聖女の蜜闇ー優しい仮面を剥がされて

題材

５

　優子のこの顔は注意を聞かず失敗した際に表れ、反省と後悔が入り混じる姿を徳増は久し振りに見た。

　そしてーー騒ぎの扉が閉まる。

「ここからは夫婦の問題です。大丈夫、奥様が秀人様と２ヶ月間離れるのを躊躇されなかったのに腹を立てているだけですから。まったく、秀人様は素直じゃない」

　徳増が２人を追わないよう、釘をさす。

「優子様にその旨、全く伝わっていませんし、素直でないそちらのご主人様は優子様がわたしの言葉に従ったと見誤ってらっしゃる」

　肩を竦める徳増。

「あのような態度をとる内は優子様が心を開くことはないでしょう」

「言葉だけが伝える方法じゃない、などと野暮なことを言わせないでください。お互い、暁月の後継者を授かれたら安心できますよ？
ところで子供はお好きですか？」

「生憎、大嫌いです」

「はは、でしょうね。しかし奥様の、となるとまた違うかもしれませんよ」

　心を開かなくとも身体を開けばよい、と言うと徳増の肩を叩き出ていった。酒井の足取りは大口案件で忙しくなる予感、秀人の子を授かる期待で軽い。

「……後継者？　冗談じゃない、笑わせるな」

　徳増は低い声で発し、叩かれた肩を払った。