6 / 9
6
しおりを挟む
■
「見てみろよ。青山がまた告られてるぞ」
放課後、片桐の面白がる声にわたしは肩を竦めた。襟足はちくちく首を刺激しなくなったが、胸は変わらず痛くなる。
片桐に告白されてから大きく変わった事はなく、相変わらず馬鹿をして騒ぎ、他愛もない話で笑い、友人関係を維持できている。ただ、それがわたしの胸をこんなにも締め付けるのは想定外だった。
「青山、一体誰となら付き合うのかね? 全員振ってるって話だぜ?」
「さぁ? 勉強とかで忙しいんじゃない? 片桐こそ、最近は全部お断りしてるって聞いたよ?」
ひとつだけ変わった事がある。どうやら片桐はお試しで誰かと付き合うのを止めたらしい。
「あー、それはバイトに忙しいんじゃない?」
質問を質問で返された。
「まっ、ミユにはその辺は関係ないでしょ」
見なくともわたしが不満な顔をしているのが分かるのだろう、片桐が言葉を付け加えた。これは他意はない発言で、わたしを傷付けるつもりなどない。それなのに一本、線を引かれたと感じてしまった。
「マンゴーフェア、今月末で終わっちゃうね」
「あ、そうだった、そうだった! マンゴープリン、食おうぜ」
延期になっていた件を持ち出せば、いちにもなく食い付いてくれる。片桐に距離を感じるとこんな風に試したくなってしまう。
「今日はバイト入ってないよ?」
「いいじゃん。何か予定あるのか?」
「無いけど。片桐は無いの?」
「あぁ、今、予定が出来た。ミユとマンゴープリン食う予定が! な?」
片桐は告白場面の覗き見を中断し、こちらに振り向くとウィンクした。
「もう調子いいんだからーーえ?」
帰り支度を整え、さっそくファミレスへ向かおうとした所、窓の外から視線を感じた。
「!」
なんと青山君がこちらを見ている。
「? ミユどうした?」
動きが固まったわたしを不思議がり、片桐も校庭を確認した。
「青山の奴、こっち見てるな」
わたしの見間違いではないようだ。しかも青山君はおいで、おいでと手招きをしてきた。
「どうするの? 青山、ミユを呼んでるぞ」
「どうするって……わたしは青山君に用なんてないよ」
「そっか、そうだよな。よし!」
すると、片桐は窓を全開にして身を乗り出した。
「バーーカ! 普通、用がある奴が出向くだろうが! ミユと話したいならお前が来いよ! バーーカ!」
最初と最後のバカという単語に物凄い声量が充てがわれて、もしかしたら青山君はその部分しか聞こえないかも。
校庭では部活活動中の生徒や帰宅する生徒も居て、片桐の大声は注目を浴びる。そんな彼等に対し片桐はふふんと鼻を鳴らし、ピースサイン。
「もう馬鹿はどっち! 何してるの! 恥ずかしいからやめて!」
だらしなく着たシャツを引っ張り片桐を教室へ引き戻す。
「だって青山と話した方がいいだろ? ミユ、ずっと悩んだままじゃん?」
「そ、それは」
片桐がーーと言い掛け慌てて飲み込む。胸の痛みはすっかり彼のせいになっていたんだ。
「んじゃ、後はお若い二人に任せて。俺は帰るわ」
バッグを担ぎ、片桐は出て行こうとする。
「帰るって? マンゴープリンどうするのよ!」
引き止めようと伸ばした手は空を切り、片桐が遠い。というより避けられた。
「あいつがミユと別れてから誰とも付き合わないのって、ミユが好きなんじゃねぇ? もう一回ちゃんと話した方がいいぞ。意地張り合ってても、しょうがないだろうが」
首に手をやり、アドバイスしてくる。
「ーーなんで片桐がそういう事を言う訳?」
わたしを好きなんじゃないの? もう好きじゃなくなったの? 余計なお節介に身勝手な主張をしそうになり、彼を睨むに留まる。
「おぉ! 怖い、怖い! 退散しましょう」
睨まれた片桐はわざと肘を擦る仕草をし、踵を返す。
「片桐!」
後を追おうとしたが、片桐と入れ違いで青山君が入ってきた。二人は無言ですれ違い、視線も合わさない。
「見てみろよ。青山がまた告られてるぞ」
放課後、片桐の面白がる声にわたしは肩を竦めた。襟足はちくちく首を刺激しなくなったが、胸は変わらず痛くなる。
片桐に告白されてから大きく変わった事はなく、相変わらず馬鹿をして騒ぎ、他愛もない話で笑い、友人関係を維持できている。ただ、それがわたしの胸をこんなにも締め付けるのは想定外だった。
「青山、一体誰となら付き合うのかね? 全員振ってるって話だぜ?」
「さぁ? 勉強とかで忙しいんじゃない? 片桐こそ、最近は全部お断りしてるって聞いたよ?」
ひとつだけ変わった事がある。どうやら片桐はお試しで誰かと付き合うのを止めたらしい。
「あー、それはバイトに忙しいんじゃない?」
質問を質問で返された。
「まっ、ミユにはその辺は関係ないでしょ」
見なくともわたしが不満な顔をしているのが分かるのだろう、片桐が言葉を付け加えた。これは他意はない発言で、わたしを傷付けるつもりなどない。それなのに一本、線を引かれたと感じてしまった。
「マンゴーフェア、今月末で終わっちゃうね」
「あ、そうだった、そうだった! マンゴープリン、食おうぜ」
延期になっていた件を持ち出せば、いちにもなく食い付いてくれる。片桐に距離を感じるとこんな風に試したくなってしまう。
「今日はバイト入ってないよ?」
「いいじゃん。何か予定あるのか?」
「無いけど。片桐は無いの?」
「あぁ、今、予定が出来た。ミユとマンゴープリン食う予定が! な?」
片桐は告白場面の覗き見を中断し、こちらに振り向くとウィンクした。
「もう調子いいんだからーーえ?」
帰り支度を整え、さっそくファミレスへ向かおうとした所、窓の外から視線を感じた。
「!」
なんと青山君がこちらを見ている。
「? ミユどうした?」
動きが固まったわたしを不思議がり、片桐も校庭を確認した。
「青山の奴、こっち見てるな」
わたしの見間違いではないようだ。しかも青山君はおいで、おいでと手招きをしてきた。
「どうするの? 青山、ミユを呼んでるぞ」
「どうするって……わたしは青山君に用なんてないよ」
「そっか、そうだよな。よし!」
すると、片桐は窓を全開にして身を乗り出した。
「バーーカ! 普通、用がある奴が出向くだろうが! ミユと話したいならお前が来いよ! バーーカ!」
最初と最後のバカという単語に物凄い声量が充てがわれて、もしかしたら青山君はその部分しか聞こえないかも。
校庭では部活活動中の生徒や帰宅する生徒も居て、片桐の大声は注目を浴びる。そんな彼等に対し片桐はふふんと鼻を鳴らし、ピースサイン。
「もう馬鹿はどっち! 何してるの! 恥ずかしいからやめて!」
だらしなく着たシャツを引っ張り片桐を教室へ引き戻す。
「だって青山と話した方がいいだろ? ミユ、ずっと悩んだままじゃん?」
「そ、それは」
片桐がーーと言い掛け慌てて飲み込む。胸の痛みはすっかり彼のせいになっていたんだ。
「んじゃ、後はお若い二人に任せて。俺は帰るわ」
バッグを担ぎ、片桐は出て行こうとする。
「帰るって? マンゴープリンどうするのよ!」
引き止めようと伸ばした手は空を切り、片桐が遠い。というより避けられた。
「あいつがミユと別れてから誰とも付き合わないのって、ミユが好きなんじゃねぇ? もう一回ちゃんと話した方がいいぞ。意地張り合ってても、しょうがないだろうが」
首に手をやり、アドバイスしてくる。
「ーーなんで片桐がそういう事を言う訳?」
わたしを好きなんじゃないの? もう好きじゃなくなったの? 余計なお節介に身勝手な主張をしそうになり、彼を睨むに留まる。
「おぉ! 怖い、怖い! 退散しましょう」
睨まれた片桐はわざと肘を擦る仕草をし、踵を返す。
「片桐!」
後を追おうとしたが、片桐と入れ違いで青山君が入ってきた。二人は無言ですれ違い、視線も合わさない。
0
あなたにおすすめの小説
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
ダメンズな彼から離れようとしたら、なんか執着されたお話
下菊みこと
恋愛
ソフトヤンデレに捕まるお話。
あるいはダメンズが努力の末スパダリになるお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済:全8話⭐︎
ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて)
村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう!
問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。
半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!?
周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。
守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる