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二章
SS 冒険者への道(ver.木下)
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俺の名前は木下太一。
グルストン王国の勇者にしてステータスNo.2の男だ。
しかし一位の三上との差が開きすぎて名ばかり二位の男とクラスメイトからの評価は良くない。
悔しいぜ! 俺は一年にして野球部のレギュラーを勝ち取った実績があるのによ。
そこで俺はこの力をダンジョン攻略以外でも活かすことにした。
「え、木下君も冒険者やるの? 無理無理やめときなって。あれはステータスがあればやれるってものじゃないよ? キツいし臭いし給料安いしの三重苦。王宮の暮らしのなにが不満なのさ」
「……も、……しい」
「なに?」
「俺も! 彼女、欲しい!」
ありったけの本音をぶつけると、相談相手の水野はあからさまに大きなため息をつく。クソデカタメイキという奴だ。何故そんな顔されなきゃならないのだ。
俺はNo.2の男だぞ?
「木下君さぁ、僕と姫乃さんをそういう目で見るのほんとやめて」
「いや、どう見たって付き合ってんじゃん。デートじゃん?」
「彼、冒険者を舐め腐ってるのが今の発言からよくわかるのよね」
「姫乃さんも煽らないで。まぁ一度やってみたらいいんじゃないの? 僕も彼女もランクは上がってる方だし、お金だってある。阿久津君に頼らなくたって冒険者ギルドにも顔は利く方だし。だからこうして相談しにきてるんだろうしさ」
「なるほどね、阿久津君に頼むとそれこそ非難の声が凄いものね?」
え、そうなの?
俺はあいつが捕まらないからお前に声かけただけなんだが。
兎にも角にも俺は冒険者になるぞ、三上ぃいいい!
すぐに追いついてやるからなぁああああ!
◇
冒険者ギルドに行くと、俺の能力に対する評価は今すぐにでもSSSランクを与えてもいいほどの腕前らしい。水野からの紹介もあり、俺に相応しいクエストをくれと言ったら、生憎とグルストン王国で取り扱ってるクエストはF~Bまでだと言われてしまう。
せっかく強力な力があるのに相応しいクエストがないのは寂しいぜ。
なので水野のクエストについていくことになった。
というか側から見て誰がどう見てもデートしてるこいつらの邪魔をしてやるって嫉妬心の方が主な理由である。
しかし、
「木下君、ざっこ。持久力よわよわ、冒険者やめたらぁ?」
水野からクエスト数分後にそんな煽りを受けてしまった。
そこまで言われる謂れはないのに、どうしてそんな辛辣な言葉が吐けるんだ?
同じ国に仕える勇者にさ、人の心とかないんか?
「水野君、言い過ぎよ。まあ確かに火力はすごいわ。ドラゴンの襲撃の際に来てくれてたら大いに助かったとは思う」
「だろ? 俺は一発の火力に心血注いでるからよ!」
「でも一発でへたったらダメでしょ。再チャージに時間がかかるとか論外。もっと小規模でいいから手数稼げる奴ないの? アニメキャラかよ」
さっきから水野の暴言がひどい。
姫乃ちゃんもフォローしてくれてるが、どこか呆れているようだった。
そこで実際に水野達がどんな仕事ぶりをしてるのか観察してみることに。
「え、お前らいつもこんなことしてんの?」
それは素直に“仕事”と呼べるものだった。
アニメや小説で描かれてる華々しい、楽して稼げるものではない、面倒な仕事を手間を惜しまずきっちり終える。
そんな仕事ぶりを見て俺は心底感心した。
「そうだよ。これで分かったでしょ? 僕と姫乃さんはお互いを必要とするビジネスパートナーなんだって。木下君も早くそういうの見つけなよ。手に職つけてた方が彼女出来る確率高いって聞くよ? 王宮のヒモで居続けられる期間は短いんだしさ」
「ヒモって、水野君いちいち例えがひどいわよ?」
「正直阿久津君達のようなチート持ちじゃなきゃ、僕たちの日常はこんなもんさ!」
え、あいつらってそんな凄いの?
聞いた話を鵜呑みにするならそれこそアニメや小説みたいな万能具合を発揮してるらしいが、実際に本人に聞くと全く違う感想が返ってくる。
「え、俺がチート? ないない。他人に頼らなきゃ生きてけない穀潰しだぜ? 正直木下の方が羨ましいって、俺も魔法使いてーもん。なぁ、今までどんな魔法覚えたか特別に教えてくんねーか?」
「教えてもいいけどタダじゃなぁ……」
「じゃあカツ丼奢るから。頼むよ」
「それなら、まぁ教えてやってもいいかな?」
逆に阿久津の方が俺の能力の高さを認めてくれてるまであるんだよ。
だから俺も気分よくなってさ、色々教えちまう。
でもどうしてか、阿久津以外の評価が真逆なんだ。
本当にわけわかんねぇ。その上トップの三上まで阿久津、阿久津って。
その阿久津は俺をすげーって言うし。
俺は一体誰の言葉を信じりゃいいんだ?
ムシャクシャとした気分はカツ丼を食ったら治った。
ある意味ではなんの気無しにこれを気軽に出す阿久津も大概おかしいんだよ。
確かにタダはダメだって言ったけど、カツ丼が目の前に出れば誰だって態度変わるだろ。
そう言うところか、俺に足りないのは。
俺はいつも自分が上だって態度で相手に接するからな。
対して阿久津は誰でも彼でも友達感覚だ。
話してて話しやすく、ついつい気が大きくなる。
そう言う聞き上手を身につけるのがコツなのかもな。
おーし、俺はやるぜぇ! 待ってろよ三上ぃ!
◇
そう思って一人で外に出たはいいものの、序盤に魔力を使いすぎてすぐに気絶した。これが俺の戦闘スタイルのネックとも言える唯一の弱点だ。
レベルアップすればMPも全回復するのに、ダンジョンと違ってここのモンスターは俺のレベルよりあまりに低く、経験値の糧にすらならず、いくら倒しても消耗ばかり。
俺は起き上がる体力すらなくなって地面に伏せていた。
偶然阿久津達に見つかったものの、一部の連中は使えない生ゴミ扱いしてきやがる。
「木下、なんでこんなところに寝てるんだ?」
「ここに住んでるのよ」
「もうほっとこうよ。他人の空似の可能性もあるかもよ?」
「冴島君、誰がどう見てもこれはうちのクラスメイトよ。面倒だからって適当言わないの」
「ちぇー」
「木下さん、起き上がるのも辛いですか?」
「取り敢えずポーションいっとく?」
阿久津からもらったポーションは驚くべき効果を発揮し、俺の肉体はあっという間に復帰した。
でも魔力の方は一切回復しなかったので大人しく寝ることにした
ついてないぜ。
「木下さー、自分の役割を履き違えちゃダメだぜ? 俺とお前じゃ役割が違うんだ。お前はレギュラーなんだからさ、自ら国の礎になる必要はないんだぜ?」
「言わんとする事は分かる。でもさ、阿久津。俺はこの力をレギュラー以外の何かに使っていきたいと思ってたんだ」
「そっか。その気持ちはありがたく貰っとくよ。でもさ、実際にそういう考え方もありだと思うぜ?」
「そうかな?」
「そうだよ。自分の弱点に気づけたって事は、成長できるって事だ。その先に最強の自分がいる。そう思ってるわけだろ?」
「まぁな」
「なら俺は木村を応援するぜ?」
背負われながら俺に話しかけてくる阿久津に、俺は意識を落としかけながら頷いた。
まずは一歩づつって奴だな。
そっか、何事もすぐに手に入るわけじゃねぇ。
少しづつ手に入れて、ようやくものにするんだ。
三上はそれにいち早く気がついたんだな。
それに比べて俺と来たら、今の今まで力に酔っていた。
その上であぐらを書けばステータスだけ高い男と言われても仕方ない。
だから、待っててくれよ阿久津。
俺はさ、やるぜ!
必ず万能な力を手に入れて見せるからな!
グルストン王国の勇者にしてステータスNo.2の男だ。
しかし一位の三上との差が開きすぎて名ばかり二位の男とクラスメイトからの評価は良くない。
悔しいぜ! 俺は一年にして野球部のレギュラーを勝ち取った実績があるのによ。
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「え、木下君も冒険者やるの? 無理無理やめときなって。あれはステータスがあればやれるってものじゃないよ? キツいし臭いし給料安いしの三重苦。王宮の暮らしのなにが不満なのさ」
「……も、……しい」
「なに?」
「俺も! 彼女、欲しい!」
ありったけの本音をぶつけると、相談相手の水野はあからさまに大きなため息をつく。クソデカタメイキという奴だ。何故そんな顔されなきゃならないのだ。
俺はNo.2の男だぞ?
「木下君さぁ、僕と姫乃さんをそういう目で見るのほんとやめて」
「いや、どう見たって付き合ってんじゃん。デートじゃん?」
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「姫乃さんも煽らないで。まぁ一度やってみたらいいんじゃないの? 僕も彼女もランクは上がってる方だし、お金だってある。阿久津君に頼らなくたって冒険者ギルドにも顔は利く方だし。だからこうして相談しにきてるんだろうしさ」
「なるほどね、阿久津君に頼むとそれこそ非難の声が凄いものね?」
え、そうなの?
俺はあいつが捕まらないからお前に声かけただけなんだが。
兎にも角にも俺は冒険者になるぞ、三上ぃいいい!
すぐに追いついてやるからなぁああああ!
◇
冒険者ギルドに行くと、俺の能力に対する評価は今すぐにでもSSSランクを与えてもいいほどの腕前らしい。水野からの紹介もあり、俺に相応しいクエストをくれと言ったら、生憎とグルストン王国で取り扱ってるクエストはF~Bまでだと言われてしまう。
せっかく強力な力があるのに相応しいクエストがないのは寂しいぜ。
なので水野のクエストについていくことになった。
というか側から見て誰がどう見てもデートしてるこいつらの邪魔をしてやるって嫉妬心の方が主な理由である。
しかし、
「木下君、ざっこ。持久力よわよわ、冒険者やめたらぁ?」
水野からクエスト数分後にそんな煽りを受けてしまった。
そこまで言われる謂れはないのに、どうしてそんな辛辣な言葉が吐けるんだ?
同じ国に仕える勇者にさ、人の心とかないんか?
「水野君、言い過ぎよ。まあ確かに火力はすごいわ。ドラゴンの襲撃の際に来てくれてたら大いに助かったとは思う」
「だろ? 俺は一発の火力に心血注いでるからよ!」
「でも一発でへたったらダメでしょ。再チャージに時間がかかるとか論外。もっと小規模でいいから手数稼げる奴ないの? アニメキャラかよ」
さっきから水野の暴言がひどい。
姫乃ちゃんもフォローしてくれてるが、どこか呆れているようだった。
そこで実際に水野達がどんな仕事ぶりをしてるのか観察してみることに。
「え、お前らいつもこんなことしてんの?」
それは素直に“仕事”と呼べるものだった。
アニメや小説で描かれてる華々しい、楽して稼げるものではない、面倒な仕事を手間を惜しまずきっちり終える。
そんな仕事ぶりを見て俺は心底感心した。
「そうだよ。これで分かったでしょ? 僕と姫乃さんはお互いを必要とするビジネスパートナーなんだって。木下君も早くそういうの見つけなよ。手に職つけてた方が彼女出来る確率高いって聞くよ? 王宮のヒモで居続けられる期間は短いんだしさ」
「ヒモって、水野君いちいち例えがひどいわよ?」
「正直阿久津君達のようなチート持ちじゃなきゃ、僕たちの日常はこんなもんさ!」
え、あいつらってそんな凄いの?
聞いた話を鵜呑みにするならそれこそアニメや小説みたいな万能具合を発揮してるらしいが、実際に本人に聞くと全く違う感想が返ってくる。
「え、俺がチート? ないない。他人に頼らなきゃ生きてけない穀潰しだぜ? 正直木下の方が羨ましいって、俺も魔法使いてーもん。なぁ、今までどんな魔法覚えたか特別に教えてくんねーか?」
「教えてもいいけどタダじゃなぁ……」
「じゃあカツ丼奢るから。頼むよ」
「それなら、まぁ教えてやってもいいかな?」
逆に阿久津の方が俺の能力の高さを認めてくれてるまであるんだよ。
だから俺も気分よくなってさ、色々教えちまう。
でもどうしてか、阿久津以外の評価が真逆なんだ。
本当にわけわかんねぇ。その上トップの三上まで阿久津、阿久津って。
その阿久津は俺をすげーって言うし。
俺は一体誰の言葉を信じりゃいいんだ?
ムシャクシャとした気分はカツ丼を食ったら治った。
ある意味ではなんの気無しにこれを気軽に出す阿久津も大概おかしいんだよ。
確かにタダはダメだって言ったけど、カツ丼が目の前に出れば誰だって態度変わるだろ。
そう言うところか、俺に足りないのは。
俺はいつも自分が上だって態度で相手に接するからな。
対して阿久津は誰でも彼でも友達感覚だ。
話してて話しやすく、ついつい気が大きくなる。
そう言う聞き上手を身につけるのがコツなのかもな。
おーし、俺はやるぜぇ! 待ってろよ三上ぃ!
◇
そう思って一人で外に出たはいいものの、序盤に魔力を使いすぎてすぐに気絶した。これが俺の戦闘スタイルのネックとも言える唯一の弱点だ。
レベルアップすればMPも全回復するのに、ダンジョンと違ってここのモンスターは俺のレベルよりあまりに低く、経験値の糧にすらならず、いくら倒しても消耗ばかり。
俺は起き上がる体力すらなくなって地面に伏せていた。
偶然阿久津達に見つかったものの、一部の連中は使えない生ゴミ扱いしてきやがる。
「木下、なんでこんなところに寝てるんだ?」
「ここに住んでるのよ」
「もうほっとこうよ。他人の空似の可能性もあるかもよ?」
「冴島君、誰がどう見てもこれはうちのクラスメイトよ。面倒だからって適当言わないの」
「ちぇー」
「木下さん、起き上がるのも辛いですか?」
「取り敢えずポーションいっとく?」
阿久津からもらったポーションは驚くべき効果を発揮し、俺の肉体はあっという間に復帰した。
でも魔力の方は一切回復しなかったので大人しく寝ることにした
ついてないぜ。
「木下さー、自分の役割を履き違えちゃダメだぜ? 俺とお前じゃ役割が違うんだ。お前はレギュラーなんだからさ、自ら国の礎になる必要はないんだぜ?」
「言わんとする事は分かる。でもさ、阿久津。俺はこの力をレギュラー以外の何かに使っていきたいと思ってたんだ」
「そっか。その気持ちはありがたく貰っとくよ。でもさ、実際にそういう考え方もありだと思うぜ?」
「そうかな?」
「そうだよ。自分の弱点に気づけたって事は、成長できるって事だ。その先に最強の自分がいる。そう思ってるわけだろ?」
「まぁな」
「なら俺は木村を応援するぜ?」
背負われながら俺に話しかけてくる阿久津に、俺は意識を落としかけながら頷いた。
まずは一歩づつって奴だな。
そっか、何事もすぐに手に入るわけじゃねぇ。
少しづつ手に入れて、ようやくものにするんだ。
三上はそれにいち早く気がついたんだな。
それに比べて俺と来たら、今の今まで力に酔っていた。
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