月夜の食卓で晩餐を

KUZUME

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第5話

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 一晩中降り続いていた雪が止み、うっすらと朝日が差してきた早朝に、トトはビッケに一言「やっぱり母ちゃんを探しに行く」と告げるとそのままビッケの屋敷を身一つで出て行った。
 トトの小さくなっていく背を見送り、ビッケは眠たげな目でぱちぱちと瞬きを繰り返す。

 「…ご主人様、よろしいので?てっきりあの人間は食料かとばかり」
 「おいおい、言っただろう。人助けだって。大体あんなちっぽけな人間を世話してまで食おうとするもんかい」
 「は、これはとんだ失礼を…」
 「…」

 トトが居る間は近くに寄って来なかった蝙蝠がその小さな手を動かしてビッケの肩付近を飛び回る。

 「それより見たかい、あの痩せっぽちな体躯を。聞いたかい、家もなく母親も居ないときた」
 「昨今の平民の暮らしとはそのようなものでしょう」
 「驚いた。昔はそんな酷いもんでもなかったと思っていたけれど…」
 「賢王といえど、永遠に道を踏み外さない者など居ないでしょう。近頃の国王陛下は、心をお病みだとか」
 「…我ら吸血鬼の一族がこの国を治めてから、随分と長い時間が経ったらしい」
 「ご主人様…」

 トトの背がすっかり見えなくなると、ビッケは屋敷の扉を閉ざして寝室へと蝙蝠を携えて進む。

 「…近頃、どうにも平民共の間でキナ臭い噂もございます。あまり平民には関わり合いにならないよう」
 「ふん、1000年を生きる吸血鬼である私が背中から刺されないか心配だって?馬鹿らしい」
 「…」
 「まぁ私が刺されようが刺されまいが、近い内この国は沈むだろうさ。吸血鬼わたしたちはもう、国を治めるなんてことに飽きてるんだ。人間達がこの国を獲りたいってんなら好きにするといい。公爵なんて肩書きに未練はないね。きっと王様だってもうどうでもいいんだ」
 「左様でございますか…」
 「…襲って追われて、太陽から逃げて。そんな生活に疲れた先祖達が公然とが出来るようにこの国を作ったらしいけれど、やっぱり人生少しくらい刺激がなけりゃ張りがなくなるよ」

 ビッケは寝室の重たいカーテンを閉めて昇り来る太陽を締め出す。
 ベッドにもぞもぞと入り込んで、騒がしい平民達の声を遮断するように瞼を閉じた。
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