ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

文字の大きさ
8 / 173

8話 スライムの活用法

しおりを挟む
「ヨッちゃん、スライム倒したらコア多めにくれ。個人的に使う」

「お、何か美味いものが食えるのか?」

 モンスターの解体中、向こう側を任せたヨッちゃんへと声をかける。

 ヨッちゃんも元ダンジョンセンター職員。よく解体をやらされたこともあり、なんなら俺より手際が良い。

 俺がヨッちゃんより得意なのは、料理をする際の下処理くらいだ。

「うまいもの、と言うよりは嵩張る調味料の保存法に重いあたりがあってな。スライムのコアっていうのはスライムの赤ちゃんみたいなもんなんだよ。コアに醤油などの調味料を吸わせると醤油を媒介にしたスライムが生まれるわけだ」

「ああ、レストランでゼリーを作る時も一度元となるジュースをコアに吸わせると聞くな。しかし調味料を保存するなんて聞いたこともないぞ?」

「多分俺が一番初めてじゃないか? コアに吸わせてそいつを倒せばそのスライムのコアが手に入る。仮に醤油スライムと名付けたこいつは、水を近づけるたびにその醤油を復元して元に戻ろうとする」

「水を媒介にして戻るのに醤油のままなのか?」

「俺はスライム博士でもなんでもないから、原理まではわからないが、一回吸わせた醤油スライムは二回目も三回目も醤油スライムになった。だから麺つゆとか、ゆず味噌のタレなんかもコアに封じ込められたら面白いだろ? 何より嵩張らない」

 バッグをポンと叩いて笑うと、ヨッちゃんは数秒惚けた後すぐに俺の背中をバンバンと叩いた。

「そういう事なら俺も全力で頑張るぞ! ゴブリンが出てきた時はサポート頼むな?」

「餌の準備は任せろ!」

 ゴブリンは知恵の回るモンスターだ。小学生ほどの知能を持ち、高校生ほどの耐久力、武器も使い、群れて行動する。

 しかし大学生並みの食欲があり、飢餓に陥れば仲間の肉にも食らいつくとか。

 そこで俺は食べ慣れた同族の肉を甘辛く煮詰めて投げて注意を逸らす役を担っていた。

 今のところ100%の食いつきを見せ、なんだったら食料の奪い合いまでしてみせた。

 ヨッちゃんは魔法使いの素質を持っている。
 一日に使える魔法は属性ごとに5発まで。

 水、風、土の初球魔法を扱い、俺が時間を稼いでそこに魔法を打ち込む形で俺たちはモンスターを駆逐していた。

「やっぱポンちゃんを誘って良かったぜ」

 アースバレット。
 地面から鋭利な石槍が飛び出し、肉を奪い合ってるゴブリンを磔にした。

 正気に戻るわずかな時間を狙って追撃の旨みダレを投擲。ゴブリンに頭から被せる。
 殺到するゴブリンに、今度は氷の弾丸が頭部を射抜いた。

「3匹までならモノの数じゃないな」

「ここからは俺の仕事だな捌いて真核を取っちまおう。納品部位の耳の数は間に合ってたっけか?」

「余ったら煮て食っちまえばいい」

「なんだ、気に入ったのか?」

「別に。今の豊富な調味料で食ったらどう変わるのか気になっただけだ」

 ここ数日。さまざまな訪問客を捌き続けながら配信を続けている。

 まだそこまで登録者数は伸びていないが、開始して数日で300人は多い方だそうだ。

 今まで誰一人も見向きされてなかった俺の仕事を、300人が見てくれている。それを思うと緊張してしまいそうだ。

 ほろ酔い配信なので酔いが回りすぎないうちに上がる。

 魔法の回数には上限があるので、飛び込みで調理を引き受けてその人に護衛をしてもらうでもない限り、引き上げタイミングはヨッちゃん次第となっていた。

「お姉ちゃん、査定お願い」

「今日もお疲れ様です。ゴブリンくらいならすっかり対応されてますね。ゴブリン肉だというのにあの奪い合い。ちょっとだけ味が気になるほどです」

 受付のお姉さんはすっかりうちのファンらしい。専門のスレッド、掲示板を立ててくれたり、周囲に線でしてくれるのだ。

「それでお二人に折り入って相談があるのですが……」

 納品の手を止め、相談事。これがいつものやりとりだった。
 納品査定とは別に、もう一品。俺の料理を付け足すことで多めの査定を頂いていた。

「今日作っていたゼリー寄せ、あれの果汁バージョンを作っていただきたくて! もちろん素材はこちら持ちです! ええ!」

「コアはちょっと個人的に使うから、別途用意してくれたら嬉しいな」

「じゃあそれもつけます」

 いつもは納品課題から一つ選んでのお願いだが、今回は全部素材持ちなので稼ぎは多くない。

 けれど、素材持ちだからこそできることも多い。
 何せ初めて扱う素材も多いからだ。
 俺も学ぶことが多いので助かっていた。

「ではこの桃、葡萄、パイナップルを使わせてもらおう。シロップは余った果汁を煮出して……アストラルボディに刻み包丁。これでスライムの復元を阻みつつ、ゼリー化させます。吸わせながら切る……これが結構難しいので、再送は腕と相談ですね」

 ここの納品査定も配信に収めているので説明口調だ。
 そして膨らみ切る前に傷をつけて再度コア化。

 このコアはアストラルボディに傷をつけられてるのでもう復活しない。
 あとは煮出して作った果汁の煮汁のスライムスープを冷やし固めれば……

「完成、季節のフルーツのスライムコアゼリー寄せになります」

「では早速一口。ん~~~~! おいっしー、私スライムが適合食材なんですけど、これは当たりです! しかもこれ、私の適合調理みたいです!」

「お、よかったじゃねーか。じゃあ査定の方ももうちょっと色つけてくれよな?」

 ヨッちゃんの物言いに、受け付けのお嬢さんはタジタジだ。

 結局査定に色はつかなかったが、ダンジョンセンター側でレシピが公式化された。

 頼む人は個人的に一人しかいないが、レシピの公開と包丁さばきは最寄りのレストランを驚愕させたとかなんとか。

 ただスライムを切った貼ったしてるだけの料理がどうしてこんなありがたがられてるんだろうな? 
 それがわからない。
しおりを挟む
感想 485

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

処理中です...