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一章
自重と魔杖と無詠唱
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生け捕りにすると言って一人で出て行ったは良いが、三人を体術のみで瞬殺してしまった……
「やり過ぎだろ!何も聞けやしねぇ。後はこの二人に聞くしかねぇが、こいつらどのくらいで起きるんだ?」
「に、二時間ですかね……」
「二時間……起きるまで待つのか?」
「ダメですかね?」
「ダメに決まってんだろ!」
おずおずと答えてみたのだが三人に盛大にハモって突っ込まれた。
師匠は相変わらず笑っている。
「こいつらはここに置いていくしか無いな。目覚めるのを待つにも二時間じゃ時間がかかるし、諦めて先に進むか。」
「そうだな。」
「なんかすいません……」
「少しは自重しろよな。もはや人間兵器だぞ。」
普段は師匠に突っ込む立場なのだが……
今日は調子が悪い。
「過ぎたことを言っても仕方ないな。ゲルド!タグだけ回収してくれ。リック俺達はコイツらを拘束しちまおう。」
「ああ、分かった。」
「なあレオ、魔法使うのに杖って必要無いのか?」
魔術士の杖を回収して来たリックが聞いてくる。
「杖ですか?」
「ああ、俺達暗部に所属してる魔術士も必ず持っている。レオ達が使っている様な長いヤツとは違い短いやつだが。」
会話の方向がずれて来たので、これ幸いと乗っかることにした。
「それはワンドとかタクトと呼ばれる魔法杖の一種ですね。タクトという呼び名が一般的ですかね。効果としては僕らの杖と変わりないですが魔法と杖は必ずしもセットじゃないですよ。」
「そうなのか?」
「ええ、誤解している人も多いのですが、杖というのは魔道具の一つで魔法発現の単なる補助に過ぎません。リックも索敵魔法使う時には杖使いませんよね?」
魔法使いが持つ杖の基本的な使用用途は魔法の指向性と発現させる魔法自体の威力やスピードの強化、魔法の発現までのスピードを速める為の補助アイテムだ。
杖があると、その指し示す方向で簡単に発現方向が固定し、その魔法が強化される。
特に射出系の魔法は速度と飛距離が伸びるので、使わない理由が無い事から必須アイテムとされ、特に教えられることも無い、これが魔法は杖とセットと混同される所以だ。
魔術学校では長さ三十センチほどの小降りのタクトが入学時に与えられ、卒業時には卒業証書と魔術士としての身分証代わりに学校の紋章入りタクトが与えられる。
また、小型で取り回しも持ち運びも便利なタクトは軍でも良く利用される。
また、タクト以外にも魔法杖はその目的や付与効果、趣味によっても様々な形状があり、僕らは180センチ程の最大級の杖を使用していて、これはスタッフと呼ばれ、半分ほどの長さの短いものをロッドと呼ぶが、総称して杖、魔術刻印が施してあるので魔杖と呼ぶ。
ロッドやスタッフは、はめ込んだ宝玉による強化や付与効果を施すことが出来、杖本体の素材も大きく関係する。
更には大きさによって複雑な補助術式を刻む事もできるので、杖の性能としては総合的にタクトよりも強力だ。
その為、日々命のやり取りをしている冒険者やフリーの魔術士にはこちらを好む傾向が強い。
まぁ、学生や軍人よりもお金があるので装備に費やす費用が桁違いという理由もあるが、魔術士は社会的地位が高い職業の一つということもあり、一目で魔術士と分かる事もそれなりにメリットが多いのだ。
「なるほどな。そんな杖を使わずに魔法を行使するレオ達が如何に規格外かということも良くわかったが、そもそも無詠唱で魔法使うよな?俺も索敵魔法を使う時には詠唱する。当たり前過ぎて気にもしなかったが、そもそも詠唱ってなんなんだ?」
「うーん、なんて言ったら良いんでしょうかね。僕にとっては魔法は無詠唱が当たり前だったもので。」
「魔法はそもそも詠唱など無いぞ。」
師匠が見兼ねて説明を引き継ぐ。
「詠唱が無い?」
「ああ、無詠唱という言葉は詠唱が主流になった為に定義する必要があって出来た言葉だ。つまり意図的に作られたものということだな。」
「本来詠唱が無いのなら、俺も無詠唱で魔法が使えると言うことですか?」
「やってみるか?割と簡単だぞ。」
「ま、マジですか!是非!」
「俺も!」
話を聞いていたダズルとゲルドも殺到する。
まぁ、無詠唱なんてものは憧れの対象だ。
それが簡単に習得出来るとなれば、こういう反応にもなるか。
「レオ、少し時間貰っても良いか?」
「そうですね、ここで敵と遭遇した以上すぐ先に残りの奴らがいることは確定ですから、急ぐ必要はないかと思います。」
敵との間隔を推測して慎重に答える。
この階下は主の階層、捉えたと言っても良い距離、ならば慌てる必要はない。
「なら、始めるか。リック索敵魔法を発言した時の感覚は説明できるか?」
「感覚ですか?えっと、視界が広がる様な感じですかね。」
「それが分かっているなら、魔力の流れは分かるか?」
「分かります。詠唱し始めると身体の中心辺りに暖かい感じが集まり、詠唱が終わるとそれに乗って視界が広がり消える感じです。」
「無詠唱の基本は発現イメージに魔力を乗せることだ。まずは自身の魔力を中心に集めてみろ。身体中の暖かい流れを腹の中心に集めるイメージだ。」
「やってみます。」
しばらく色々試行錯誤しているが、感覚が掴めない様でしきりに首をひねっている。
「モヤモヤしたものがあるのが分かるのですが、何となくですね。」
「感覚に注力するには目を閉じてやってみろ。」
「はい!」
ダズルとゲルドも同じように身体の魔力を感じる練習をしている。
彼らも普段身体強化の魔法は使っているが、身体強化を発動させる為の詠唱は長く時間がかかる為、その時間を確保しなければならない。
これが任意に発動出来るとなれば、強力な武器になるとあって真剣だ。
「あっ、感じた!これか!」
「リック早いな。」
まだ難儀しているゲルドが羨ましそうにしている。
「普段から魔法を使っている方が感じやすいんですよ。」
何とか追いつこうと唸っている。
僕がゲルドとダズルを見て、師匠がリックを中心に全体を教えると役割が分担されて来た。
落第生を見る教師の気分だ。
「魔力の集まった感覚を一度解いてみろ。どうだ?」
「消えました!というか元に戻ったという感じですかね。」
「うむ、それを何回か繰り返し魔力のコントロールを掴んでみろ。ダズルとゲルドはどうだ?」
「俺は何とか。」
「ダズルもか、俺は何となくそこにあるのは分かる程度です。」
「レオ!」
あれをやれと言うのか……
「やり過ぎだろ!何も聞けやしねぇ。後はこの二人に聞くしかねぇが、こいつらどのくらいで起きるんだ?」
「に、二時間ですかね……」
「二時間……起きるまで待つのか?」
「ダメですかね?」
「ダメに決まってんだろ!」
おずおずと答えてみたのだが三人に盛大にハモって突っ込まれた。
師匠は相変わらず笑っている。
「こいつらはここに置いていくしか無いな。目覚めるのを待つにも二時間じゃ時間がかかるし、諦めて先に進むか。」
「そうだな。」
「なんかすいません……」
「少しは自重しろよな。もはや人間兵器だぞ。」
普段は師匠に突っ込む立場なのだが……
今日は調子が悪い。
「過ぎたことを言っても仕方ないな。ゲルド!タグだけ回収してくれ。リック俺達はコイツらを拘束しちまおう。」
「ああ、分かった。」
「なあレオ、魔法使うのに杖って必要無いのか?」
魔術士の杖を回収して来たリックが聞いてくる。
「杖ですか?」
「ああ、俺達暗部に所属してる魔術士も必ず持っている。レオ達が使っている様な長いヤツとは違い短いやつだが。」
会話の方向がずれて来たので、これ幸いと乗っかることにした。
「それはワンドとかタクトと呼ばれる魔法杖の一種ですね。タクトという呼び名が一般的ですかね。効果としては僕らの杖と変わりないですが魔法と杖は必ずしもセットじゃないですよ。」
「そうなのか?」
「ええ、誤解している人も多いのですが、杖というのは魔道具の一つで魔法発現の単なる補助に過ぎません。リックも索敵魔法使う時には杖使いませんよね?」
魔法使いが持つ杖の基本的な使用用途は魔法の指向性と発現させる魔法自体の威力やスピードの強化、魔法の発現までのスピードを速める為の補助アイテムだ。
杖があると、その指し示す方向で簡単に発現方向が固定し、その魔法が強化される。
特に射出系の魔法は速度と飛距離が伸びるので、使わない理由が無い事から必須アイテムとされ、特に教えられることも無い、これが魔法は杖とセットと混同される所以だ。
魔術学校では長さ三十センチほどの小降りのタクトが入学時に与えられ、卒業時には卒業証書と魔術士としての身分証代わりに学校の紋章入りタクトが与えられる。
また、小型で取り回しも持ち運びも便利なタクトは軍でも良く利用される。
また、タクト以外にも魔法杖はその目的や付与効果、趣味によっても様々な形状があり、僕らは180センチ程の最大級の杖を使用していて、これはスタッフと呼ばれ、半分ほどの長さの短いものをロッドと呼ぶが、総称して杖、魔術刻印が施してあるので魔杖と呼ぶ。
ロッドやスタッフは、はめ込んだ宝玉による強化や付与効果を施すことが出来、杖本体の素材も大きく関係する。
更には大きさによって複雑な補助術式を刻む事もできるので、杖の性能としては総合的にタクトよりも強力だ。
その為、日々命のやり取りをしている冒険者やフリーの魔術士にはこちらを好む傾向が強い。
まぁ、学生や軍人よりもお金があるので装備に費やす費用が桁違いという理由もあるが、魔術士は社会的地位が高い職業の一つということもあり、一目で魔術士と分かる事もそれなりにメリットが多いのだ。
「なるほどな。そんな杖を使わずに魔法を行使するレオ達が如何に規格外かということも良くわかったが、そもそも無詠唱で魔法使うよな?俺も索敵魔法を使う時には詠唱する。当たり前過ぎて気にもしなかったが、そもそも詠唱ってなんなんだ?」
「うーん、なんて言ったら良いんでしょうかね。僕にとっては魔法は無詠唱が当たり前だったもので。」
「魔法はそもそも詠唱など無いぞ。」
師匠が見兼ねて説明を引き継ぐ。
「詠唱が無い?」
「ああ、無詠唱という言葉は詠唱が主流になった為に定義する必要があって出来た言葉だ。つまり意図的に作られたものということだな。」
「本来詠唱が無いのなら、俺も無詠唱で魔法が使えると言うことですか?」
「やってみるか?割と簡単だぞ。」
「ま、マジですか!是非!」
「俺も!」
話を聞いていたダズルとゲルドも殺到する。
まぁ、無詠唱なんてものは憧れの対象だ。
それが簡単に習得出来るとなれば、こういう反応にもなるか。
「レオ、少し時間貰っても良いか?」
「そうですね、ここで敵と遭遇した以上すぐ先に残りの奴らがいることは確定ですから、急ぐ必要はないかと思います。」
敵との間隔を推測して慎重に答える。
この階下は主の階層、捉えたと言っても良い距離、ならば慌てる必要はない。
「なら、始めるか。リック索敵魔法を発言した時の感覚は説明できるか?」
「感覚ですか?えっと、視界が広がる様な感じですかね。」
「それが分かっているなら、魔力の流れは分かるか?」
「分かります。詠唱し始めると身体の中心辺りに暖かい感じが集まり、詠唱が終わるとそれに乗って視界が広がり消える感じです。」
「無詠唱の基本は発現イメージに魔力を乗せることだ。まずは自身の魔力を中心に集めてみろ。身体中の暖かい流れを腹の中心に集めるイメージだ。」
「やってみます。」
しばらく色々試行錯誤しているが、感覚が掴めない様でしきりに首をひねっている。
「モヤモヤしたものがあるのが分かるのですが、何となくですね。」
「感覚に注力するには目を閉じてやってみろ。」
「はい!」
ダズルとゲルドも同じように身体の魔力を感じる練習をしている。
彼らも普段身体強化の魔法は使っているが、身体強化を発動させる為の詠唱は長く時間がかかる為、その時間を確保しなければならない。
これが任意に発動出来るとなれば、強力な武器になるとあって真剣だ。
「あっ、感じた!これか!」
「リック早いな。」
まだ難儀しているゲルドが羨ましそうにしている。
「普段から魔法を使っている方が感じやすいんですよ。」
何とか追いつこうと唸っている。
僕がゲルドとダズルを見て、師匠がリックを中心に全体を教えると役割が分担されて来た。
落第生を見る教師の気分だ。
「魔力の集まった感覚を一度解いてみろ。どうだ?」
「消えました!というか元に戻ったという感じですかね。」
「うむ、それを何回か繰り返し魔力のコントロールを掴んでみろ。ダズルとゲルドはどうだ?」
「俺は何とか。」
「ダズルもか、俺は何となくそこにあるのは分かる程度です。」
「レオ!」
あれをやれと言うのか……
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