二人の魔法使い ~死が二人を分かつまで~

渡邊まさふみ

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一章

古の魔法を操る魔法使い

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「いやーまいったぜ!魔力枯渇なんて考えたことも無かったぞ。レオがまた自重しねーもんだから、殺す気かと思ったがな!」

 最初にオリジナルポーションのお世話になったゲルドがニヤニヤしながら悪態をついてくる。
 魔法剣を取得したのが思いの外嬉しかったのだろう。

「魔力量のことを完全に忘れてました。あの感じだと五分が限界ですかね。毎日根気良く魔力を流す練習をしていればもう少し増えて来ると思いますよ。それとも、僕がお手伝いしましょうか?」

「い、いや!あれだけは勘弁してくれ!コツコツ頑張るからよ。」

 そんなに嫌なのか……残念だ。

「リックの方はどうです?」

 一通り訓練を終えた僕らは少なくなった魔力の回復がてら最後の休息をしていた。
 リックが紅茶から顔を上げると、こちらも満足そうな顔している。

「バッチリだ!無詠唱で索敵魔法が使える様になっただけじゃなく、風魔法も少しだが使える様なったぞ。」

「マジか!ゲルドも魔法剣とか完成させちまうし……」

 ダズルがしょげている。

「ダズル、指先に魔力集められるか?」

「ん?レオ、それぐらいなら簡単にできる様になったぞ。ほら!」

「ロウソクに灯る炎をイメージしてみてください。指先に」

「うぉ!火がついた!」

 ダズルの右手の人差し指から、まさにロウソクの火が浮かんでいる。
 ゲルドもリックも驚いた顔で見ているので、説明するか。

「それが魔法の基本ですよ。」

「魔法の基本てのは詠唱を覚えることだろ?何でこんな簡単に出来るんだ???」

「詠唱は体内の魔力を強制的にコントロールし、目的の事象を発現させるものですから、詠唱しないでコントロールして発現できるなら詠唱はいらないということになりますよね?」

「それはそうだが……そんな事は魔術学校でも教えていないと思うが。」

「確かに教えてないだろうな。そもそも現在詠唱無しに魔法を意識的に使える者は表向き絶滅していると言って良いからな。」

 師匠が割って入って来る。

「なんでそんな事に?」

「誰もが魔法を使える様にしたからだ。」

「それは俺達でも知ってます。魔法統制会議が広めた事は学校で習いますから。」

「広くは知られていないが、その時に魔法は詠唱を伴うものと決められたのだ。逆に言えば魔法は詠唱をしなければ発現してはならないという暗黙の了解が蔓延っている。たまに無詠唱で魔法を発現する奴が出て来るが、ここまで体系的に理論を把握している者はいない。というか理論的に考える事さえも禁じられていると言っても良いだろうな。」

「誰がそんな事を?」

「それは知らない方が良い。時が来て知る必要が出来た時には教えてやるがな。」

「ま、まぁルナ様がそう言うなら聞きませんが……」

「俺も一つ聞いてもいいですか?」

「何だリック。言ってみろ?」

「そもそも何でルナ様達は無詠唱で魔法が使えるんですか?というか無詠唱が当たり前の様ですけど……答えられる範囲で良いのですが」

 あれだけ目の前でガンガン無詠唱で魔法を行使していたのだ、ずっと疑問に思っていたのだろう。
 ここがチャンスとばかりの質問だ。

「それは簡単な質問だな。私達は魔術士では無く魔法使いだからだ。」

 もはや師匠は隠すつもりも無いらしい。

「魔法使いってあの魔法使いですか?」

 ここからはリックの質問を僕が受ける。

「ええ、その認識で間違っていませんよ。」

「だから無詠唱なのか。」

「そうですね。そもそも詠唱自体、補助的役割りでしか使用されないので魔法陣を必要とする魔法以外で、僕らはほぼ使いません。」

「でも、この前戦っていた時には魔法名を唱えてなかったか?」

 ダズルが野営地での戦いを思い返しているのだろう。

「あれは、前衛で戦うダズル達に何の魔法を僕らが使うのか知らせる為です。いきなり後ろからよく分からない魔法が放たれたら、即席チームでは死活問題になりますし、放たれる魔法が分かった方が動きやすいでしょう。」

「まぁ、確かにそうだな。」

「それと魔法の練習する時に師匠が言ったと思いますが、そもそも無詠唱という言葉自体が詠唱が当たり前という概念に基づいたものです。本来魔法というのは詠唱をしないものが当たり前なんですけどね。」

 要するに魔法名などサインと変わらない。
 その証拠にファイアと唱えながら氷柱を出したり、風の刃を出すことも出来る。

「魔法使いって絶滅したと習ったが?」

「ああ、そうか……皆さんにはまだちゃんと話してませんでしたよね。今は細かい説明は省きますが、僕らは古代魔法文明時代の魔法とそれ以前の魔法、今で言う古の魔法全般に精通し、それを使いこなします。正確に言うと師匠が魔導師と弟子の僕が魔道士と言う、魔法使いの中でもかなり特殊な師弟制度に基づいた魔法使いです。」

「ダズル、リックなんか俺達とんでも無い事を今聞いたよな?」

「ああ、ルナ様とレオが規格外なのは魔術士では無く魔法使い。しかも古の魔法の使い手となれば納得はするが、魔法統制会議の趣旨には反する存在って事だ。」

「まぁ、そういうことになりますね。」

「レオ、そんな大事なことを俺達に話しても良かったのか?」

「師匠も皆さんには隠す気が無いみたいですし、いいんじゃないですかね。」

「そんな軽く……」

「お前達がベラベラと喋るとは思っていないさ。それに隠して戦うというのも案外面倒でな。」

 面倒って理由が本心だな……

「師匠もこう言ってますし、難しいことは考えずに、今は新しく手に入れた力を喜びましょう。」

「ああ、そうするよ。」

「敵対するなら消せば良いだけだしな。」

 締めの言葉が怖すぎる……
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