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一章 家族
アルフレッドの品種改良大作戦!
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コモーノが王女と聖女にうつつを抜かしている最中、アルフレッドはステータスを除きながら腕組みをしていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆アルフレッド
人間 男 10歳
才能 :王の采配<アナザーキングダム>
活動資金:5,200,000
記憶の鍵:10
昇格の種:0
<スキル>
『持ち込む』『取り出す』『指示出し』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<従者>
☆アルLV8
『高速開墾』『作物促進の手』『トンネル工事』『下水工事』
☆レッドLV6
『高速伐採』『高速建築』『街路工事』『高速採掘』
☆ルフレLV4
『商人』『目利き』『高速調薬』『高速裁縫』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<事業>
★農業Ⅴ
★水路Ⅴ
★林業Ⅲ
★建築Ⅴ
★貿易Ⅴ
★街道Ⅲ
★調薬Ⅱ
★製布Ⅰ
★鉱夫Ⅲ
★鍛治Ⅱ
★調薬Ⅰ
★畜産Ⅰ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<契約>
★霊亀ユグドラシル
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本来なら記憶の鍵を使って有益な情報を入手するのだが、前世知識のあるコモーノが雑談感覚で話してしまうために使い道が全くないのである。
従者を増やすことも出来るが、今は自分の名前を分けた三人で事足りている。資金は溜まる一方だ。
正直民の住まぬ楽園の管理などアルフレッドとサリィの二人で事足りるのだが、力仕事と専門分野外の仕事となると専門の職人が必要だった。
貿易の発展で今はなんでも入手し放題のアルフレッド。
しかしなまじコモーノの菓子を食ったばかりにそれだけで満足できなくなってしまったのだ。
テーブルに置かれたプリン味の果実は、味こそプリンだが、食感は桃だ。
柔らかく熟していたとしても、プリンの滑らかさとは程遠い。
味を似せたところで模倣の域を出ないのは如何ともし難いところである。
「コモーノ様はいつお戻りになられるんでしょうか……はぁ」
おかげでメイドのサリィが置物と化している。
アルフレッドが欲する様に、サリィもまた菓子の味だけじゃなく視覚情報、口溶けの良さ、喉越しに魅了されてしまっていた。
中での余韻は格別だ。
今日は特に新製品を王国の茶会に献上すると浮き足立っている。アルフレッドとサリィは帰ってきたら同じものを食べさせてくれると言う約束で見送っていたのだった。
「サリィ、流石に兄さんに依存しすぎだよ。プリンの実だってあるじゃない」
「そうなんですけど、味はプリンなんですけどぉ!」
「言いたい事はわかる。でも今はこれで我慢しよう。別に今日中には帰ってくるんだし。僕達の方でもやることはあるよ」
「そうでした。まさかたった一日いなくなられるだけでここまでやる気を挫かれるとは……このサリィ、一生の不覚にございます」
「そう気にしすぎないで。逆に言えば僕達の食材があってようやく兄さんがお菓子を作れるんだ。やれる事はたくさんあるよ。貿易を頑張ってまだ見ぬ食材を提供するとかさ。それで何か作ってもらったら、世界で初めて口にするのは僕達だけなんだよ?」
「それはそれでなんとも背徳感がありますが」
「王様には申し訳ないと思うけど、それが素材提供者の特権みたいなものだからね。道の整備も済んで、輸送車の往来もしやすくしたし、今までお屋敷でしか食べられなかった生物も口に運ぶことができてる」
「左様でございますね」
「湖にいた霊亀とだって契約して外敵から身を守ってくれている。霊亀を無力じゃしない限り、僕達は見つからないんだ。何を恐れる必要がある」
「だからと言ってもやはり今まで仕えていた国である以上恐れはあります」
「そうか、サリィには残してきた家族もいるものね」
「大恩あるおぼっちゃまのお力添えができると知って見送られましたので、私にはもう帰る家はここだけとなります。私の家族まで心配していただきありがたく思いますが、どうか御身を大切にしてください。いつ、どこでお姿が晒されるか分からないのが世の常にございますから」
「わかってるよ。サリィの覚悟を低く見積もったことを詫びよう。ではそうだね、ここにある植物の品種改良でもしようじゃないか」
「品種改良ですか? その様なことができるのでしょうか?」
「貿易で仕入れた資金で素材以外にもさまざまなものを取り揃えておいた。そして職能の中で入手した薬品を用いればそれは可能だ。もちろん、成功する可能性は限りなく低い。どう?」
「今よりも良くなるのでしたら、やるだけやってみましょう!」
「そう来なくっちゃ!」
両手を上に上げ、アルフレッドはサリィとハイタッチした。
廃嫡された事で肩から重責を下ろし、自由になれたアルフレッドは年々年相応の子供の態度をとる様になっている。
その一方で子供っぽかったコモーノが大人びてきた。
以前までの兄弟を知ってるメイドならば、まるで中身が入れ替わったのではないかと思うが、子供にそんな重責を負わせるのが貴族という家柄だ。
責任さえなければアルフレッドだって子どもらしく振る舞えるのだ。
今まではコモーノがその権利を謳歌していた。
その為兄よりも優れてる点を見せる為に必死に背伸びしてきたのがアルフレッドである。
本来はこの様に少年らしい笑みを見せる少年なのだと、離れの屋敷に飛ばされ、一緒に暮らす事でようやく見えてくるサリィだった。
「そのお薬が、品種改良の鍵となるのですか?」
「そうだね。アイテム名は食感変える君」
「なんともふざけたネーミングですね」
「僕もそう思う。でも、それは今まで散々みてきたでしょ?」
「野菜の様に生る下拵え済みのお肉とか、いまだに思考が追いつきません」
「そう言うものなんだよ。あとは僕達が受け入れるだけだ」
「確かにそうなんでしょうけど」
サリィにとってそれをを認めてしまったら、今まで自分たちが必死に守ってきた農家の技術は一体なんなのかと眉を顰めたくなる思い出ある。
「できた、試験一号、とろとろプリン君だ」
「皮が随分と心許ないですね。味の方は大丈夫なんでしょうか?」
「その検証を今からするんだ。ただちょっと、このまま食すのは向かないからね。器に入れてみよう」
「ますます本家本元のプリンの様でございますね。器をご用意してまいります。しばしお待ちを」
「うん、待ってる」
数分もせぬうちにサリィが戻ってくる。
「お待たせいたしましたおぼっちゃま」
器の柄、サイズで手間取っていた様だ。
迷った挙句に全部持ってきたと言わんばかりにトレーには複数の器が乗せられていた。
そこの深い皿から平皿に至るまで複数。
実が柔らかいのもあって、今回は深皿をチョイスした。
実が柔らかなので器の上で作業する。
軽く皮を剥くと、ドロォと一気に中身が器の中へダイブする。まるで大移動してるかの様だ。
「香りは今まで通り甘ったるいね。見た目はちょっとぐちゃぐちゃだけど」
「問題は味でございましょう?」
差し出されるスプーン。
そして毒味薬のサリィの意を決した一口。
目を見開き、いや何かの間違えだと二回目の検証に入る。
ついには完食し切ってもう一つの実に手を伸ばすところで制止する。
「味の感想は?」
「あ、私ったらついつい我を忘れてしまいました。滑らかさは問題ございません。喉越しは少々緩いことに目を瞑れば全然問題ないです。なんならこのまま吸いたいくらいに気に入りました、はい!」
本当にやりかねないくらいに饒舌だ。
アルフレッドも言われるがままに口をつける。
前世の記憶と照らし合わせると、それはジュレに近い。
水溶性のある、ゼリー。
常温で溶けてしまうので日持ちはまずしないが、桃の様な食感は消えた。そこにあるのはゼリーの食感のプリンだ。
食べれないわけではないが、求めていた味とは大きく異なる。
これはさらなる品種改良が必要だと意を決するが、メイドの方はこれで十分とばかりに気に入っていた。
試しに貿易に出したが、案の定輸出に向かない痛みやすさで、それでも欲しい人は欲しがる程度には人気を博した。
それでわかる、求める味がどれほど茨の道の上にあるものなのか。
「早く帰ってきて、兄さま」
思わずそんな弱音が出てしまうほど、アルフレッドの品種改良計画は前途多難だった。
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◆アルフレッド
人間 男 10歳
才能 :王の采配<アナザーキングダム>
活動資金:5,200,000
記憶の鍵:10
昇格の種:0
<スキル>
『持ち込む』『取り出す』『指示出し』
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<従者>
☆アルLV8
『高速開墾』『作物促進の手』『トンネル工事』『下水工事』
☆レッドLV6
『高速伐採』『高速建築』『街路工事』『高速採掘』
☆ルフレLV4
『商人』『目利き』『高速調薬』『高速裁縫』
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<事業>
★農業Ⅴ
★水路Ⅴ
★林業Ⅲ
★建築Ⅴ
★貿易Ⅴ
★街道Ⅲ
★調薬Ⅱ
★製布Ⅰ
★鉱夫Ⅲ
★鍛治Ⅱ
★調薬Ⅰ
★畜産Ⅰ
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<契約>
★霊亀ユグドラシル
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本来なら記憶の鍵を使って有益な情報を入手するのだが、前世知識のあるコモーノが雑談感覚で話してしまうために使い道が全くないのである。
従者を増やすことも出来るが、今は自分の名前を分けた三人で事足りている。資金は溜まる一方だ。
正直民の住まぬ楽園の管理などアルフレッドとサリィの二人で事足りるのだが、力仕事と専門分野外の仕事となると専門の職人が必要だった。
貿易の発展で今はなんでも入手し放題のアルフレッド。
しかしなまじコモーノの菓子を食ったばかりにそれだけで満足できなくなってしまったのだ。
テーブルに置かれたプリン味の果実は、味こそプリンだが、食感は桃だ。
柔らかく熟していたとしても、プリンの滑らかさとは程遠い。
味を似せたところで模倣の域を出ないのは如何ともし難いところである。
「コモーノ様はいつお戻りになられるんでしょうか……はぁ」
おかげでメイドのサリィが置物と化している。
アルフレッドが欲する様に、サリィもまた菓子の味だけじゃなく視覚情報、口溶けの良さ、喉越しに魅了されてしまっていた。
中での余韻は格別だ。
今日は特に新製品を王国の茶会に献上すると浮き足立っている。アルフレッドとサリィは帰ってきたら同じものを食べさせてくれると言う約束で見送っていたのだった。
「サリィ、流石に兄さんに依存しすぎだよ。プリンの実だってあるじゃない」
「そうなんですけど、味はプリンなんですけどぉ!」
「言いたい事はわかる。でも今はこれで我慢しよう。別に今日中には帰ってくるんだし。僕達の方でもやることはあるよ」
「そうでした。まさかたった一日いなくなられるだけでここまでやる気を挫かれるとは……このサリィ、一生の不覚にございます」
「そう気にしすぎないで。逆に言えば僕達の食材があってようやく兄さんがお菓子を作れるんだ。やれる事はたくさんあるよ。貿易を頑張ってまだ見ぬ食材を提供するとかさ。それで何か作ってもらったら、世界で初めて口にするのは僕達だけなんだよ?」
「それはそれでなんとも背徳感がありますが」
「王様には申し訳ないと思うけど、それが素材提供者の特権みたいなものだからね。道の整備も済んで、輸送車の往来もしやすくしたし、今までお屋敷でしか食べられなかった生物も口に運ぶことができてる」
「左様でございますね」
「湖にいた霊亀とだって契約して外敵から身を守ってくれている。霊亀を無力じゃしない限り、僕達は見つからないんだ。何を恐れる必要がある」
「だからと言ってもやはり今まで仕えていた国である以上恐れはあります」
「そうか、サリィには残してきた家族もいるものね」
「大恩あるおぼっちゃまのお力添えができると知って見送られましたので、私にはもう帰る家はここだけとなります。私の家族まで心配していただきありがたく思いますが、どうか御身を大切にしてください。いつ、どこでお姿が晒されるか分からないのが世の常にございますから」
「わかってるよ。サリィの覚悟を低く見積もったことを詫びよう。ではそうだね、ここにある植物の品種改良でもしようじゃないか」
「品種改良ですか? その様なことができるのでしょうか?」
「貿易で仕入れた資金で素材以外にもさまざまなものを取り揃えておいた。そして職能の中で入手した薬品を用いればそれは可能だ。もちろん、成功する可能性は限りなく低い。どう?」
「今よりも良くなるのでしたら、やるだけやってみましょう!」
「そう来なくっちゃ!」
両手を上に上げ、アルフレッドはサリィとハイタッチした。
廃嫡された事で肩から重責を下ろし、自由になれたアルフレッドは年々年相応の子供の態度をとる様になっている。
その一方で子供っぽかったコモーノが大人びてきた。
以前までの兄弟を知ってるメイドならば、まるで中身が入れ替わったのではないかと思うが、子供にそんな重責を負わせるのが貴族という家柄だ。
責任さえなければアルフレッドだって子どもらしく振る舞えるのだ。
今まではコモーノがその権利を謳歌していた。
その為兄よりも優れてる点を見せる為に必死に背伸びしてきたのがアルフレッドである。
本来はこの様に少年らしい笑みを見せる少年なのだと、離れの屋敷に飛ばされ、一緒に暮らす事でようやく見えてくるサリィだった。
「そのお薬が、品種改良の鍵となるのですか?」
「そうだね。アイテム名は食感変える君」
「なんともふざけたネーミングですね」
「僕もそう思う。でも、それは今まで散々みてきたでしょ?」
「野菜の様に生る下拵え済みのお肉とか、いまだに思考が追いつきません」
「そう言うものなんだよ。あとは僕達が受け入れるだけだ」
「確かにそうなんでしょうけど」
サリィにとってそれをを認めてしまったら、今まで自分たちが必死に守ってきた農家の技術は一体なんなのかと眉を顰めたくなる思い出ある。
「できた、試験一号、とろとろプリン君だ」
「皮が随分と心許ないですね。味の方は大丈夫なんでしょうか?」
「その検証を今からするんだ。ただちょっと、このまま食すのは向かないからね。器に入れてみよう」
「ますます本家本元のプリンの様でございますね。器をご用意してまいります。しばしお待ちを」
「うん、待ってる」
数分もせぬうちにサリィが戻ってくる。
「お待たせいたしましたおぼっちゃま」
器の柄、サイズで手間取っていた様だ。
迷った挙句に全部持ってきたと言わんばかりにトレーには複数の器が乗せられていた。
そこの深い皿から平皿に至るまで複数。
実が柔らかいのもあって、今回は深皿をチョイスした。
実が柔らかなので器の上で作業する。
軽く皮を剥くと、ドロォと一気に中身が器の中へダイブする。まるで大移動してるかの様だ。
「香りは今まで通り甘ったるいね。見た目はちょっとぐちゃぐちゃだけど」
「問題は味でございましょう?」
差し出されるスプーン。
そして毒味薬のサリィの意を決した一口。
目を見開き、いや何かの間違えだと二回目の検証に入る。
ついには完食し切ってもう一つの実に手を伸ばすところで制止する。
「味の感想は?」
「あ、私ったらついつい我を忘れてしまいました。滑らかさは問題ございません。喉越しは少々緩いことに目を瞑れば全然問題ないです。なんならこのまま吸いたいくらいに気に入りました、はい!」
本当にやりかねないくらいに饒舌だ。
アルフレッドも言われるがままに口をつける。
前世の記憶と照らし合わせると、それはジュレに近い。
水溶性のある、ゼリー。
常温で溶けてしまうので日持ちはまずしないが、桃の様な食感は消えた。そこにあるのはゼリーの食感のプリンだ。
食べれないわけではないが、求めていた味とは大きく異なる。
これはさらなる品種改良が必要だと意を決するが、メイドの方はこれで十分とばかりに気に入っていた。
試しに貿易に出したが、案の定輸出に向かない痛みやすさで、それでも欲しい人は欲しがる程度には人気を博した。
それでわかる、求める味がどれほど茨の道の上にあるものなのか。
「早く帰ってきて、兄さま」
思わずそんな弱音が出てしまうほど、アルフレッドの品種改良計画は前途多難だった。
応援ありがとうございます!
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