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どきどき★メイド生活スタート(これはトキメキではなく動悸の方)
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朝だというのに薄暗い室内。爽やかな森の空気も小鳥達のさえずりも聞こえてこないし、目を凝らせばそこかしこに黒く太い毛が落ちている。
「……はぁ~~~…夢であって欲しかった…」
一晩寝たところで状況は変わっていなかったか、と起きて早々ララは肩を落とした。
「…よし。貴族様の暮らしぶりなんて知らないけど、多分いつも何かしらの仕事を部屋にこもってしてるでしょ!私は隅の方で目立たないように清掃に精を出そう!大丈夫大丈夫!」
ララは自らを鼓舞して気合いを入れると、バサリ!と柔らかい布団を剥いで洗顔の為に部屋を出た。
伯爵の世話も仕事内容に含まれていた気がしたが、きっと、恐らく、そんな大層な仕事はベテランのメイドの仕事で、下っ端である自分にはきっときっと回ってこない筈だ!と呪文のように繰り返しながら。
♦︎
「はい、こちらのエプロンをどうぞ」
「…はぁ、どうも」
洗顔を終えたところでトーマスに出会ったララは彼に連れられて一階の奥、台所と思われる一室へと案内された。
てっきりメイド用のお仕着せでも渡されるのかと思っていたのだが、エプロンだけ渡された事に若干の違和感は抱きつつ、まぁまずは朝食の準備か、とララはエプロンに頭を通すと部屋をぐるりと見渡した。
「?あの、トーマスさん。他の方々はまだいらしてないんですか?」
「ええ、おりませんよ」
「??あ、他の方は住み込みではなくて、通いなんですか?」
「いえ、この屋敷のメイドは現在ララさんだけになります」
「???」
噛み合わない会話にララの頭上にハテナが舞う。
「あの、ここって貴族の伯爵様のお屋敷なんですよね?」
「はい。由緒正しいブライトン伯爵家でございます」
「普通、貴族様のお屋敷っていっぱい使用人の方々がいますよね!?」
「居ましたねぇ、賄い婦に洗濯係、庭師に執事に侍女その他エトセトラ、エトセトラ」
「ちょ、ちょっと待って下さい!なんで過去形なんですか!?」
悪い予感しかしない、とララは堪らずトーマスの胸ぐらを掴んで前後に揺する。そんなララの暴挙にもホホホと笑みさえこぼしてトーマスは普段の調子を崩さずに説明をする。
「いやぁ、坊っちゃま…ご主人様の癇癪についていけないと夜逃げよろしく皆様去ってしまわれましてねぇ。まぁ、そのお陰で魔女の魔法暴発に巻き込まれたのがご主人様だけで済んだので結果オーライですな」
「……うっそぉ…」
「ホッホッホッ」
ずるずると膝から崩折れたララをさらっと放置して、トーマスもいそいそともう一つエプロンを取り出すとそれに頭を通してきゅっと腰で結ぶ。綺麗な蝶々結びである。
「さっ、初日はどこに何があるかの説明も兼ねて私も一緒に朝食の準備をしますので」
「…」
「あ、ララさんは果物の飾り切りなどはお出来になりますかな?今朝のデザートは旬の果物盛り合わせですぞ」
「…っふ」
ララの口からは意味をなさない乾いた笑みしか出てこない。
内心で縁を切ってやる、とまで思った母には会いたくないが、ララは心底願った。
母よ、一日…いや、一刻も早く魔法の解除方法を見つけてここに飛んでこい、と。
と、その時屋敷の奥から何か物が壊れる大きな音と獣の苛立つ咆哮が轟いた。
「ガアアルゥゥアアアアアア!!!」
「ぎゃっ!!なに!?」
「しまった。ご主人様がもう起床されたようですね。お腹が空いて苛立ってらっしゃる!」
「えええ!?お腹空いたくらいでキレるんですか!?」
「さっ、ララさん!こちらの苺でバラの飾り切りを!」
「出来ないよ!!!」
借金をしてでも賠償金を払うだけにした方が賢明な判断だったのではと思わずにいられないララだった。
「……はぁ~~~…夢であって欲しかった…」
一晩寝たところで状況は変わっていなかったか、と起きて早々ララは肩を落とした。
「…よし。貴族様の暮らしぶりなんて知らないけど、多分いつも何かしらの仕事を部屋にこもってしてるでしょ!私は隅の方で目立たないように清掃に精を出そう!大丈夫大丈夫!」
ララは自らを鼓舞して気合いを入れると、バサリ!と柔らかい布団を剥いで洗顔の為に部屋を出た。
伯爵の世話も仕事内容に含まれていた気がしたが、きっと、恐らく、そんな大層な仕事はベテランのメイドの仕事で、下っ端である自分にはきっときっと回ってこない筈だ!と呪文のように繰り返しながら。
♦︎
「はい、こちらのエプロンをどうぞ」
「…はぁ、どうも」
洗顔を終えたところでトーマスに出会ったララは彼に連れられて一階の奥、台所と思われる一室へと案内された。
てっきりメイド用のお仕着せでも渡されるのかと思っていたのだが、エプロンだけ渡された事に若干の違和感は抱きつつ、まぁまずは朝食の準備か、とララはエプロンに頭を通すと部屋をぐるりと見渡した。
「?あの、トーマスさん。他の方々はまだいらしてないんですか?」
「ええ、おりませんよ」
「??あ、他の方は住み込みではなくて、通いなんですか?」
「いえ、この屋敷のメイドは現在ララさんだけになります」
「???」
噛み合わない会話にララの頭上にハテナが舞う。
「あの、ここって貴族の伯爵様のお屋敷なんですよね?」
「はい。由緒正しいブライトン伯爵家でございます」
「普通、貴族様のお屋敷っていっぱい使用人の方々がいますよね!?」
「居ましたねぇ、賄い婦に洗濯係、庭師に執事に侍女その他エトセトラ、エトセトラ」
「ちょ、ちょっと待って下さい!なんで過去形なんですか!?」
悪い予感しかしない、とララは堪らずトーマスの胸ぐらを掴んで前後に揺する。そんなララの暴挙にもホホホと笑みさえこぼしてトーマスは普段の調子を崩さずに説明をする。
「いやぁ、坊っちゃま…ご主人様の癇癪についていけないと夜逃げよろしく皆様去ってしまわれましてねぇ。まぁ、そのお陰で魔女の魔法暴発に巻き込まれたのがご主人様だけで済んだので結果オーライですな」
「……うっそぉ…」
「ホッホッホッ」
ずるずると膝から崩折れたララをさらっと放置して、トーマスもいそいそともう一つエプロンを取り出すとそれに頭を通してきゅっと腰で結ぶ。綺麗な蝶々結びである。
「さっ、初日はどこに何があるかの説明も兼ねて私も一緒に朝食の準備をしますので」
「…」
「あ、ララさんは果物の飾り切りなどはお出来になりますかな?今朝のデザートは旬の果物盛り合わせですぞ」
「…っふ」
ララの口からは意味をなさない乾いた笑みしか出てこない。
内心で縁を切ってやる、とまで思った母には会いたくないが、ララは心底願った。
母よ、一日…いや、一刻も早く魔法の解除方法を見つけてここに飛んでこい、と。
と、その時屋敷の奥から何か物が壊れる大きな音と獣の苛立つ咆哮が轟いた。
「ガアアルゥゥアアアアアア!!!」
「ぎゃっ!!なに!?」
「しまった。ご主人様がもう起床されたようですね。お腹が空いて苛立ってらっしゃる!」
「えええ!?お腹空いたくらいでキレるんですか!?」
「さっ、ララさん!こちらの苺でバラの飾り切りを!」
「出来ないよ!!!」
借金をしてでも賠償金を払うだけにした方が賢明な判断だったのではと思わずにいられないララだった。
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