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一章
協会改革
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僕は猛烈に働いた。
師匠許しを得て協会に泊り込みだ。
そもそも鑑定スキルの無いマスターが、多分売れるだろうと仕分けた物にどれだけの価値が付けられるか。
付く訳が無い。
そこで、手伝いを申し出た以上片っ端から鑑定し、仕分けて行くことになったのだ。
魔術師協会の資格の中には鑑定士という内部資格がある。
豊富な知識だけでなく、鑑定に必要な各種の魔法行使ができ、専門の魔法陣が記されたスクロールも持っている、現役でも50人といないスペシャリスト資格で、協会が行う買取価格と販売価格を設定する事もできる。
しかも鑑定士が鑑定した証明をつけることもでき、この証明書があれば協会は販売価格で買い取る義務があるという、多大な責任を行使する権限まで持っているのだ。
そんな、特別な資格を特級魔術師の僕は持っている。
というか特級魔術師には最初から付与されているので、少しお手伝いをして貢献しようという軽い申し出のつもりだったのだが。
数百点の商品を片っ端から鑑定して行くが、並べる場所がない……
……先に言って
乗りかかった舟なので財政も一気に好転させてしまおう。
二日目は鑑定を一時ストップして職員総出でビラ配りをさせた。
適正価格を下回らなければ良いだろうと、協会始まって以来、市民や冒険者にも大安売りだ。
期限間近の薬などが大量に見つかった時点でこの方向に方針転換、普段買えない価格の物が市価の半値以下とあってそれはそれは売れた。
薬などは、命のやり取りをする冒険者には必須のアイテムだ。それが安く手に入るなら売れない訳が無い。
売り場が無いので屋外をそのまま青空展示場にして鑑定が終わったら、そのまま並べて叩き売り。
活気が出れば人が集まり、お金も集まる。
現金で買い取るので今まで買い取りを躊躇していた魔術師が、これ幸いと大量の品を持ち込む。
僕はというと最初の二日こそ倉庫で格闘していたが、それ以降は売場で鑑定している。
今では鑑定したら、そのまま値札をつけて売りに出す。
噂を聞きつけて屋台まで出る始末。
エテルナ魔術協会はかつて無い人の入りと売上を上げて行く。
こうなっては、最初は嫌々やらされていた職員も、悲観している暇などない。
これが十日間続いた……
やりきった!職員の顔には充実した笑顔!労働の後はビールが美味い!
すっかり打ち解けた職員達と肩を組みながらの本日五回目の乾杯をしていると、真っ赤な顔のマスターが皆を静める。
「発表します!……」
そっからはもうどれだけ飲んだのか覚えていない。
今回のお祭り騒ぎで去年一年間の協会の利益を超えた!なんて聞かされたら今までの協会の雰囲気なんて吹っ飛んだ。
誰もが明るく積極的に職務をこなす様に変わった。やはりやり甲斐は働くモチベーションだ。
ただそのままだと元に戻るだけなので、翌日から簡易鑑定の魔法陣を記入したスクロールや魔道具の見方に薬の測定方法などを伝授して行く。
鑑定士に頼るのは月に1、2回あれば十分だ。それをこの体制で超えてくるのなら鑑定士を雇った方が安い。
しかも地域によって買取の値段は違うので、商人にも協力を依頼し、他の地域で買い取ると高くなるものは纏めて卸すなど抜かりは無い。
これだけやればこの地方でも十分利益が出せるだろう。
そもそも、伝授した内容などはそんなに難しいことでは無いのだが、本部が意図的に秘匿しているのをどうしても感じてしまう。
◇
「師匠!やっと帰ってきました!」
数日ぶりに宿に戻ると師匠がいない。
宿に聞くと三日ほど帰ってないらしい。
嫌な予感はするが、体力の限界だ。
そのままベッドに倒れこむとすぐに意識を手放した。
◇
目を覚ますと部屋の隅に杖が立てかけてあり、マントが掛かっていた。
「浄化」の魔法が丁寧かけられているらしく、パリっとしている。
気配が無いので既に出かけた様だが、どうやら一度師匠が帰った様だ。
「うーん、下着まで着替えさせるのは辞めて欲しい……」
気づかない僕も僕だが……
此の所毎晩職員に連れられ街で一杯やっているのだ。
連日の酒と疲れですっかり寝過ごしたらしく、既にお昼近かったので、屋台で軽く食べて協会に向かう。
高級な宿では基本的に朝と夜の二回食事が出る。
頼めば軽食ぐらい追加で出してくれるが、やはり街の中で食べる方が特産や雰囲気が感じられるので昼は基本的に街中で食べる様にしている。
この街は森の恵みが多く、魔物も多いので、肉に野菜とかなり豊富に流通している。
味付けはあまり突飛なものは無く、少し北にある街のため、北国特有の塩分の多さが少し感じられる味付けが多いが、素材の味を壊さない程度なので、あまり気にはならない。
ちなみに、街を納める領主は割と善政を敷いているらしく、概ね好意的に市民は暮らしている。
要するに可もなく不可もないという事なのだが、政治は案外それが難しい。
あまり批判をされないというのが一番為政者としては良いのでは無いかと、オークの串肉を頬張りながら協会に向かうレオであった。
師匠許しを得て協会に泊り込みだ。
そもそも鑑定スキルの無いマスターが、多分売れるだろうと仕分けた物にどれだけの価値が付けられるか。
付く訳が無い。
そこで、手伝いを申し出た以上片っ端から鑑定し、仕分けて行くことになったのだ。
魔術師協会の資格の中には鑑定士という内部資格がある。
豊富な知識だけでなく、鑑定に必要な各種の魔法行使ができ、専門の魔法陣が記されたスクロールも持っている、現役でも50人といないスペシャリスト資格で、協会が行う買取価格と販売価格を設定する事もできる。
しかも鑑定士が鑑定した証明をつけることもでき、この証明書があれば協会は販売価格で買い取る義務があるという、多大な責任を行使する権限まで持っているのだ。
そんな、特別な資格を特級魔術師の僕は持っている。
というか特級魔術師には最初から付与されているので、少しお手伝いをして貢献しようという軽い申し出のつもりだったのだが。
数百点の商品を片っ端から鑑定して行くが、並べる場所がない……
……先に言って
乗りかかった舟なので財政も一気に好転させてしまおう。
二日目は鑑定を一時ストップして職員総出でビラ配りをさせた。
適正価格を下回らなければ良いだろうと、協会始まって以来、市民や冒険者にも大安売りだ。
期限間近の薬などが大量に見つかった時点でこの方向に方針転換、普段買えない価格の物が市価の半値以下とあってそれはそれは売れた。
薬などは、命のやり取りをする冒険者には必須のアイテムだ。それが安く手に入るなら売れない訳が無い。
売り場が無いので屋外をそのまま青空展示場にして鑑定が終わったら、そのまま並べて叩き売り。
活気が出れば人が集まり、お金も集まる。
現金で買い取るので今まで買い取りを躊躇していた魔術師が、これ幸いと大量の品を持ち込む。
僕はというと最初の二日こそ倉庫で格闘していたが、それ以降は売場で鑑定している。
今では鑑定したら、そのまま値札をつけて売りに出す。
噂を聞きつけて屋台まで出る始末。
エテルナ魔術協会はかつて無い人の入りと売上を上げて行く。
こうなっては、最初は嫌々やらされていた職員も、悲観している暇などない。
これが十日間続いた……
やりきった!職員の顔には充実した笑顔!労働の後はビールが美味い!
すっかり打ち解けた職員達と肩を組みながらの本日五回目の乾杯をしていると、真っ赤な顔のマスターが皆を静める。
「発表します!……」
そっからはもうどれだけ飲んだのか覚えていない。
今回のお祭り騒ぎで去年一年間の協会の利益を超えた!なんて聞かされたら今までの協会の雰囲気なんて吹っ飛んだ。
誰もが明るく積極的に職務をこなす様に変わった。やはりやり甲斐は働くモチベーションだ。
ただそのままだと元に戻るだけなので、翌日から簡易鑑定の魔法陣を記入したスクロールや魔道具の見方に薬の測定方法などを伝授して行く。
鑑定士に頼るのは月に1、2回あれば十分だ。それをこの体制で超えてくるのなら鑑定士を雇った方が安い。
しかも地域によって買取の値段は違うので、商人にも協力を依頼し、他の地域で買い取ると高くなるものは纏めて卸すなど抜かりは無い。
これだけやればこの地方でも十分利益が出せるだろう。
そもそも、伝授した内容などはそんなに難しいことでは無いのだが、本部が意図的に秘匿しているのをどうしても感じてしまう。
◇
「師匠!やっと帰ってきました!」
数日ぶりに宿に戻ると師匠がいない。
宿に聞くと三日ほど帰ってないらしい。
嫌な予感はするが、体力の限界だ。
そのままベッドに倒れこむとすぐに意識を手放した。
◇
目を覚ますと部屋の隅に杖が立てかけてあり、マントが掛かっていた。
「浄化」の魔法が丁寧かけられているらしく、パリっとしている。
気配が無いので既に出かけた様だが、どうやら一度師匠が帰った様だ。
「うーん、下着まで着替えさせるのは辞めて欲しい……」
気づかない僕も僕だが……
此の所毎晩職員に連れられ街で一杯やっているのだ。
連日の酒と疲れですっかり寝過ごしたらしく、既にお昼近かったので、屋台で軽く食べて協会に向かう。
高級な宿では基本的に朝と夜の二回食事が出る。
頼めば軽食ぐらい追加で出してくれるが、やはり街の中で食べる方が特産や雰囲気が感じられるので昼は基本的に街中で食べる様にしている。
この街は森の恵みが多く、魔物も多いので、肉に野菜とかなり豊富に流通している。
味付けはあまり突飛なものは無く、少し北にある街のため、北国特有の塩分の多さが少し感じられる味付けが多いが、素材の味を壊さない程度なので、あまり気にはならない。
ちなみに、街を納める領主は割と善政を敷いているらしく、概ね好意的に市民は暮らしている。
要するに可もなく不可もないという事なのだが、政治は案外それが難しい。
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