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嫉妬キス

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 涙が込み上げ鼻が通らなくなるのにも関わらず、血の甘い香りだけは濃く漂う。

「……いいから、舐めろ」

 涼くんがわたしの背中の下へ手を入れて起き上がらせ、腕を唇へ付ける。

「高橋のこととか、また話す。な?」

 これ以上は誘惑に耐えられず、ちろりと舌を這わす。

「っ、はぁ」

 ジュッと大胆に啜ったら呻き声がしたが、目を開けたら叱られそうなのでこのまま。肘まで垂れた血も舐め取っていく。

 甘い、甘い、美味しい、美味しい。涼くんの血は甘くて美味しい。涼くんの血を飲むと多くが考えられなくなってしまう。

「はぁっ」

 浅く腰掛けている涼くんはベッドから落ちてしまいそう。吸うのは止めず噛んでいない腕を腰へ誘導。涼くんが崩れがちに首筋へ顔を埋めてきた。

「……なぁ、痛ぇんだけど」

 はぁはぁ、温かい吐息で髪が揺れる。

「涼くん、んっ、美味しいよ、とっても美味しいの」

「はは、聞こえてねぇかっ。ちくしょう、四鬼千秋とキスなんかしやがって」

 がぶっと大きくひとくち頬張る。涼くんが痛みで硬直するのが伝わり、薄く目を開いてみた。
 涼くんは血が滲むくらい噛み締めている。

「? 桜子?」

「キス?」

「したんだろ?」

 いったん腕を離し、口を拭う。それから怖がらせないよう涼くんへ顔を近付けた。
 わたしは涼くんの血は1滴たりとも無駄にしない。その血も舐めないと勿体ないよ。
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