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一章
魔法使いと魔術士
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魔法を発現させる為に詠唱や魔法陣を使用する事を総称して魔術と呼ぶ。
元々、魔術は特殊な魔法を使用する場合にのみ用いられていた技術であったが、魔法革命以降魔法の発現までのプロセス全般に詠唱が用いられ、これを使用する者を魔術士と呼んでいる。
現在無詠唱と呼ばれる詠唱術式を使用しない魔法発現方法は元々、無詠唱という言葉自体が存在しない程当たり前の事であったが、魔法自体が一部の限られた者にしか使えない特殊なものであったという事もあり、魔術も含め何らかの魔法を行使する者達を魔法使いと呼んでいた。
しかし、魔力を持つ者が特別な存在では無くなり魔法統制会議により魔法発現には詠唱術式を使用する事と定められた上に、魔術協会に登録した者のみが魔術士を名乗ることが許されるライセンス制となってからは、事実上魔法使いは存在しない事となり、ここに魔法使いは絶滅した。
以降魔法使いに代わり、魔術士が魔法行使が出来る唯一の存在となった。
魔法革命以降全国に配布された魔法書には、誰もが扱える詠唱が記載されていた事で魔法の発現が容易になり、魔術士が爆発的に増加した。
魔法革命での一連の流れは賞賛されるべき出来事であり、魔術により身近なものとなった魔法は多くの魔術士により生活の一部にも浸透し人々の生活は格段に向上した。
夜になっても街中を照らす魔石を利用した街灯などの魔道具は元より、簡単な着火や飲料水の確保、怪我や病に対する回復魔法と、その恩恵は多岐にわたる。
しかし、物事には良い面があれば悪い面がある。
最も顕著な違いはその戦闘力である。
ストレートに言うと、それまでの魔法使いに比べ魔術士は格段に弱くなった。
詠唱という言葉を紡ぎ魔法を発現する行為には時間がかかり、強大な魔法ほど詠唱も長くなる。
その為、詠唱省略や詠唱短縮が研究されたのも当然の流れと言え、たゆまぬ努力の結果、現代では主要な魔法は詠唱時間の短縮には成功してはいるが魔法発現までのスピードは当然無詠唱には敵わない。
稀に無詠唱で放つ事が出来る天才も現れるが、魔法使いが存在しない現代では失われた発現方法とも言え、現代の魔法研究では未だに発動までのプロセスや理論が解明された事がない。
なぜならば、魔法発現の根本的な理を理解せず詠唱に依存した、結果ありきの魔法発現しか学ばぬ魔術士には、たまたま成功した無詠唱での魔法発現は術者本人も他人に説明できるほど理解してはおらず、要はよく分からないのだ。
この為、無詠唱で魔法を使う事が出来た者も、全ての魔法発現を無詠唱で行うことができた訳ではなく、威力が弱い初級魔法を行使するのが精々であり、詠唱との共有という状態が天才と呼ばれる魔術士の今の姿である。
また、威力も格段に落ちた。
詠唱に依存した魔法発現では、どの様な魔法をどのぐらいの威力で放たれるか、その全てが詠唱術式の中に定められている。
これにより、魔力が暴走し大爆発を起こすなどの失敗も無くなったが、魔術士各自の魔力に応じた威力差や魔力のコントロールに応じた威力の増減もほぼ行うことが無くなった。
この様に、スピードと威力両面の性能差がそのまま魔法使いと魔術士の戦闘力の差となっている。
そんな現代の環境において、異質とも言えるが僕は詠唱を習った事がない。
詠唱を知る前に教わったのが師匠だったのだから、僕としては詠唱の方が異質に感じてしまう。
そんな僕は師匠との修行と旅を通じ徐々に世界の理を知るにつけ、世の中の魔術の在り方に作為を感じ始めた。
当たり前の中にいればそれが常識、僕らの感覚は非常識となるのだろう。
魔法革命において魔術士が生み出され、誰もが魔法を使える様にというお題目で広がった詠唱の流れは何も間違っていない。
出来ない者が出来る様になる補助的な役割、あるいは目的に至るガイド的役割というのであれば詠唱は本当に便利なものなのだから。
しかし、無詠唱で使える者と詠唱で魔法を行使する者が共存する世界では無い。
いつのまにか無詠唱は絶滅し魔法の汎用性や才能や努力による個性や自由は全てが閉ざされている。
例えるならいい大人が今だに補助輪を付けて自転車に乗っている様なものだ。
たまに補助輪が外れてしまった程度の稀な例外はあるが、誰も補助輪付きをおかしいと思わない事がおかしい。
本来の性能も世界の広がりも知らず、盲目に足枷を許容している。
詠唱省略や短縮の研究なんて、どの補助輪が良いかを研究している様なもので、どれだけ優れた結果を出しても補助輪は補助輪だ。
学問としてならまだ許容出来るが、補助輪を外して乗る者を異端とし共存を許していない。
この状況に世界中が疑問を持たない、これこそが作為を感じる理由だ。
詠唱という、マニュアルを手に入れた事により魔法が使える者は量産されたが、個性と自由は殺された。
どちらがより正しいかということではなく、全てが白日の下に晒された時に今を生きる僕らが目の前の事実と向き合えば良い。
その結果は後の歴史が判断してくれる事だろう。
元々、魔術は特殊な魔法を使用する場合にのみ用いられていた技術であったが、魔法革命以降魔法の発現までのプロセス全般に詠唱が用いられ、これを使用する者を魔術士と呼んでいる。
現在無詠唱と呼ばれる詠唱術式を使用しない魔法発現方法は元々、無詠唱という言葉自体が存在しない程当たり前の事であったが、魔法自体が一部の限られた者にしか使えない特殊なものであったという事もあり、魔術も含め何らかの魔法を行使する者達を魔法使いと呼んでいた。
しかし、魔力を持つ者が特別な存在では無くなり魔法統制会議により魔法発現には詠唱術式を使用する事と定められた上に、魔術協会に登録した者のみが魔術士を名乗ることが許されるライセンス制となってからは、事実上魔法使いは存在しない事となり、ここに魔法使いは絶滅した。
以降魔法使いに代わり、魔術士が魔法行使が出来る唯一の存在となった。
魔法革命以降全国に配布された魔法書には、誰もが扱える詠唱が記載されていた事で魔法の発現が容易になり、魔術士が爆発的に増加した。
魔法革命での一連の流れは賞賛されるべき出来事であり、魔術により身近なものとなった魔法は多くの魔術士により生活の一部にも浸透し人々の生活は格段に向上した。
夜になっても街中を照らす魔石を利用した街灯などの魔道具は元より、簡単な着火や飲料水の確保、怪我や病に対する回復魔法と、その恩恵は多岐にわたる。
しかし、物事には良い面があれば悪い面がある。
最も顕著な違いはその戦闘力である。
ストレートに言うと、それまでの魔法使いに比べ魔術士は格段に弱くなった。
詠唱という言葉を紡ぎ魔法を発現する行為には時間がかかり、強大な魔法ほど詠唱も長くなる。
その為、詠唱省略や詠唱短縮が研究されたのも当然の流れと言え、たゆまぬ努力の結果、現代では主要な魔法は詠唱時間の短縮には成功してはいるが魔法発現までのスピードは当然無詠唱には敵わない。
稀に無詠唱で放つ事が出来る天才も現れるが、魔法使いが存在しない現代では失われた発現方法とも言え、現代の魔法研究では未だに発動までのプロセスや理論が解明された事がない。
なぜならば、魔法発現の根本的な理を理解せず詠唱に依存した、結果ありきの魔法発現しか学ばぬ魔術士には、たまたま成功した無詠唱での魔法発現は術者本人も他人に説明できるほど理解してはおらず、要はよく分からないのだ。
この為、無詠唱で魔法を使う事が出来た者も、全ての魔法発現を無詠唱で行うことができた訳ではなく、威力が弱い初級魔法を行使するのが精々であり、詠唱との共有という状態が天才と呼ばれる魔術士の今の姿である。
また、威力も格段に落ちた。
詠唱に依存した魔法発現では、どの様な魔法をどのぐらいの威力で放たれるか、その全てが詠唱術式の中に定められている。
これにより、魔力が暴走し大爆発を起こすなどの失敗も無くなったが、魔術士各自の魔力に応じた威力差や魔力のコントロールに応じた威力の増減もほぼ行うことが無くなった。
この様に、スピードと威力両面の性能差がそのまま魔法使いと魔術士の戦闘力の差となっている。
そんな現代の環境において、異質とも言えるが僕は詠唱を習った事がない。
詠唱を知る前に教わったのが師匠だったのだから、僕としては詠唱の方が異質に感じてしまう。
そんな僕は師匠との修行と旅を通じ徐々に世界の理を知るにつけ、世の中の魔術の在り方に作為を感じ始めた。
当たり前の中にいればそれが常識、僕らの感覚は非常識となるのだろう。
魔法革命において魔術士が生み出され、誰もが魔法を使える様にというお題目で広がった詠唱の流れは何も間違っていない。
出来ない者が出来る様になる補助的な役割、あるいは目的に至るガイド的役割というのであれば詠唱は本当に便利なものなのだから。
しかし、無詠唱で使える者と詠唱で魔法を行使する者が共存する世界では無い。
いつのまにか無詠唱は絶滅し魔法の汎用性や才能や努力による個性や自由は全てが閉ざされている。
例えるならいい大人が今だに補助輪を付けて自転車に乗っている様なものだ。
たまに補助輪が外れてしまった程度の稀な例外はあるが、誰も補助輪付きをおかしいと思わない事がおかしい。
本来の性能も世界の広がりも知らず、盲目に足枷を許容している。
詠唱省略や短縮の研究なんて、どの補助輪が良いかを研究している様なもので、どれだけ優れた結果を出しても補助輪は補助輪だ。
学問としてならまだ許容出来るが、補助輪を外して乗る者を異端とし共存を許していない。
この状況に世界中が疑問を持たない、これこそが作為を感じる理由だ。
詠唱という、マニュアルを手に入れた事により魔法が使える者は量産されたが、個性と自由は殺された。
どちらがより正しいかということではなく、全てが白日の下に晒された時に今を生きる僕らが目の前の事実と向き合えば良い。
その結果は後の歴史が判断してくれる事だろう。
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