人気ボディービルダーが日本代表ラグビー選手たちと綱引きをしたら大変なことになった件。

hage

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「こんなの絶対おかしいだろうが!!
なんか仕込んだだろテメェ!」

現役ラグビー日本代表の坂田健は平常心を失い、太ったテレビディレクターの胸倉を絞り上げていた。
その肩書きに相応しい体軀とパワーで、ディレクターの足はほぼ浮いてしまっている。

「い、いやいやいや断じてそんなことは……」

元々攻撃的な顔付きを凶悪に歪ませ、唾をとばし怒鳴り散らす健にディレクターは完全に萎縮し必死に首を振り否定を続ける。

「あり得ないだろうが、たかがボディービルダー風情が俺ら3人を片腕で……」

それ以上はプライドが許さず、言い続けることができない。
その肩を背後から同じく代表選手の加藤隼人が押しとどめるように叩く。

「落ち着けよ。たかが綱引きに細工はできないだろ」

体格は健より良いが、風貌も性格も穏やかな隼人がなだめる。
くるりと振り返り隼人の胸に指を突き付け、食ってかかる。

「お前は納得できんのかよ!…っそれに大の肩にマジで何か残ったら……」

言葉が途切れる。

「納得できるもできないも、事実だろ。
まあ、立川さんのあの怪力は、ほんとに信じられないけどな…」

怒り狂う健と対象的に、隼人は男としての憧れ、もしくは欲情を抑えきれない目線でスタジオの反対側で、半袖のポロシャツの袖をぶち破らんばかりに巨大な上腕二頭筋を盛り上がらせ、腕組みして状況が落ち着くのを待っている雄司を見つめた。
隠しているが、隼人はゲイだった。
雄司の男らしいハンサムな顔に、2mの長身、150kgを越える筋肉隆々の肉体。
完璧な雄としての魅力を放出する雄司を、不自然に見つめすぎないようにすることは至難の技だった。

若いADの携帯が鳴る。
周囲の注目が集まる。
対応していたADはほっとした表情で携帯をおさえ、

「伊藤大さんの肩は全く問題ない状態とのことです!!!」

スタジオの空気が緩む。
場の緊張を緩めるためか、更に言葉を重ねる。

「立川さんがすぐ確実に肩を嵌め直したことが良かったみたいです!」

おーっと拍手が起こり、雄司が苦笑して頭を下げる。

「よ、良かったですね!!
とりあえず、お二人も汚れを落として来られては!?
専用の浴場がありますのでッ!!」

未だ胸倉を掴まれたままだったディレクターが健のご機嫌をとるように言う。
気が立っていて忘れていたが、雄司に小麦粉のたまった巨大桶に落とされ、二人とも粉まみれだったのだ。
頭にのぼった血が徐々に落ち着き、健にも自分たちの滑稽さがようやっと認識され始める。
チッ、と舌打ちして強ばった手を離した。
手は、未だ隠しきれないダメージと、無意識の恐怖に震えていた。



事の次第はこうだった。



複数の現役スポーツ選手を招くバラエティー。
今回は肉体自慢の選手を揃えていた。
基本的にはトークだが、アクセントにちょっとした技や、プレイの披露が行われる。
今回の企画は、「ボディービルダーの筋肉は本当に使えないのか!?」という、盛り上がれば何でも良い軽薄なプロデューサーが考えたものだった。
ボディービルダーへの敬意に欠けた内容に、プロデューサー以下、冷や汗をかいて駄目元で打診したが雄司はあっさりと「いいですよ」と承諾したのだった。
対戦相手にはラインバッカーの大が選ばれた。
大は脂肪もたっぷりと搭載した3人の中で一番の巨漢だ。
よく言えば素朴、悪く言えば鈍重だが、その日本人離れした体軀で活躍していた。
たかがボディービルダーの雄司には酷な相手と思われたが、データ上、体格が最も近いのが大だった。
それでも、全ての値で雄司より小さく軽くはあったが、スタッフはろくに信用していなかった。

いざ対戦となり小麦粉の桶を挟んで雄司と向かい合ったところ、世界に通用したラインバッカーである大が、まるでただの鈍重な小太りの男に見えたので周囲はざわついた。
雄司単体で見ても、思わず怖じ気づくような異様に筋肉隆々な仁王のような体つきに圧倒されるが、比較対象があると、その圧倒的な筋肉量と骨格の大きさに唖然とさせられる。
とてつもなく盛り上がる大胸筋に覆われた胸板は、脂肪を蓄えた100kgオーバーの大より余裕で分厚い。
その厚みに合わせるように肩幅も途方もなく広い。
巨大な球体に隆起する肩の筋肉から伸びる腕は、幾重にも上腕二頭筋と上腕三頭筋が盛り上がり、並の男の胴回りよりも太い。
大のことなど易々とその胸と腕で包めてしまう。
逆三角形に引き締まっているように見える胴も、腹筋と腹直筋が鎧のように分厚く隆起し、ズッシリと太い。
大よりずっと高い位置にある腰から伸びる腿は、ラグビー選手たちが哀れに思えるほど、凶悪な太さ、重量感でそのバルクマッチョボディーを余裕で支えていた。
ぶらりと下げられた腕の先の拳も、最新のデザインのスニーカーに覆われた足も、規格外にデカい。
全てのパーツが大きいのだ。
始まる前からして既に勝負になるのか疑問に思われる体格差。

「い、いやー……相対すると立川さん、すっごい体ですね」

ベテラン芸人が思わず敬語でコメントする。
どうも、と雄司が苦笑する。
大は雄司のデカさに思わず真顔になっていたが、雄司が周囲の尊敬の目を全て集め、既に勝負がついているかのような雰囲気に思わず歯ぎしりした。
雄司はブランド物のポロシャツに高級そうな生地のチノパン、スポーツブランドのスニーカーとそのままファッション雑誌に掲載されてもおかしくない出で立ちだ。
日本人離れしたスタイルの良さと合わせて、劣等感が刺激される。
大はどうしてもその脂肪込みの巨体で女ウケは最悪だし、普段は泥と汗まみれでお洒落とはほど遠い。
……お綺麗な服を着て、勝負の厳しさにも向かい合わず、ただひたすら薬とトレーニングで体を膨らませた男。
無性に腹が立った。
その苛立ちは自慢の肉体が、ボディービルダーというこれまで歯牙にもかけなかった種類の男にあっさり負けたショックを紛らわすものだったが、単細胞的な大にはそんな自分を理解することも、理解しようとも思わなかった。
気にくわない物は、潰す。
その鼻持ちならない面を無様に汚してやる。
毎日重りを持ち上げているだけの男に、実践的なパワー、体の使い方ができるわけがない。
現に雄司は腰も落とさずにただ綱を摑んで漫然と立っているだけだ。
いくら単細胞の大でも、伊達に代表選手まで上り詰めていない。
どんな相手でも油断はしない。
全力で潰す。
どっしりと腰を落とし、ぐるっと縄を巻き、脇に挟んでグッ!!!と固定した。

「ではいきますよ。レディー……ファイッ!!!!」

テンションの高い司会者が叫んだ瞬間、大は満身に最大のパワーを込めた。

一瞬で終わらせてやる……!!!

ビキッ……。

……。
大の肩と腕の筋が、嫌な音をたてた。
ピン!と張った綱はぶるぶると震えているが、全く動いてはいなかった。
混乱する。
綱はまるで大地に堅く繋ぎ止められているかのようだった。
ぴくりとも引くことができない。

……どこかに固定されているのか!?やらせか!?!?

全身に力を込めていることで顔を震わせながら雄司の背後に目を走らせるが、1メートル程余った綱が垂れているだけだ。
雄司は、未だ棒立ちで綱を持っているだけだ。
ただ、その恐ろしい程発達した上腕二頭筋がゴギュゥッ!!!!とはち切れんばかりに隆起している。
雄司と目が合う。
綱引きの最中とは全く思えない、余裕綽々の表情。
呼吸も乱れていない。
大が見ていることに気づくと、その整った眉を上げ、苦笑してみせた。

カッ!!と血が煮えた。

「ウオオオオオオオオオ!!!!」

大が鬨の声を上げ、額に青筋を浮き立たせて渾身の力を込める。

「おおお伊藤選手すごい気迫です!!!全身の筋肉に血管が浮き上がってますね!!!!
し、しかし………最強ボディービルダー、立川雄司は小揺るぎもしない!!!
その巨大な腕の筋肉を盛り上がらせるだけで、日本代表最強の力自慢をあっさりと封じ込めています!!!」

おおおー!!というどよめきに雄司はなんと笑って片腕を綱から放し、メリメリメリメリッ!!!!!と男の頭蓋よりもデカい驚異的なサイズの力瘤を隆起させ、見せつけた。
シャツの袖がギチギチィッ……!!!と悲鳴が漏れる。
めくれ上がった脇から濃い腋毛が覗く。

ザワッ……と、周囲に慄きが広がる。
凄まじい肉体美もだが、片腕になっても全く変わらず完全に大を圧倒している。
大は自分の目が信じられなかった。
世界に通用するフィジカルを誇るこの俺が、たかがボディービルダー風情の優男の片腕に敵わない……??

「た、立川選手片腕ー!!!!!
伊藤選手、完全に立川選手にもてあそばれています!!!
まるで大人と子供、パワーの差は圧倒的だー!!!!」

興奮しきった司会者の叫びに大の視界が怒りで真っ赤に染まる。

「ぐ、こ、こンの……ふざけんな!!!!」

脂汗を流しながら大が唸ると、雄司が視線を向けた。
ふっ、と笑う。

ゾクッ、と悪寒が走った。

まるで散歩中の犬を引き寄せるように、雄司がそのゴツい腕でくいっ!と綱を引いた。
ボゴォッ!!!と大の腿より太い筋肉の塊のような腕が膨れ上がる。
トラックで引かれたような猛烈なパワーに、大は抵抗すら許されず、上半身が引っこ抜かれるように容赦なく引き寄せられ、ぐわっ!!と100kg級の巨体があっさりと宙に浮き上がり、激しい音と共に小麦粉の桶に叩き落とされた。


「は?」
「で、ですから伊藤選手では勝負にならなかったので、3対1でやってもらえないかと……」

雄司の片腕のパワーに手も足も出なかった大が怒り狂うのを羽交い締めにしてなだめていた健だが、ディレクターの言葉に反射的に凄んだ。

「舐めてるんですか?」

健は口調こそ丁寧だが、こめかみに青筋を浮き上がらせキレていることは明白だった。

「すすすすすすみませんッ……!で、でも立川さんは“ぜひ”とおっしゃっていて……」
「ああ!?」

思わず雛壇に腰掛ける雄司を睨み付けた。
雄司はその堂々たる肉体をリラックスさせゆったりと腰掛けていた。
座ったことで膨れ上がった腿の筋肉とボリューム満点の股間の膨らみでチノパンが引き裂かれそうだった。
今は女性タレントに、ポロシャツにぎっしりと詰まった、樽のように隆起した大胸筋に手を置かれ、「すごーい!堅ーい!!」と嬌声を上げられ、苦笑していた。

「あいつ舐めやがって……」
と詰め寄ろうとした健の肩を隼人がガシッと掴んで押しとどめた。

「まあまあ。実際にやればせいせいするだろ」

穏やかな隼人の口調に健は歯ぎしりして唸り、渋々同意した。
だが隼人の目線は健になく、雄司のあまりにも完成し尽くされた雄の肉体に目を奪われていた。
海外含め、自分より強靱な肉体を持つ男と会ったことはあるが、雄司は次元が違っていた。
世界と闘う自分の鍛え上げた肉体が、あまりにも小さく、薄く思えてくる。
己の体など、あの広く厚い胸板にあっさりと包み込まれてしまうだろう。
上背も肩幅も厚みも筋肉量も、まるで違う。
あの体で締め上げられたり組み伏せられたら……。
隠れゲイでバリウケの隼人のケツが疼いた。

「じゃ、じゃあさっそくやりましょー!」

気が変わる前に、と思ったのかディレクターは隼人らの返事も待たず速攻で準備に取りかかった。



「さぁぁぁて!!!
さっきほど圧倒的な格の違いを見せつけた立川選手!
今度は日本代表3人まとめて相手をしてもらいましょう!!!
流石の立川選手も世界で闘うむくつけき大男3人との力勝負は分が悪いかーーーッ!?」

テンションの高い司会者に雄司が苦笑する。
相変わらずリラックスした様子でゆったり構えている。
対する日本代表チームは大、健、隼人の順で綱を握り、先頭の大は小麦粉まみれのままギリギリと雄司を睨み上げていた。
健も似たようなものだ。
隼人は太縄をグルッと胴に回し、しんがりに相応しくどっしりと腰を落とし、気づかれぬよう、ちら、ちら、と雄司の見事な体付きに目をやっていた。
広々とした肩幅。
樽のようなずっしりとした胸板。
背の高さに誤魔化されるが、太腿の重量感が尋常ではない。
あんなぶってぇ脚して……どんだけ精力強いんだろうか……。
ゴクッ、と唾を飲む。
ぼんやりしていると、よーい!と司会者の生声が響いた。
大と健が応じるように、ウオオ!と気合いのこもった雄叫びを上げる。
隼人も慌てて気合いを入れ直した。
いくら雄司が力自慢だろうが俺たち3人に勝てるわけがない。
しかしどんな勝負でも全力を出すのが隼人の性分だった。

「スタート!!!」

司会者の合図と共にグオッ!!と筋肉を隆起させる。

「……ッッ、はぁ!?」

思わず隼人の口から荒い声が漏れた。
まるで数百トンの重りに結びつけられたように、1mmも綱をたぐり寄せることができない。
体を後ろに倒し、足を突っ張るが結果は変わらない。
どうなっている。

「……ンだよこれッ!!」

後ろからでもはっきりとわかるほど力みに顔を紅潮させ、血管を膨れ上がらせた健が荒い息の合間に唸る。
俺達3人で余裕で300kgはあるぞ!?
それを……。
力を込めすぎてぶるぶる震えながら雄司の方に目をやり、隼人は顎が外れそうになった。
既に雄司は片腕になっていた。
棒立ちのまま犬をリードで制御するかのように易々と綱を掴んでたっている。
恐ろしい程膨れ上がった前腕の筋肉とぶっとい血管、ミシッ!!ミシミシッ!!!とポロシャツをぶち破らんばかりに盛り上がる上腕二頭筋だけが、綱にかかるとんでもないパワーを示していた。

「な、なんていうことでしょう……立川選手、余裕!!
ラグビー選手3人でもかなわない最強の男!黄金の筋肉!!」

目の前で行われる信じられない怪力ショーに司会者達は興奮しきっていた。
ギリッ、と三人が奥歯を砕かんばかりに歯噛みする。

「恐ろしいことに立川選手は既に片手!
ラグビー日本代表の3人に男としての格の違いを見せつけ、あざ笑うかのように易々と封じ込めています!」

煽る司会者に雄司は、いやいや、と空いた片手を振り苦笑する。
その間も3人が全力を出しても少しもかなわないパワーは微塵も揺るがない。

「人柄は控えめな立川選手!!
たがこうしている間も容赦なくその恐ろしいパワーでラグビー選手達を消耗させ続けている!!
3人がかりでもたった一人の男に勝てない、もはや公開処刑だぁッッッ!!!
いつこの辱めを終わらせるか、全ては完全に立川選手に委ねられている!!」

観客の盛り上がりに合わせて司会者の発言に遠慮がなくなってきた。
流石の隼人もイラッと来たが、大がブチ切れる方が早かった。

「黙れこの薄らハゲ!!
どうせ全部イカサマだろうがッ!!」

大の侮辱的な発言と本気でキレた様子に冷や水を浴びせられたように辺りが静まる。
だが綱は緩まない。

「クソッ…!!」

健が半身を後ろに向けて踏ん張る。

「じゃあ、イカサマじゃないことをこれから証明しましょうか」

おもむろに、よく響くバリトンの声で雄司がにこやかに言った。
はっ?と思わず3人から声が漏れる。

「怪我しないでくださいね」

ニコリと雄司が微笑む。
挑発されたと感じた大と健が声を上げかけた瞬間、ぐわっ!!!!と大魔神にでも掴まれたように圧倒的なパワーで引き寄せられた。
雄司がメギッ!グゥッ!!!と上腕筋を盛り上がらせ、くいっ、と、先を行く犬を手元に戻すように軽く綱を引いたのだ。
出力の違いは圧倒的だった。
3人の体重や抵抗など、なんの意味もない。
雄司が綱を引いた10cm、きっかり引きずり出された。
必死の踏ん張りをもろともしない雄司のパワーに3人はバランスを崩し大きくつんのめった。
慌てて綱にすがりつく様子に観客から笑いが漏れる。
そこで勝負を決められただろうが、雄司は弄ぶように再び綱をその豪腕で固定した。

「くっ…そッ……!!!」

健はもはや完全に後ろを向いて綱を肩にかけ両腕で掴み、トラックでも引くかのように全身の筋力を漲らせるが、雄司の幾重にも筋肉の盛り上がった左腕はびくともしない。

「舐めんなッ……!」

尻が床に付くほど体を倒して綱を引く、爆発せんばかりに顔を紅潮させた大の叫びに、雄司は「ハハッ!」と笑い、

「じゃあちょっと本気出しますね」

と今まで遊ばせていた右腕で綱を掴んだ。
ズシッ!!!と綱にかかる圧力が膨れ上がり、隼人達はひっくり返りかけた。
フンッ、と雄司が軽く鼻息を吐くと、メリッ!!ギチッ!!!と上体の筋肉を隆起させ、ぶっこ抜くように一気に綱を引いた。
両肩から腕が引き千切られそうな力に悲鳴を上げる間もなく、三人の足が宙を浮く。
訳がわからず滑稽に手脚をばたつかせながら小麦粉の桶にまとめてたたき落とされた。
喝采と爆笑が湧き起こる。

「一瞬!!!
立川選手の超人的な筋力にラグビー選手達は呆気なく引きずり落とされました!!!
数メートル飛んでましたよね……」

興奮した司会者の言葉を遮るように、「い、痛ぇーッ!!!」と情けない悲鳴が上がった。
受け身も取れず無様に落ちた三人が蠢いていたが、そのうち大が腕をだらんと下げて顔を歪め叫んでいた。
雄司の万力に無駄な抵抗を続けた結果、あっさりと両肩を外されたのだ。
ただならぬ雰囲気に徐々に歓声が冷めていく。
ガバッ!と綱を放り出した雄司が桶に跳び込み、ザッ、ザッ、と小麦粉をものともせぬ力強い歩みで喘ぐ大に近寄った。

「な、なんだよッ……まだやんの………ヒッ!?」

近寄ってくる自分を圧倒する筋肉量を誇る大男に本能的に恐怖を感じた大が身を守るように後退し体を縮めたが、雄司はかまうことなくガッ!!!とそのグローブのような手で大の両肩を掴んだ。
至近距離で相対すると二人の体格差は如実だった。
大など比べ物にならない肩幅の広さと胸板の厚み。
肩を捕まえた両腕は大の顔よりも太い。
その凶悪な腕がグブゥッ!!!と膨れ上がった。

ガゴッ!!!!

イギィッ!?と大が悲鳴を上げて失神した。
周囲が静まりかえる。

「大丈夫、肩嵌めただけです。救護室はどちらですか?」

雄司はそう言いながらまるで抱き枕でも抱えるように100kgオーバーの大を軽々と持ち上げ、その幅広い極厚の肩に担ぎ上げた。
まるで獲物を捕らえた恐ろしい狩人のようだった。
哀れな獲物は泡を吹いて伸びている。
若いADが慌てて二人を救護室に案内していったのだった。


以上が事の次第だった。


「絶対にイカサマだ……風呂あがったら締め上げてカラクリ暴いてやる……」

テレビ局地下に用意されている大浴場。
昭和に作られたそのままの鄙びた雰囲気だが、流石に掃除が行き届いている。
脱衣所には健と隼人しかいないが、大浴場からは湯の音が響き誰か先客がいるようだった。
粉まみれの服を投げ捨てるように脱ぎ捨てパンツ一丁になった大が、腹を空かした熊のようにぐるぐると歩き回りながら低い声で毒づく。
女遊びの激しい健の真っ赤なパンツはピチッとした股下の浅いデザインで、その自慢の逸物のシルエットをくっきりと浮かび上がらせていた。

「まだ言ってんのか…」

隼人は呆れたように服を脱ぐ。

「まだも何もどう考えてもおかしいだろうが!!
毎日みみっちくバーベル上げ下げしてるだけの男が、俺達3人をまとめて吹っ飛ばせるわけねーだろ!!」

健が吠える。
健が言うことも一理あった。
どう考えても雄司のパワーは異常だった。
人間離れしているとしか言いようがない。
だが……。
隼人が形だけのため息をつく。

「確かに普通じゃ考えられないが……お前も見ただろ、あの立川さんのエグい体。あの大が子どもに見えたぞ……」

隼人はすっかり雄司に心酔しきっていた。
なんとかしてお近づきになりたい。
今も思い出し勃起を抑えるのに必死だった。

「どうせステ使って作った体だろうが!!」

目を血走らせた健が勢いよく隼人に向かってきて両手で隼人の胸を突き飛ばす。
体格的には隼人が勝るとはいえ、健の遠慮のないパワーにゴホッ、と息を吐きヨロヨロと後退する。
身を折ってげほげほと咽せる。
言葉が出なくなった隼人に健がまくし立てる。

「いいか?普通に考えてあんなアメコミヒーローみたいなバルクあり得ないだろ。薬しかねえんだよ!」

キレて目の色がおかしくなった健がまくし立てる。
ガラッ、と浴場のドアが開き誰かが上がってくるがそんなことは気にもとめない。
ゲホッ、と隼人が咳き込みながら体を起こし、落ち着けって……と話しかけたが、健の背後、浴場から出てきた男を見て口を止めた。

「薬漬けの体に俺らに勝てる馬力が出せるハズねえ。
ぜってー番組側とグルになっておれら馬鹿にしてんだよッ!!!」

健は、隼人が最早自分に注意を向けておらず、背後に目が釘付けになっていることに気づいてもいなかった。

「あンの肉ダルマ、ぜってぇ許さねえ!!化けの皮剥いでやる!」

ダンッ!!と健が勢いよく壁に拳を叩きつける。
ビリビリと空気が震え、収まった瞬間。

健のほぼ真上から深いバリトンの声が響いた。
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