クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~

双葉 鳴

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五章

04_龍果の魅力を伝えよう③

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 かくして俺たちはアリエルの農園に新しい一戸建てを建築し、そこを調理スペース兼食堂とした。
 坂下さんが現地調達した龍果を気が済むまで加工できるスペースだ。

 その場所へはいつでも転送可能。
 その転送装置を俺の屋台に組み込んだのである。
 転送装置自体は夏目が悪用して俺たちが好き勝手できるようになっていた。

 普段はあいつのやらかしを足蹴にする俺たちではあるが、すごい奴なのだ。あまり褒めると天狗になるので自重させるために厳しく接しているのが本音である。


「それにしてもこの屋台、屋台に見えねーな」

「え、そう?」


 プラモデルの設計者である節黒が意外だったように聞き返した。
 これが普通の屋台と言いきれるこいつの感性が怖い。


「普通屋台って石造りの騎士が引くもんじゃねーんだわ」

「でも阿久津君もノリノリで加工してくれたじゃない?」

「それはそれ」

「ロマンは理解してくれるのに、理性が邪魔しちゃうかー」

「普通にお客さんを威圧しちゃって誰も近づいてこねー」

「多分これ、用いった素材によるものかもしれないわよ?」

「素材?」


 節黒と一緒に客が寄ってこない理由の洗い出しをしてる途中、委員長からそんなお言葉を頂いて節黒と一緒に首を捻る。


「屈強な石像の騎士、黄金の屋台なんて絶対に権力で物を言わせてきた人物が店主の店だからね。良い匂いさせてても近寄り難いよ」


 薫のツッコミで俺たちは気付かされた。
 屋台は木造だからこそ相手の警戒を緩ませるのだと。
 国のなくなったこの世界で、偉そうな態度をしようもんなら一触即発になるのは当たり前だった。


「分解、分解!」

「あー、僕の傑作がぁ!」
 

 悪は滅べど、村人の警戒心は強まったままである。
 さーてこっからどうやって巻き返すべきか。


「不安を取り除くのは得意ですが?」


 杜若さんが小さく挙手をするが、俺はこの問題を天性で解決するのは悪手だと思っている。
 現実で天性が使えない以上、こっちで経験を積むのが俺の望む道なのだ。


「すいません、うちのメカニックが皆さんを怖がらせてしまって。俺達は旅の食堂をしてまして、良ければ皆さんの扱う食材をいくつか用立てて頂ければなと思ってます」

「教会の宣教師ではないのか?」


 人垣から出てきたのは草臥れたなりをした壮年の男性だ。
 種族は獣人。ゴリラのような顔だが目元が優しげだ。
 あれ? 確かこの人……


「シュライフさんですか?」

「ふむ? 私の表の名前を知っているとは……ここではアレだ。離れで落ち合おう」


 猪面の代表者は村の人々に事情を話して誤解を解いてもらった。
 俺たちは村の端っこで落ち合うことになった。


「久しいな、グルストンの勇者諸君。勇者、という言葉も今は不要だがよく来てくれた」

「アリエルから聞きましたよ、シグルドさんは追放したと」

「俺がなんだって?」


 奥の方から見慣れた顔の虎獣人が現れた。
 そしてすぐに人間に戻る。


「よぉ、会ってそうそうヘイトスピーチとはやってくれるな」

「あれ? 追放されたんじゃ」

「置いてかれたのを追いつき返しただけだよ。片腕を失ったくらいで戦線離脱なんてするわけねーだろ。バカめ!」

「アタシは二度と顔を見たくなかったけどね?」


 呆れたような顔で成長したシリスが姿を現した。
 当時のヤンチャさはなりを潜め、今ではすっかり落ち着いていた。


「その服装も似合ってるな」

「お世辞でも嬉しいよ。一応ここの生活は気に入ってるんだ。村の連中もよくしてくれるしね」


 背中まで伸ばした銀の髪はしっかり手入れされていた。
 着物を纏い、強さに執着していた跳ねっ返りが変われば変わるもんだ。


「シリスがここまで変わってるのに、こいつと来たらまるで変わらん。お前達と一緒に行動してからすっかり楽をすることを覚えたらしい」


 シュライフさんがゴツンとシグルドさんの頭に拳骨を落とす。
 いや、その人俺達でも手に余るので要らないです。


「それで、こっちに戻ってくるなり早々に問題行動とは、流石だな」

「別に問題を起こしたいわけじゃないんですけどねぇ。それより先ほどのお役人というのは? 俺たちがくる前から妙にピリピリした空気を感じましたけど?」

「それを語るには少し時間を要する。シリス、客人にもてなしの茶を」

「あいよー」


 シュライフさんが俺たちに腰掛けるように促し、シリスが奥へ引っ込んだ。あのシリスがお茶汲みだと!?


「お前達が帰ってから、人々の暮らしはそれこそ極端に落ちぶれた。今までがお前の残したガチャに世話になりっぱなしだったのもある。人々の不満は最高潮に達していた」

「その不満をまとめる為にまとめ役の存在を作った?」


 薫の指摘にシュライフさんが頷いた。


「ああ、それが教会だ。奴らは人々を使役して楽をしたいだけだ。私達はそんな奴らの不正から人々を守るべく暗躍している」

「この村にはつい最近?」

「ああ、酷い圧政に苦しめられていた。他の村と話をまとめてきて、安く食材を提供する代わりに、この村で扱う素材を暮らしていけるギリギリまで搾り取る腹づもりだ」

「珍しい食材が使われてると?」


 食材と聞いて俺が食いつくが、シュライフさんは首を横に振った。


「いや、私には判断がつかん。ただな、見て見ぬ振りなど出来んよ。民の苦しそうな顔を見たか? 人種や種族の違いなど問題ではない。私のこの身なりでも受け入れてくれた人達を守るのになんの躊躇いがあろうか」


 だろうな。この人達は元々迫害されてきた戦争孤児をまとめ上げて兵士として育てた実績を持つ。
 そしてこの地で勇者の役目から放免された今、彼らの目的は地域に根付いての活動になっていた。


「それ、ほぼ俺のせいなんで上手く言えないけど申し訳ないっす」

「悪いのは君ではない。君に甘えすぎた我々も問題だ。特にこいつがな? 一番騒いだ。だから反省の意味を込めて置いてきたというのに」


 ゴッツン、ゴッツンと拳に力が込められた。
 その度に身長が縮むのではないかというほどの衝撃が起きた。


「茶ー持ってきた。一応ここの村の生産品だから味わって飲めよー?」


 シリスから受け取った茶をありがたくいただく。
 茶の文明という名の蘊蓄を委員長から聞きながら、面白い効能を聞いた。
 どうやらこのお茶、幻覚作用があるらしい。
 
 あ、これ……まず間違いなくこれが目的だ。
 熱湯で燻すことで気分が良くなる薬効が湯に溶け出すっぽい。


「まさかそんな効能が……迂闊だった!」

「どうして今まで気づかなかったの?」

「そこまで依存性が強くないからだな。どちらかといえば湯船に浸かるような気持ちよさを味わえる程度だからな。あいにくとこの土地ではこれ以上の作物が取れんのだ」

「それ、アリエルも言ってましたね」

「ああ、あの嬢ちゃんの。言っちゃなんだがあれは売れないだろう?」

「普通はそう思うんでしょうけど、作り置きがあるのでどうぞ」

「お、まともな食いものは久しぶりだな」


 嬉しそうにフォークで鳥軟骨と化した龍果の柚子胡椒和えを口にして、一言も発さずに二口めも行った。
 

「おい、ボス。おい、おい! 一人で全部食うんじゃねぇ!」


 普段は周囲に分け与えるこの人が珍しく食いついたな。


「一応まだストックはありますんで皆さんもどうぞ」


 シリスには串で焼きたての焼き鳥を、シグルドさんは材料が切れたのでアリエルの食堂に転移して坂下さんの下拵えした龍果をもらって適当に一品作った。


「ッカー、こいつは酒が進む味だな! な、坊主?」


「俺、こっちでは脅しに屈せず生きていくと決めたんでダメです。というか、俺の残したガチャがあるでしょ?」

「あれさ、教会だかなんかがまとめて持ってっちまってさ。これは我々が扱うのにふさわしいものだとよ」

「なんだそれは。じゃあ撤去しちゃって良いか」


 みんなが喜ぶと思って置いといたのに、権力者が独占してんじゃねーよ。
 配置は0になったので、再度登録しなおしとしよう。


「じゃ、ここに再配置しますが特別に必要なものってあります?」


 俺はシグルドさんを押し退けて、シュライフさんやシリス、村の必需品を設定するよう心掛けた。

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