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告白

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「涼くん! ねぇ、待って、止まって!」

 無言の涼くんに手を引かれるままホテルを出て、近くの海へやってきた。
 人気のない砂浜にわたしの戸惑いが溶ける。

「涼くんってば!」

 沈黙に流されまいと踏ん張ったところ、足を取られてしまう。視界が悪く転ぶのを覚悟したがーー抱き止められた。

「俺は怒ってるんだ」

 低い声で言われるも、その手付きは優しい。わたしを宝物みたく扱ってくれる。

「ごめんなさい」

 謝り、耳を澄ませ波の音と涼くんの鼓動を聞く。

「高橋の件があってから色々有り過ぎて、何が何だか分からなかった! 鬼だとか、みんながお前を忘れてたりさ、とにかく色々ありすぎた。一体、どうなってるんだ?」

「えっと、どこから説明すればいいのか、わたしにもーー」

 事実の擦り合せをしようにも取っ掛かりが見付からない。まごまごしているうち、涼くんは早々に見切りをつけた。

「やっぱ、いいや。この際、説明なんか要らない。結局、俺が確かめたいのはひとつだからな」

 わたしの両肩を持ち、真剣に覗き込む。

「説明が要らないって、こんな状態なのに? 混乱してるよね? ちゃんと最初から話すからーー」

「……きか?」

「え?」

「俺が好きか? 今はそれだけ確かめたい。それが確かなら他はなんとでもして受け止めるる。桜子、俺が好きか?」

 自分の身に起きた出来事を偽りなく、順序を立てて語ろうとしてたのに、涼くんは諸々を飛び越えてくる。

「俺はお前が好きだ。前みたいに不貞腐れて言い逃げはしない。桜子の気持ちを教えて欲しい」

 涼くんの顔は真剣そのもの。暗くてもしっかり伝わる。

「わたしね、本物の浅見桜子じゃないんだよ? いいの? 偽物なんだよ?」

「バカ、偽物であるはずない。俺は目の前に居る泣き虫で意地っ張りで全然可愛くない桜子が好きなんだ。誰よりも俺の夢を応援してくれる桜子が好きだ。お前は? 俺が好きか?」

「ーーす、好き。わたしも、ずっと好きだったの。涼くんが好き」

 脳裏に四鬼さんが寂しそうな顔が過った。でも、涼くんと居たい。鬼と人の恋路が険しいものであっても涼くんとなら歩みたい。一緒に居たい。離れたくない。

「好きだよって病室でも言ったんだ」 

 繰り返すと泣きたくなる。

「あぁ、知ってる。聞こえてたし、キスされたのも分かってる」

「! 起きてたの?」

「意識はあったな。てか、お前とは何度もキスしてる。お前が忘れているだけだぞ」

「えぇ!」

 病室のキスと先程のキス以外、全く覚えがないものの、なんとなくだが感触を知っていた気がしないでもない。

「でも四鬼さんとした時もーー」

 初めてのキスとは感じられなかった。

「は? 四鬼千秋の名前がなんで出てくるんだ?」

「え、あっ、それは、その……」

「四鬼千秋とキスしたのか? 血を飲んだのか?」

「血は飲んでないけど……」

「キスはしたんだな」

 頷くと袖口で口元を拭われる。
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