫌だった?」
だから捨てられた子犬のような顔しないでよ!
「嫌とかそういうんじゃなくて···」
もう、顔が熱くなってきたじゃない!
いや、これはお酒のせい!!
私がカルゼの邸に行くのに二の足を踏むのは、この甘い空気に耐えられないからなんだよ!
こう、恋人がイチャイチャしてますオーラと言おうか、ココアに砂糖10杯入れて飲んだ時の吐きそうな程の甘ったるさを漂わせてくるから、恥ずかしくて逃げ出したくなるんですけどーーー!
「ごめんね、嫌がられてないからってシーちゃんの優しさに甘えてた···」
だーかーらー、瞳を潤ませてこっち見ないでよ!
アクアマリンのキラキラは好きだけどウルウルは嫌いなんだから!
私はカルゼの頬に手を添えると顔を傾げて手にスリスリしてくる。
くそー、あざと可愛いな!
「···一回だけだからね。」
軽くね!軽くだよ!
「うんっ♪」
軽い返事を求めてるんじゃない!
·····口閉じとこ。
カルゼの唇が私の唇に触れて舌でも触れてきた。
··········
·····長くない?
一回って唇が離れなかったらカウントされないって思ってる?
「シーちゃん、シア。
口開けて。」
唇離さないでよく喋れるね·····
しかも口開けるまで止めるつもりないな。
なんかだんだん気持ち良くなってきて、勝手に口が開いていく。
「ふぅ·····んっんっ!」
カルゼの舌が私の口内を我が物顔で蹂躙して、キスだけで理性が崩壊しそう。
「ルー、もっと·····」
カルゼの首に手を回して強請ると、私を包み込むように抱きしめて応えてくれた。
流されてるってわかってるのに、カルゼに見つめられながらキスしていると、それでもいいかなってなってしまう。
だってアクアマリンの瞳はいつも私を愛おしいといわんばかりだし、触れてくる手や唇は宝物を扱うかのように優しい。
それを感じる度に私の胸はキューッとなって恥ずかしいやらカルゼをギューって抱きしめたくなるやらで落ち着かないけど、これって世間一般で言う所の恋愛感情なのかな?
今度フィーラ様達に聞いてみよう。
「シア、いい?」
甘ったるい声で確認しながら服を脱がそうとするエロ魔人の対処方法はアジスに相談しなきゃと、カルゼの頭を叩いてやった。
私が留学したかった理由~特Aにて~
ランチメニューに海老と貝のカレーがあったので、もちろんそれを選択!
美味し~!!
でもちょっと臭いが気になるんだよね。
「やっぱり港から王都までの交易路を作らないと、それから鮮度が落ちないように氷とその氷が溶けないような箱を用意しなきゃ。
あぁもう、留学できてればしっかり勉強出来たのに!」
私はカレースプーンを握りしめながらラグナを睨んだ。
ラグナはサッと目を逸らしたけど、俯かなくなっただけマシかな?
「ラグナ殿下、今日はカルゼの邸で夕食を一緒に如何ですか?」
あんたの嫌いなピーマンフルコースにするよう伝えてあげよう。
「きょ、今日は執務が溜まってて·····」
「ではいつが暇ですの?」
アジスに縋るような目を向けるんじゃない。
「姉上、明日からオープンするジュエリーショップのサクラをするって言ってなかった?
今日は最終点検でお店に行くって朝から張り切ってたじゃないか。」
あ、ラグナに嫌がらせするより大事な用事があったわ。
「シアがサクラするなら俺も一緒にやるよ。」
カルゼがサクラか~。
このイケメンが並んでたら目立つからいいかも。
「じゃあ、明日は一緒に並んで。好きなの買ってあげるから!」
「シアにチョーカーを俺がプレゼントするよ。」
·····チョーカー好きだね。
自分でつければいいのに。
買ってくれるなら有難く貰うけど。
私はご機嫌でカレーを食べてカルゼと一緒に図書室に向かった。
ん?何か忘れたような·····
アーシアとカルゼが図書室に向かった後の特Aではーーー
「アジス、助かった。ありがとう!」
「いいえ、どうせ殿下の嫌いな食べ物のフルコースを用意して嫌がらせするつもりだったでしょうから。」
さすが姉弟、わかっている。
「質問ですが、アーシア様は水産業のお勉強がしたくて留学をご希望でしたの?」
「いえ、そんな幅広いものではなく港から王都に新鮮な魚介類を迅速に運べるようにしたかったんですよ、マリン様。」
「まあ、海鮮のお店をお作りになりますの?」
「·····最終的にはそうです、フィーラ様。」
「最終的には?」
「フィーラ、アーシア嬢は自分が新鮮な海老が食べたくて王都への円滑な輸送路と鮮度を保つ手段が知りたかったんだよ。
留学先のギスバル公国は海に囲まれていて我が国よりその辺は発達しているから。」
「最終的には王都に新鮮な魚介類を届けられるようにしたいと言ってましたよ。」
「でもそれも何処でも新鮮な海老が食べたいからだって前に言ってたぞ。」
「あ、あら、シリル様だって新鮮な海老が食べられたら嬉しいんじゃありません?
ね、マリン様!」
「···その、フィーラ様、シリル様は海老はちょっと·····」
「·····海老のアレルギーなんだ。」
「ごめんなさい!」
「いや、子供の頃、アーシア嬢に海老を口いっぱいに突っ込まれて俺も初めて知ったんだ。
その後息ができなくなって慌てた彼女にボディーブローされたのも懐かしい思い出に変わったよ。ははっ」
「「「「·····」」」」
うーん、うん。
ここは当事者にぶん投げよう。
「そういう訳でラグナ殿下、シリル様、後はよろしく。」
かなり前から来ていたカルゼ、アジス、ラグナ、シリルを見て言ったら、フィーラ様とマリン様が振り返った。
二人からは死角の位置にいたから気づかないよね。
ラグナはアジスに拘束されてるけど、話の途中で飛び出してこようとしてたの?
「アジス、ラグナ殿下を離してもいいわよ。」
なんで躊躇ってんのよ。
ラグナが私に喧嘩売りたいなら買うんだから早く離しなさいよ。
「姉上、殿下は一応王族なんです。」
言われなくてもわかってるから早く離しなさい。
アジスは渋々ラグナの拘束を解いたら、ラグナは私に掴みかからんばかりに詰め寄った。
「兄上はそのような方じゃない!
何を根拠に兄上を貶めるんだ!
いくらシーちゃんでもっ!いだだだっ!!」
ラグナがあんまりにも近づいて来るから、思わずアイアンクローをお見舞いしちゃったじゃない。
「ラグナ殿下、近づきすぎです。
フィーラ様、これは浮気じゃないんで誤解なきよう。」
「姉上、手を離して下さいっ。
この状況で浮気なんて誰も思いませんから!」
なら良かった。
顔から手を離すとラグナは蹲って頭を抑えている。
私の手は小さいけど鍛えてるからそれなりに痛いようだ。
「ラグナ殿下、私は仮定の話をして、私が感じた王太子の印象を話しただけです。
不敬罪に問いたければどうぞ。
後、次に人前でシーちゃんって呼んだらお口を引き裂いちゃうぞ♪」
あんたの浮気相手だと思われたら、立ち直れないじゃない。
「申し訳ない、アーシア嬢。」
ラグナもアジスと同じ阿呆可愛い所があるから憎めないんだよね。
「だが兄上への不敬は見逃せない。
根拠はあるのか?!」
はあ?
「ラグナ殿下、姉の発言は確かに不敬ですが、ラグナ殿下を思っての忠言です。
それに僕も同じ意見です。」
言い返そうとしたらアジスがフォローを入れてきた。
「俺も同じだ。」
カルゼもそう言いながら人の腰を抱いて手をにぎにぎしてきた。
いちいち手を握ってこないでよ。
顔が熱くなるんだから!
カルゼもアジスまでとはいかないけど友達思いなんだよね。
恋人思いは程々でいいんだけどね。
「なんで·····兄上が何かしたのか?」
今は私達には何もしてないよ。
「姉上が倫理観のある合理主義者だとして、王太子殿下は倫理観のない合理主義者なんです。
ご自身が有利になるならラグナ殿下を窮地に追いやっても心など痛めないでしょう。
そしてそのようなご自身を上手く隠しておられる。」
あの王太子と並べられるのってちょっと嫌なんだけど。
いちいち言葉なんか選ばないで利己主義だって言えば?
いや、倫理観ないって言ってる時点で言葉選んでないか。
「ラグナもいつも王太子に苦手意識持ってただろ。」
カルゼの言う通り王太子の前ではいつもどこか腰が引けてたもんね。
この子危機察知能力があるから本能でわかってるけど、家族だからって思い込みが強いから認められない。
相手はそんなものゴミ屑程度の認識しかないんだよ、ラグナ。
「あとは自分で判断しなさいよ。
フィーラ様やマリン様も王太子の側室になりたいならいいけど、そうじゃないなら考えた方がいいわよ。
じゃあ私は帰るから。」
おやつ食べそびれてお腹空いてるのよ。
カルゼは自然に私をエスコートして一緒に馬車に乗ってきた。
今日は自分の邸に帰ろうと思ったのに。
「邸に大きな海老が沢山送られてきたんだ。
シーちゃん海老好きだろ。」
好きだけど、飛びつくのは危険だって本能が警鐘を鳴らしてるのよ。
ラグナ程じゃないけど私も危機感は持ってるから。
でもこのアクアマリンの瞳にじーっと見つめられると断りにくいんだけど。
「·····ご飯食べたら帰るからね。」
「わかった。
シーちゃんが来たら料理長が張り切って作ってくれるよ。
いつも美味しそうに食べてくれるからね。」
ご飯を一緒に食べるって言っただけで子供みたいに喜ばないでよ。
お昼ご飯も一緒に食べたじゃない。
でもこれがフィーラ様曰く婚約者の普通なんだよね。
確かに私やラグナやシリルは婚約者失格だった。(その上あいつらは他の女性と親密に過ごしてたので私よりも最悪らしい)
でもカルゼの邸に行くのには二の足を踏んじゃうのよ!
ドゥルド邸に到着してカルゼのお母様の歓迎と海老料理を堪能。
港から離れてるのにプリプリ新鮮な海老は美味しかった。
自然な流れでカルゼの部屋でお茶を飲んでるけど、私は帰るからね。
「シーちゃんの好きそうなお酒が手に入ったんだ。
飲むでしょ。」
いや、帰るんだって!
「今度貰う。
もう遅いからそろそろ帰るね。」
「もう封を開けたから一杯だけ飲んでいったら?」
なんの思惑もありませんって顔で琥珀色のグラスを差し出されると断りづらいな。
「·····ありがとう。」
だから、子供みたいに喜ばないでってば。
ここ何年かは大人びた微笑みしか見てなかったのになぁ。
私に意識してもらうのに無理してたんだそう。
それさえもわからなかったって私の目はどんだけ節穴だったんだ!
商談で商人や貴族の裏の顔を読むのに慣れてるつもりだったのに自信を無くすわ。
「あ、美味しい!」
ちょっとフルーティな香りで喉にスルスルと入っていく。
「このチーズとよく合うよ。
試してみて。」
つまみ用のチーズも美味しい。
トラットリアの飲酒解禁年齢は貴族は15才からで平民は18才から。
貴族は他国との交際でお酒を飲まなきゃいけない時もあるから、社交の場で醜態を晒さない為に、お酒に慣れとかないと駄目だんだよね。
貴族って面子と見栄でできてるから、生きるのに苦労するわ。
その分恩恵も凄いから文句は言えない。
私のグラスにおかわりを入れようとするカルゼの手を止める。
「一杯だけでいいよ。
ご馳走様。美味しかった。」
そんな残念そうに見ないでよ。
一杯だけっていったでしょ。
「じゃあ、また今度飲もう。」
カルゼは琥珀色の瓶をテーブルに置いてキスをしようとしたのですかさず躱した。
「シーちゃん·····」
哀れっぽい声だすな!
「帰るって言ってるでしょ。」
もう流されるシーちゃんはいません。
「キスだけだよ。」
「···最近キスだけじゃ無くなってきてるじゃない。」
「嫌だった?」
だから捨てられた子犬のような顔しないでよ!
「嫌とかそういうんじゃなくて···」
もう、顔が熱くなってきたじゃない!
いや、これはお酒のせい!!
私がカルゼの邸に行くのに二の足を踏むのは、この甘い空気に耐えられないからなんだよ!
こう、恋人がイチャイチャしてますオーラと言おうか、ココアに砂糖10杯入れて飲んだ時の吐きそうな程の甘ったるさを漂わせてくるから、恥ずかしくて逃げ出したくなるんですけどーーー!
「ごめんね、嫌がられてないからってシーちゃんの優しさに甘えてた···」
だーかーらー、瞳を潤ませてこっち見ないでよ!
アクアマリンのキラキラは好きだけどウルウルは嫌いなんだから!
私はカルゼの頬に手を添えると顔を傾げて手にスリスリしてくる。
くそー、あざと可愛いな!
「···一回だけだからね。」
軽くね!軽くだよ!
「うんっ♪」
軽い返事を求めてるんじゃない!
·····口閉じとこ。
カルゼの唇が私の唇に触れて舌でも触れてきた。
··········
·····長くない?
一回って唇が離れなかったらカウントされないって思ってる?
「シーちゃん、シア。
口開けて。」
唇離さないでよく喋れるね·····
しかも口開けるまで止めるつもりないな。
なんかだんだん気持ち良くなってきて、勝手に口が開いていく。
「ふぅ·····んっんっ!」
カルゼの舌が私の口内を我が物顔で蹂躙して、キスだけで理性が崩壊しそう。
「ルー、もっと·····」
カルゼの首に手を回して強請ると、私を包み込むように抱きしめて応えてくれた。
流されてるってわかってるのに、カルゼに見つめられながらキスしていると、それでもいいかなってなってしまう。
だってアクアマリンの瞳はいつも私を愛おしいといわんばかりだし、触れてくる手や唇は宝物を扱うかのように優しい。
それを感じる度に私の胸はキューッとなって恥ずかしいやらカルゼをギューって抱きしめたくなるやらで落ち着かないけど、これって世間一般で言う所の恋愛感情なのかな?
今度フィーラ様達に聞いてみよう。
「シア、いい?」
甘ったるい声で確認しながら服を脱がそうとするエロ魔人の対処方法はアジスに相談しなきゃと、カルゼの頭を叩いてやった。
私が留学したかった理由~特Aにて~
ランチメニューに海老と貝のカレーがあったので、もちろんそれを選択!
美味し~!!
でもちょっと臭いが気になるんだよね。
「やっぱり港から王都までの交易路を作らないと、それから鮮度が落ちないように氷とその氷が溶けないような箱を用意しなきゃ。
あぁもう、留学できてればしっかり勉強出来たのに!」
私はカレースプーンを握りしめながらラグナを睨んだ。
ラグナはサッと目を逸らしたけど、俯かなくなっただけマシかな?
「ラグナ殿下、今日はカルゼの邸で夕食を一緒に如何ですか?」
あんたの嫌いなピーマンフルコースにするよう伝えてあげよう。
「きょ、今日は執務が溜まってて·····」
「ではいつが暇ですの?」
アジスに縋るような目を向けるんじゃない。
「姉上、明日からオープンするジュエリーショップのサクラをするって言ってなかった?
今日は最終点検でお店に行くって朝から張り切ってたじゃないか。」
あ、ラグナに嫌がらせするより大事な用事があったわ。
「シアがサクラするなら俺も一緒にやるよ。」
カルゼがサクラか~。
このイケメンが並んでたら目立つからいいかも。
「じゃあ、明日は一緒に並んで。好きなの買ってあげるから!」
「シアにチョーカーを俺がプレゼントするよ。」
·····チョーカー好きだね。
自分でつければいいのに。
買ってくれるなら有難く貰うけど。
私はご機嫌でカレーを食べてカルゼと一緒に図書室に向かった。
ん?何か忘れたような·····
アーシアとカルゼが図書室に向かった後の特Aではーーー
「アジス、助かった。ありがとう!」
「いいえ、どうせ殿下の嫌いな食べ物のフルコースを用意して嫌がらせするつもりだったでしょうから。」
さすが姉弟、わかっている。
「質問ですが、アーシア様は水産業のお勉強がしたくて留学をご希望でしたの?」
「いえ、そんな幅広いものではなく港から王都に新鮮な魚介類を迅速に運べるようにしたかったんですよ、マリン様。」
「まあ、海鮮のお店をお作りになりますの?」
「·····最終的にはそうです、フィーラ様。」
「最終的には?」
「フィーラ、アーシア嬢は自分が新鮮な海老が食べたくて王都への円滑な輸送路と鮮度を保つ手段が知りたかったんだよ。
留学先のギスバル公国は海に囲まれていて我が国よりその辺は発達しているから。」
「最終的には王都に新鮮な魚介類を届けられるようにしたいと言ってましたよ。」
「でもそれも何処でも新鮮な海老が食べたいからだって前に言ってたぞ。」
「あ、あら、シリル様だって新鮮な海老が食べられたら嬉しいんじゃありません?
ね、マリン様!」
「···その、フィーラ様、シリル様は海老はちょっと·····」
「·····海老のアレルギーなんだ。」
「ごめんなさい!」
「いや、子供の頃、アーシア嬢に海老を口いっぱいに突っ込まれて俺も初めて知ったんだ。
その後息ができなくなって慌てた彼女にボディーブローされたのも懐かしい思い出に変わったよ。ははっ」
「「「「·····」」」」
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