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一章
命大事に
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「師匠!」
それは夜半のことだった。
常時展開している僕の索敵魔法に反応があった。
魔物が三十以上既に取り囲まれてる。
野営地が広大で、野営する人が多かった事もあって、自分の周りにしか展開していなかったのが災いした。
「ああ、人も多い、ちと厄介だな彼らと合流しよう。」
「はい!すぐ動けます。」
ダズル達の商隊が慌ただしい。
「馬車を中心に隊列を組め!お前らは周りに声かけてこい!」
どうやら、索敵の出来る魔術士がいた様で迎撃態勢を構築中の様だ。
あの様子だとダズルがリーダーか。
駆け寄り声をかける
「魔物が近づいてます!」
「おぅ、お前達も気が付いたか、数は分からんが、ウチの魔術士が気づいた。」
「数は三十以上。ワーウルフが大半ですが、その後に第二波が待機している様です。」
こちらの索敵魔法の確実な精度が高いのを隠し声をかける。
「ほぅ、ウチのやつよりも精度が高いな。少しは期待出来るか。距離は分かるか?」
「戦力として数えてもらって構いません。距離は約二百メートル。取り囲まれてますから、逃げられないでしょう。こちらの様子を伺っています。」
「分かった、うちが一番大所帯なので指揮は取らせて貰う。それなりに熟練の奴等がいるので、安心してくれ。」
「分かりました。僕らはどこを担当しますか?」
「右を頼む。エル!二人を守ってやれ!」
大太刀を担いだ護衛の冒険者に声をかける。
「レオとルナ魔術士です。」
時間がないので簡潔に自己紹介をする。
「俺はエル、冒険者だ。二人とも俺の後ろに。」
「はい!」
言われた通りに後ろに下がり杖を構える。
「なぁ、レオ。一発焼き払えば終わりじゃないか?」
師匠が小声でとんでもない事を言う。
「僕らの正体晒したいんですか!商隊がヤバければ別ですが、まず大丈夫でしょう。魔法もそれなりに加減して下さいね!」
「ちっ、面倒な!」
「我慢して下さいよ!」
僕らが出れば一発なのはその通りだが、オーバーキルだ。
それよりもそんな魔法が使える事を知られる方が後々面倒だと、何度言えば分かるのだろう。
何より指揮権はダズルにある、指揮を無視して勝手に動くのは、ただでさえ寄せ集めの集団では致命傷だ。
それにコレは防衛戦だ。
僕らだけを襲って来るのならば容赦無しの殲滅が可能だが、一般人を守って四方からの魔物を相手にするには、若干不利だ。
冒険者と連携した方が、死傷者を出さない確率は上がる。
師匠に言い含めるのも僕の仕事だ。
「全員聞け!」
ダズルの声が飛ぶ。
「野営地のマナーに則り、指揮は俺が取らせて貰う。今俺達は三十以上の魔物に囲まれている。敵はワーウルフ!もしかしたら第二波もあるかもしれん。それをここにいる奴らで迎え撃つ。」
こちらの索敵内容を信用してくれたらしいな。
まぁ、ここで嘘を付く必要も無いのだから当たり前か。
「戦闘ができない者はこの馬車に乗ってくれ。悪いが自分達の馬車諦めてくれ!荷物も持てるだけだ。それ以上の命の保証はできない!戦線が崩れた場合馬車は優先的に逃がす。方向は落ち着いたら御者に聞いてくれ。」
空いた方向に一目散に駆けると言うことか。
護衛を専門にしてる冒険者だろう、こうした不測の事態に対しての取り決めがちゃんとなされている。
命優先、命大事に、流石だ。
「個別の指揮は俺の仲間が取る!魔術士、弓を使うものは馬車を中心に配置してくれ。前衛はその前で迎え撃て。魔物が見えたら合図するから魔術士、弓使いは撃て!続いて俺の合図で前衛へ切り込む。決して深入りするな!一般人を守るのが仕事だ!」
商隊の護衛は別として、僕達や近くにいた冒険者など戦闘の出来る者は初対面だ、多くの取り決めよりも大雑把な方向性だけが共有されている方が力を発揮する。
指揮官としても優秀な様だ。
何かあれば自分達が支えられるという自負があるのだろう。
魔法は基本、遠距離攻撃だ。
弓と扱いは変わらない。
必然的に後衛職であり、接近戦は前衛職を務める者の仕事だ。
「来るぞ、構えろ!」
魔術士は僕らを入れて七名、弓を持つものが三人、前衛はダズルを筆頭に十二人、剣と槍を構えている。
戦力的には十分か。
後は個々の力量だな。
魔力の高まりを感じる、他の魔術士達が詠唱を始めた様だ。
「撃て!」
暗がりから飛び出した狼の魔物に魔法が飛ぶ。
「ファイヤ!」
「フレイムアロー!」
「ウインド」
火の玉が三名、それよりも殺傷力を上げた上位の火の矢を撃つ者が二人、火の属性が苦手なのか風の塊を撃つものが一人だ。
魔術学校などではこうした戦いの際に使われる魔術の基礎ルールも教えている。
つまり、教科書に野営地で初見の冒険者や魔術士と共闘する場合に推奨される魔術を教えているのだ。
多くの先達の経験に基づくものであるからパニックも抑えられるし、この場合はこの魔術をこう使う、という事が分かっていれば、周りも含め、次の行動も迅速に対応ができる。
魔術学校は良い意味でも悪い意味でも画一化しているのだ。
今回も、各自もう少し高度な魔術も使えるのだろうが、魔術士が教科書通りにこなすことも重要な役割だ。
僕らも無詠唱ではあるが、威力を落とした火の矢を撃つ。
「まじか!」
「無詠唱だと!」
僕らの無詠唱に気づいた数名から各々驚いた声が飛ぶが、このクラスの魔術でも無詠唱に成功したものはいるので、尊敬されることはあれ、畏怖されることはないだろう。
師匠も大人しく火の矢を撃っているところを見ると、今日の非常識は休業の様だ。
それは夜半のことだった。
常時展開している僕の索敵魔法に反応があった。
魔物が三十以上既に取り囲まれてる。
野営地が広大で、野営する人が多かった事もあって、自分の周りにしか展開していなかったのが災いした。
「ああ、人も多い、ちと厄介だな彼らと合流しよう。」
「はい!すぐ動けます。」
ダズル達の商隊が慌ただしい。
「馬車を中心に隊列を組め!お前らは周りに声かけてこい!」
どうやら、索敵の出来る魔術士がいた様で迎撃態勢を構築中の様だ。
あの様子だとダズルがリーダーか。
駆け寄り声をかける
「魔物が近づいてます!」
「おぅ、お前達も気が付いたか、数は分からんが、ウチの魔術士が気づいた。」
「数は三十以上。ワーウルフが大半ですが、その後に第二波が待機している様です。」
こちらの索敵魔法の確実な精度が高いのを隠し声をかける。
「ほぅ、ウチのやつよりも精度が高いな。少しは期待出来るか。距離は分かるか?」
「戦力として数えてもらって構いません。距離は約二百メートル。取り囲まれてますから、逃げられないでしょう。こちらの様子を伺っています。」
「分かった、うちが一番大所帯なので指揮は取らせて貰う。それなりに熟練の奴等がいるので、安心してくれ。」
「分かりました。僕らはどこを担当しますか?」
「右を頼む。エル!二人を守ってやれ!」
大太刀を担いだ護衛の冒険者に声をかける。
「レオとルナ魔術士です。」
時間がないので簡潔に自己紹介をする。
「俺はエル、冒険者だ。二人とも俺の後ろに。」
「はい!」
言われた通りに後ろに下がり杖を構える。
「なぁ、レオ。一発焼き払えば終わりじゃないか?」
師匠が小声でとんでもない事を言う。
「僕らの正体晒したいんですか!商隊がヤバければ別ですが、まず大丈夫でしょう。魔法もそれなりに加減して下さいね!」
「ちっ、面倒な!」
「我慢して下さいよ!」
僕らが出れば一発なのはその通りだが、オーバーキルだ。
それよりもそんな魔法が使える事を知られる方が後々面倒だと、何度言えば分かるのだろう。
何より指揮権はダズルにある、指揮を無視して勝手に動くのは、ただでさえ寄せ集めの集団では致命傷だ。
それにコレは防衛戦だ。
僕らだけを襲って来るのならば容赦無しの殲滅が可能だが、一般人を守って四方からの魔物を相手にするには、若干不利だ。
冒険者と連携した方が、死傷者を出さない確率は上がる。
師匠に言い含めるのも僕の仕事だ。
「全員聞け!」
ダズルの声が飛ぶ。
「野営地のマナーに則り、指揮は俺が取らせて貰う。今俺達は三十以上の魔物に囲まれている。敵はワーウルフ!もしかしたら第二波もあるかもしれん。それをここにいる奴らで迎え撃つ。」
こちらの索敵内容を信用してくれたらしいな。
まぁ、ここで嘘を付く必要も無いのだから当たり前か。
「戦闘ができない者はこの馬車に乗ってくれ。悪いが自分達の馬車諦めてくれ!荷物も持てるだけだ。それ以上の命の保証はできない!戦線が崩れた場合馬車は優先的に逃がす。方向は落ち着いたら御者に聞いてくれ。」
空いた方向に一目散に駆けると言うことか。
護衛を専門にしてる冒険者だろう、こうした不測の事態に対しての取り決めがちゃんとなされている。
命優先、命大事に、流石だ。
「個別の指揮は俺の仲間が取る!魔術士、弓を使うものは馬車を中心に配置してくれ。前衛はその前で迎え撃て。魔物が見えたら合図するから魔術士、弓使いは撃て!続いて俺の合図で前衛へ切り込む。決して深入りするな!一般人を守るのが仕事だ!」
商隊の護衛は別として、僕達や近くにいた冒険者など戦闘の出来る者は初対面だ、多くの取り決めよりも大雑把な方向性だけが共有されている方が力を発揮する。
指揮官としても優秀な様だ。
何かあれば自分達が支えられるという自負があるのだろう。
魔法は基本、遠距離攻撃だ。
弓と扱いは変わらない。
必然的に後衛職であり、接近戦は前衛職を務める者の仕事だ。
「来るぞ、構えろ!」
魔術士は僕らを入れて七名、弓を持つものが三人、前衛はダズルを筆頭に十二人、剣と槍を構えている。
戦力的には十分か。
後は個々の力量だな。
魔力の高まりを感じる、他の魔術士達が詠唱を始めた様だ。
「撃て!」
暗がりから飛び出した狼の魔物に魔法が飛ぶ。
「ファイヤ!」
「フレイムアロー!」
「ウインド」
火の玉が三名、それよりも殺傷力を上げた上位の火の矢を撃つ者が二人、火の属性が苦手なのか風の塊を撃つものが一人だ。
魔術学校などではこうした戦いの際に使われる魔術の基礎ルールも教えている。
つまり、教科書に野営地で初見の冒険者や魔術士と共闘する場合に推奨される魔術を教えているのだ。
多くの先達の経験に基づくものであるからパニックも抑えられるし、この場合はこの魔術をこう使う、という事が分かっていれば、周りも含め、次の行動も迅速に対応ができる。
魔術学校は良い意味でも悪い意味でも画一化しているのだ。
今回も、各自もう少し高度な魔術も使えるのだろうが、魔術士が教科書通りにこなすことも重要な役割だ。
僕らも無詠唱ではあるが、威力を落とした火の矢を撃つ。
「まじか!」
「無詠唱だと!」
僕らの無詠唱に気づいた数名から各々驚いた声が飛ぶが、このクラスの魔術でも無詠唱に成功したものはいるので、尊敬されることはあれ、畏怖されることはないだろう。
師匠も大人しく火の矢を撃っているところを見ると、今日の非常識は休業の様だ。
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