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一章
打ち上げと月皇騎士団
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「乾杯!」
店内に大きな声が響き渡る。
王都サーシャに着いた僕らは、宿に部屋を取ると腰を落ち着ける間も無くザックスが借り切ったレストランで、今回の慰労を兼ねた宴会へと雪崩れ込んだ。
結局、ここでの支払いは全て彼が持ってくれるとの言葉に甘えることにした。
エテルナ方面に向かう者達は一緒に来れなかったことを嘆いていたが、いつでも呼んでくれと言っていたし、多大な犠牲は出たがみな一様に生き残った事を最大限に喜んでいる。
犠牲になった者達への家族へ支払う見舞金は、明日ダズルが冒険者ギルドへ依頼を出し分配されるとのこと。
依頼すればこの様な雑務もこなしてくれるのが冒険者ギルドという所だ。
僕らの宿はザックスのツテで王都一の宿と名高い「黄昏」のスイートを抑えてくれた。
このザックスは商業国家ラーズ出身の商人で、父親が早くからサーシャに移り商会を立ち上げ両国間を中心とした貿易で財を成した、その二代目に当たる。
サーシャでは一、二を争う商会でその資産はラーズを含めても上から数えた方が早い程大きく、ここ王都サーシャにある三階建ての本店を中心にエテルナなど主要な街に支店を構えている。
真っ当な商いは元より、会頭であるザックスの手腕と人柄の良さが市民から貴族までを顧客としている人気の秘訣だ。
今もひとりひとりに酌をして回っている。
当初、僕はダズル達のパーティーと卓を囲んでいたが早々にカオスと化し今目の前に座って礼を述べている冒険者の名前が誰だったか分からず杯を空けている。
師匠はというと、一段高いステージの様な場所に、どこから持って来た?という豪華な椅子に座り、順番に謝辞を受けている。
脇には「お姉様!」と言っていた魔術士の子が控えメイドの如く世話を焼いているので、放置する事にした。
「なぁレオ、お前うちのパーティー入らないか?」
一通り挨拶を済ませたダズルが戻って来た。
「有難いお申し出ですが、僕達は旅して回らねばならないですし、ここの魔術協会で仕事の依頼もありますからね。」
「そっかぁ、残念だが仕方ないか。」
「そうですね、でも嬉しかったですよ。それにしばらく王都にはいますので会う事もあると思いますから、また酒でも飲みましょう。もちろん師匠もね」
すっかり心酔しているだろう師匠との再会も約束する。
「ああ、是非頼む!ルナ様も一緒なら月皇騎士団の幹部会兼ねても良いな。」
ん?今聞き慣れない名前が出て来たぞ。
「げっこうきしだん???」
「おうよ!俺達はそれぞれ所属するパーティーもギルドも違う。だが、生まれた時と生きる場所は違えど死ぬ時は一緒と誓った。ルナ様の為に働く親衛隊の名だ!」
「何ですかそれは!」
「何ですかって、さっきルナ様に剣を捧げたばかりだからな。今回の件で生き残ったやつら全員がメンバーだ。表の顔は今まで通りだが、同志を集め己を高め、いずれルナ様の元に馳せ参じた時こそ月皇騎士団はその姿を表すのだ!」
どこの秘密結社だよ!
クラクラする……
これは酔いなのか頭痛なのか、せめて夢であって欲しいと、だがここは呑みの席。
このテンションに乗らねば。
「な、なるほど……ちなみに何で月皇騎士団なんですか?」
「ルナ様のルナは月の意味だろ?そのお名前の由来になぞって付けたのだ。
月に変わってお仕置き隊
なども出たが、響で月皇騎士団になった。」
「響かよ!でも由来なんて聞いた事無かったなぁ。どんな由来なんだ?」
「レオに言った事は無かったか?今更だが父は月をも従える者になれと言う意味で、このルナと付けたのだよ。」
いつのまにか近寄って来た師匠が口を挟んで来る。
「ん?月の様に美しくでは無くですか?」
「月の様に美しいのは既定路線では無いか」
既定路線かよ!まぁ否定はできないのだが。
それにしても、月を従えろとはあの親にしてこの子アリだな……
「おおっ!ルナ様!ささっ、こちらに月皇騎士団の面々がルナ様のお言葉を待ってらっしゃいます!」
「酔ってるのか?」
「いえいえ、まだまだ大丈夫ですよ。」
それにしてもダズル分かりづらいぞ!なまじ真っ当な応対しているから、まとも話をしてたが、単なる酔っ払いの戯言の様だ。
完全に酔ってるな。
「レオ、お前がルナ様と共に歩む限り俺たちは同士だ!何かあれば俺達を呼べ!」
と杯を片手に師匠と去って行った。
まったく酔っ払いは……
「レオ様、飲んでらっしゃいますか?」
「ああ、ザックスさんか。色々と有難うございます。滞在中の宿まで手配して頂いて。」
「何をおっしゃいます。お二人は命の恩人ですから、足りないぐらいですよ。」
「では、お言葉に甘えます。それにしてもみんなすっかり出来上がってますね。月皇騎士団とか言って盛り上がってますし」
笑いながらツマミにしようと話を振る。
「私も月皇騎士団ですよ。」
「えっ?」
「先程入れてもらいました。」
「ははは!流石にノリが良いですね!」
「いえいえ、この命燃え尽きるまでご奉公させて頂きますよ。」
初めて見るザックスの真剣な表情に
「えっ?マジで?」
ザックスは真剣な眼差しで静かに頷く。
「さすが役者ですね!さぁ飲みましょう。」
「はい!料理ももっと持ってこさせますね!」
いけないいけない、ついつい呑まれる所だった酔っ払いの妄想はどこまでも果てしない。
何はともあれ、無事に王都まで着く事が出来た。
冒険者や魔術士の活動は死と隣り合わせのものが多様にある。
命が軽いこの世界で死は身近なものであり、それを乗り越え無ければ明日は我が身と言う事も多い。
だからこそ、彼らは呑むのだ。
今この時に生を感じられる様に。
店内に大きな声が響き渡る。
王都サーシャに着いた僕らは、宿に部屋を取ると腰を落ち着ける間も無くザックスが借り切ったレストランで、今回の慰労を兼ねた宴会へと雪崩れ込んだ。
結局、ここでの支払いは全て彼が持ってくれるとの言葉に甘えることにした。
エテルナ方面に向かう者達は一緒に来れなかったことを嘆いていたが、いつでも呼んでくれと言っていたし、多大な犠牲は出たがみな一様に生き残った事を最大限に喜んでいる。
犠牲になった者達への家族へ支払う見舞金は、明日ダズルが冒険者ギルドへ依頼を出し分配されるとのこと。
依頼すればこの様な雑務もこなしてくれるのが冒険者ギルドという所だ。
僕らの宿はザックスのツテで王都一の宿と名高い「黄昏」のスイートを抑えてくれた。
このザックスは商業国家ラーズ出身の商人で、父親が早くからサーシャに移り商会を立ち上げ両国間を中心とした貿易で財を成した、その二代目に当たる。
サーシャでは一、二を争う商会でその資産はラーズを含めても上から数えた方が早い程大きく、ここ王都サーシャにある三階建ての本店を中心にエテルナなど主要な街に支店を構えている。
真っ当な商いは元より、会頭であるザックスの手腕と人柄の良さが市民から貴族までを顧客としている人気の秘訣だ。
今もひとりひとりに酌をして回っている。
当初、僕はダズル達のパーティーと卓を囲んでいたが早々にカオスと化し今目の前に座って礼を述べている冒険者の名前が誰だったか分からず杯を空けている。
師匠はというと、一段高いステージの様な場所に、どこから持って来た?という豪華な椅子に座り、順番に謝辞を受けている。
脇には「お姉様!」と言っていた魔術士の子が控えメイドの如く世話を焼いているので、放置する事にした。
「なぁレオ、お前うちのパーティー入らないか?」
一通り挨拶を済ませたダズルが戻って来た。
「有難いお申し出ですが、僕達は旅して回らねばならないですし、ここの魔術協会で仕事の依頼もありますからね。」
「そっかぁ、残念だが仕方ないか。」
「そうですね、でも嬉しかったですよ。それにしばらく王都にはいますので会う事もあると思いますから、また酒でも飲みましょう。もちろん師匠もね」
すっかり心酔しているだろう師匠との再会も約束する。
「ああ、是非頼む!ルナ様も一緒なら月皇騎士団の幹部会兼ねても良いな。」
ん?今聞き慣れない名前が出て来たぞ。
「げっこうきしだん???」
「おうよ!俺達はそれぞれ所属するパーティーもギルドも違う。だが、生まれた時と生きる場所は違えど死ぬ時は一緒と誓った。ルナ様の為に働く親衛隊の名だ!」
「何ですかそれは!」
「何ですかって、さっきルナ様に剣を捧げたばかりだからな。今回の件で生き残ったやつら全員がメンバーだ。表の顔は今まで通りだが、同志を集め己を高め、いずれルナ様の元に馳せ参じた時こそ月皇騎士団はその姿を表すのだ!」
どこの秘密結社だよ!
クラクラする……
これは酔いなのか頭痛なのか、せめて夢であって欲しいと、だがここは呑みの席。
このテンションに乗らねば。
「な、なるほど……ちなみに何で月皇騎士団なんですか?」
「ルナ様のルナは月の意味だろ?そのお名前の由来になぞって付けたのだ。
月に変わってお仕置き隊
なども出たが、響で月皇騎士団になった。」
「響かよ!でも由来なんて聞いた事無かったなぁ。どんな由来なんだ?」
「レオに言った事は無かったか?今更だが父は月をも従える者になれと言う意味で、このルナと付けたのだよ。」
いつのまにか近寄って来た師匠が口を挟んで来る。
「ん?月の様に美しくでは無くですか?」
「月の様に美しいのは既定路線では無いか」
既定路線かよ!まぁ否定はできないのだが。
それにしても、月を従えろとはあの親にしてこの子アリだな……
「おおっ!ルナ様!ささっ、こちらに月皇騎士団の面々がルナ様のお言葉を待ってらっしゃいます!」
「酔ってるのか?」
「いえいえ、まだまだ大丈夫ですよ。」
それにしてもダズル分かりづらいぞ!なまじ真っ当な応対しているから、まとも話をしてたが、単なる酔っ払いの戯言の様だ。
完全に酔ってるな。
「レオ、お前がルナ様と共に歩む限り俺たちは同士だ!何かあれば俺達を呼べ!」
と杯を片手に師匠と去って行った。
まったく酔っ払いは……
「レオ様、飲んでらっしゃいますか?」
「ああ、ザックスさんか。色々と有難うございます。滞在中の宿まで手配して頂いて。」
「何をおっしゃいます。お二人は命の恩人ですから、足りないぐらいですよ。」
「では、お言葉に甘えます。それにしてもみんなすっかり出来上がってますね。月皇騎士団とか言って盛り上がってますし」
笑いながらツマミにしようと話を振る。
「私も月皇騎士団ですよ。」
「えっ?」
「先程入れてもらいました。」
「ははは!流石にノリが良いですね!」
「いえいえ、この命燃え尽きるまでご奉公させて頂きますよ。」
初めて見るザックスの真剣な表情に
「えっ?マジで?」
ザックスは真剣な眼差しで静かに頷く。
「さすが役者ですね!さぁ飲みましょう。」
「はい!料理ももっと持ってこさせますね!」
いけないいけない、ついつい呑まれる所だった酔っ払いの妄想はどこまでも果てしない。
何はともあれ、無事に王都まで着く事が出来た。
冒険者や魔術士の活動は死と隣り合わせのものが多様にある。
命が軽いこの世界で死は身近なものであり、それを乗り越え無ければ明日は我が身と言う事も多い。
だからこそ、彼らは呑むのだ。
今この時に生を感じられる様に。
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