二人の魔法使い ~死が二人を分かつまで~

渡邊まさふみ

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一章

魔法革命

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 魔法革命は世界のことわりを変えた。

 魔法史は全てこの一文から始まる。

 以下は一般的な魔法史に用いられる教科書からの抜粋である。



魔法革命は世界のことわりを変えました。

聖暦719年
 一部の者が持つ特別な力とされた強大な魔法。
 これを無秩序に振う魔法使いの危険性を訴えていたアウグスト王国王弟カールと聖教会ウィーン司教が殺害された事に始まる魔法廃絶運動は、大都市を中心に世界へと波及しました。

聖暦720年
 魔法廃絶運動の勢いは凄まじく、魔法使いの自由と権利を求めた魔導王率いる魔法王国セイシルが周辺国家と民兵による連合軍により滅ぼされました。
 この時、戦火に巻き込まれた民衆に三万人もの死傷者が出、述べ八万人の犠牲者を生んだ事に対する世論の反発は凄まじく、強力な力の暴力を根絶するべく世界に魔法使い粛清の嵐が吹き荒れました。

聖暦721年
 魔法使いへの弾劾が世界に広まる中、一部の魔法使いの蛮行が発端で、世の為に働く多くの魔法使いが殺害され、魔法そのものが世界から消えてしまうことを危惧したニルバーナ帝国皇帝マルティンは強権を発動し国内を平定、友好国であった魔法使いに対する弾劾の急先鋒アウグスト王国国王アウグスト3世との首脳会談にて平和へに向け共に歩む事を確認し、声明を発表します。
 これを遵守するべくアウグスト国王も王国での弾劾を鎮圧し、平和への足掛かりが作られました。
 
聖暦722年
 ニルバーナ帝国とアウグスト王国の共同声明の翌年、マルティン皇帝は、聖教会バルス教皇との首脳会談にて、共に協力し魔法使いの蛮行に対し平和的解決を模索する事に合意します。
 この年、全国の聖教会から「平和への道」という魔法使いへの弾劾行為を禁止する布教が始まり、事態は徐々に鎮静化していきます。

同年
 魔法使い廃絶運動鎮静化に賛同、尽力した各国と聖教会は、ジルタール帝国魔法顧問を議長とした魔法統制会議を樹立しました。
 この会議は乱立する魔法使いの各集団を一定の規律の下、管理統括する事を目指すものでした。

聖暦723年
 当初は反発も見られましたが、魔法統制会議の呼びかけに賛同した帝国最大の魔法ギルド「ウォード」は、魔法使い及び魔法の絶滅を危惧し、大小の魔法ギルド及び各研究機関をまとめ上げ、即席ながら魔法使いの組合組織「魔法協会」を立ち上げる事に成功します。
 魔法協会は廃絶運動の火種が自らの行いにあることを認め、ウォード代表スタークを会長に選任、魔法統制会議に参加し、各地の魔法使い、研究機関を次々と魔法協会に入会させる事で魔法使いの統制を目指しました。

聖歴724年
 魔法協会自体が自浄作用の証として、依然として抵抗していた各地の反乱勢力を完全に鎮圧、この年全ての国が魔法統制会議に参加した事で、一連の魔法廃絶運動は収束します。

聖暦725年
 魔法協会は魔法統制会議において革新的発表を行います。
 魔法協会立ち上げから協会は更なる魔法使いへの弾劾を起こさぬ様、参加魔法使いの魔法の管理に着手していました。
 つまり一子相伝あるいは秘匿されていた各団体や研究機関のみで共有されていた魔法を体系的に纏めることに成功したのです。

 更に人の持つ魔力量を感知出来る魔力水晶の量産化にも成功し、体系化された魔法を記した魔法書と共に魔法統制会議に提出されました。

 これにより、魔法はその理論と行使方法を統一化し、魔力を持つ人が使える魔術として広く普及し始めます。

こうした一連の変革を魔法革命と呼びます。

「魔法の全てを白日に」
魔法統制会議ジルタール議長のこの言葉は魔法革命の象徴とされています。

 生き残った魔法使いは魔術士となり、世界にその秘術と秘匿された魔法を公開提供した事で、今日の魔術文明が成ったのです。




魔法革命から500年
 
 魔法革命以降、魔力はほぼ全ての人が保有するものである事が分かった。
 資質や適性の違い、向き不向きなど個体差はあるが、希望し学び訓練する事である程度魔法を使用できる事が判明したのだ。
 現在では魔法統制会議によって魔法関連全般の法整備と唯一公的に魔法を攻撃手段として使用出来る、職業魔法使い「魔術士」になるための教育機関、魔術学校が各国に設立された。
 更には冒険者ギルドとほぼ同数の魔法協会改め、魔法発現を確立された術として行使する、魔術士の組合である魔術協会も全国に作られ、魔術を行使する権利を得た者の管理監督を行なっている。
 こうして魔法使いは絶滅し、秘術であった魔法は厳格な規律に保護され一部の特別なものから、誰もが触れ、行使できる一般的な魔術として普及する。
 



 魔術は魔法を明確な規則性に基づき魔力を媒介に発現させる術である。
 誰もが使える様になり、汎用化したが、従来の魔法発現とは異なりその効果と威力は格段に落ちた。それでも人々は魔術を求めた。

 新たな格差と火種を含みながらも、理解できるのならば、持たざる者が少数であるならば恐れることはないと。

 一部の者しか使用できない特殊なものは魔術とは成されず、従来の魔法使いが使用していた魔法及び魔法発現方法は古の魔法と呼ばれ、今では使う者が現れる事はなく魔法使いは絶滅した。
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