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本編

自己紹介と今後

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「あの、これからどうしましょう?」
「あーね。どうしよっか?」

 計画もなく出てきてしまった。不安なのはこの子達のほうが大きいだろう。でもだからってあの場所にいたらどんな無理難題を押し付けられるかわからない。
 そもそもあの勇者達は自分たちさえ良ければ他人を犠牲にするのも厭わないタイプだ。連れてきて正解だったと自分でも思う。

「その前に自己紹介しませんか?」
「だねー」

 途方に暮れた私達は、ここに至るまでの軽い近況報告を兼ねて自己紹介をした。
 肩口で切り揃えた少女は御堂キサラ。
 親が美容師で、専門学校に通いながら家の手伝いをしていたそうだ。
 もう一人のオドオドした少女は獅童凛。
 こっちの子は気持ちぽっちゃり系で、その体型からよくいじめられてるそうだ。同級生のキサラちゃんはそれを見過ごせず、一度助けてから一緒に無視されてるそうだ。
 メンタル的に当時は相当凹むけど、社会に出るとそれ以上の理不尽が待ってるのよ。
 そもそも高校時代の友達、それも同級生なんて社会に出て疎遠になるもんだし、ハブられたからって何? ぐらいのもんよ。
 
「私は但馬茉莉。一応会社員よ」
「OLですか」
「そんな華々しいもんじゃないわよ。女はお茶汲みだけしてればいいって時代は終わったわ。男に混ざってバンバン世に出てるのよ!」
「わー、かっこいいです」
「もっと褒めていいのよ」

 本当のところは下っ端も良いところだけど、それを証明する相手はここにはいないからフカシてもオッケー。
 と、そんなエリート茉莉さんのお腹からエリートらしからぬ轟音が鳴り響く。

 ぐぅきゅるるる。
 そう言えば、起きてから食事してなかったことを思い出す。

「お腹すいたねー」
「すきましたねー」
「あの、飴、あり……ましゅ」

 凛ちゃんがオズオズと飴の袋を差し出した。
 飴ちゃん、しゅき。
 糖分が灰色の脳みそに広がっていくわー。
 ほわー。

「ありがとう、凛ちゃん。いいこいいこ」
「あう……うぅ」
「あはは、凛。よかったね、茉莉さんが優しい人で」
「優しいのかなー?」

 自覚はない。優しくあれ、と身構えてはいるけど忙しすぎるとそんな余裕は一瞬で潰えるよねー。

「少なくとも、あの時喚ばれた中では」
「あー……」

 あのメンツと比べられたらちょっとねー。
 この中でマシなの自分だけじゃないって思ったくらいだもん。
 あれが勇者とか聞いた時はこの世界終わったって思った。
 あれに従うとかないわー。
 前の仕事の主任がマシに思えるくらいよ?

「人ってね、優しさを忘れるとどこまでも傲慢に振る舞うの」
「実感こもってますね」
「あうぅ……うぐぅ」

 自分で思っている以上に自分は壊れかけていたらしい。
 私の笑顔を直視して凛ちゃんが泣くほどだ。
 あー、癒しが欲しい。
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