クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~

双葉 鳴

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五章

07_龍果の魅力を伝えよう⑥

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「ぐえっへっへっへ」

「食い物あったら置いてけや」


 初手威圧。これはちょっと道に迷った人ではないなぁ。
 とは言え、今更こんな威圧程度にビビる俺たちじゃない。
 俺達をビビらせるんならドラゴン数百匹は連れてこないと。
 怖い、怖い魔素怖い。なんつって。
 

「食い物についてはこっちも知りたいんすよね。そこら辺に落ちてるやつでよければチョチョイと料理しますけど。俺たちも丁度腹減ったんでそこら辺に落ちてたの拾って食ってたんすよ」

「なんだ、お前らもこっち側か」


 破落戸は威圧を緩めると、相方に向き直って警戒をといた。
 脅してもビビらない相手からは奪わないルールでもあるのか、あっさりと身を引いた。


「そうなんすよ。今色々試してるんですけど、珍しい食材知らないっすか? これ、お近づきの印に」

「お、良いのか?」

「そこら辺のを焼いただけなんで」

「ハハ、まあありがたくいただかせてもらうが」


 おじさん達もこんな事はしたくなかったのだろう。
 食うのに困って暴力に走り、それがうまくいってしまったからこの生業に身を置いてるのだという。


「美味いな、肉を食ったのなんていつぶりだ?」


 肉、と言ってるのは坂下さんが下ごしらえした龍果である。
 化学変化を続けた結果、鳥軟骨と似通った味わいの身に革の周りが鶏皮のように変化したのだ。
  
 これは嬉しい誤算で、もうこれ単品で肉の代わりになると言っても良いほど。
 ただし寄生先が鶏肉だったので、これはあくまで模造肉。
 しかしアリエル曰く、品種改良していけば一般の龍果も鶏皮と鳥軟骨の食感を出せるかもしれないことがわかる。


「実はこれ肉じゃないんですよ」

「いや、これは肉だ! 嘘を吐こうったって騙されんぞ?」


 なんでか否定された。本当なんだけどなぁ。


「材料はこいつです」


 俺は鶏肉に寄生した龍果を見せつけた。


「本当にこのキモい植物が、肉のような味になるのか?」

「にわかには信じられん」

「嘘だと思うんなら料理過程を見てもらって結構です。この模造肉と合わせられる食材を探してるのが俺たちの目的なんで」


 龍果の薄皮を剥いて軽く下茹でする。
 茹で上がったら身がピンク色になるので実と果肉を分けておく。実にはスパイスを振りかけ、果肉は氷水で冷やす。
 急激に冷やすことで果肉の方が鶏皮のようなプルンとした食感になるのだ。
 これに軽く塩を振って提供する。


「食べてみてください」

「良いのか?」

「俺もこれが植物だって信じて欲しいので」

「……確かに、さっき食ったのはこれだ。本当に植物がこんな食感を出すのか? なあ、これ数はあるのか。可能なら仲間にも食わせてやりたい」

「おい、ボスに持ってくのか? 俺たちに飯が作れるやつなんて……」

「あ、なんか集落があるんなら行きますよ。どうせ俺たち暇なんで」

「助かる。勇者教会の奴が好き勝手やりだしてから俺たちは街にふさわしくないと追い出されて……街には家族を残してきた奴だっている。許せねぇよ!」


 ここでも勇者教会か。
 最初こそ不干渉で行くつもりだったけど、あんまりやりすぎてるようならちょっとお仕置きしてやる必要があるかもな。

 破落戸、もといノリスさんとゴナアさんは俺たちを雑木林の奥にある街から追い出された人たちのアジトへと案内してくれた。

 そこにいるのは30代を超えた男性ばかり。
 働き盛りの男がどうしてこんな場所に追い出されることになったのやら。
 そのことも含めて事情聴取を進めた。
 もちろん口を軽くするために食事をふり待ってやりながらである。
 ちょっと臭かったので簡易的に風呂を作ってやったら大層喜ばれた。
 身体を洗う石鹸は杜若さんからの提供だ。
 あとで材料を揃えてお返ししなきゃいけなくなった。
 水とかは川から引いた水路があったのでそれで湯を沸かして体をキレイにしてもらった。

 山賊は獣人と人族が半々で、獣人に倣って水浴びをしてたが、やがて匂いも気にしなくなって入浴もせずに居たらしい。
 こっちには女子がいるので不潔なやつはご遠慮願いたいぜ。


「食事どころか温かい湯に生活必需品まで世話になる」

「なぁに、袖擦り合うも他生の縁て奴ですよ。俺たちも他の人に恵んでもらって今があります。そしてこれは施しではなく交渉です。俺たちはあなた達の口が軽くなる為の手段を講じたに過ぎません」

「ハッ、そういう事なら分かりやすい。無償の施しほど気持ち悪いもんはねぇからな。で、何が聞きたい?」

「勇者教会の目的、後はここらへんで取れる食料の情報とかですね」

「そいつを聞いてどうする?」

「それは聞いたあとで決めます。俺は料理をするのが趣味なので、料理の素材はなんでも欲しいんです。将来的には街で店とかだしたいんすよ。それと勇者教会の噂は耳に聞こえてくるものの、商売の邪魔になるようなら対策を練る必要があるでしょう?」

「理解した。確かにあいつらは100年以上前に居たかどうかも怪しい勇者を崇拝して、それ以外の料理を全否定するきらいがある。俺たちは戦いを生業にしてた者だ。街じゃ戦う事より生産できるやつの方が格が上だとかで肩身の狭い思いをしてたよ。遂には揃って壁外追放だ。あいつらになんの権利があるってんだ!」


 山賊の棟梁であるオスマさんが憤り、地面に拳を落とした。
 皆を守るために手にした力は、最終的に自らの首を絞める結果となったのだ。


「でも武力を持つものを追放して街の防衛は平気なんですか? モンスターだって襲ってくるでしょう?」

「そこは勇者様のアーティファクトでいくらでも防衛が可能だとかなんとか。実際に使ってるところを見たことがないが、ドラゴンを封じ込めていたとかなんとか言ってたぜ?」


 ああ、夏目のアレか。
 でも本人がいないと起動しないんじゃないのか?
 ドラゴンを封じてたのは事実だが、今の時代にドラゴンがどれくらいの脅威度なのかもわからんし。

 そもそも現存するドラゴンなんてグーラかアクエリアぐらいしか知らないぞ? 幼体化した三龍も居たっちゃ居たが、100年かそこらで巨大化するかどうかも怪しい。
 グーラはこの世界にあんまり興味ないし、敵対視しない盟約を結んでるから襲ってこないはずなんだが……
 


「そもそもドラゴンなんて実在するんすか? 今まで見たこと無いんですけど」


 龍果は別名プラントドラゴンと呼ばれてるが「龍か?」と聞かれたら「いやぁ……」とだれもが首を傾げる。
 魔素変換【1】の雑魚だもんな、あいつ。
 今まで見向きもしなかったが、今や案なのでも希少な食べ物だからな。


「俺も見たことねぇよ。が、たまに上空にデカい影が落ちることがある。そいつが龍じゃ無いかって噂はあるな」


 無いんじゃねぇか。
 で、そんな眉唾の噂で街の住民を焚き付けたのが勇者教会ってか。ますます胡散臭くなってくるな。

 きな臭い話はそこそこに、山賊達の棲家を改造していく。
 崖下の穴蔵は俺の素材加工で石造りの居住区へと生まれ変わり、川から引いた水路も整地した。
 風呂を沸かす湯は火吹き番を設けて順番に入って貰えば良いだろう。どうせ獣人はお湯に入らないし、人間専用だ。

 ここで火を起こす習慣を身につけさせ、俺からは調理の知識を与える。
 委員長による『識別』無双だ。

 食べれる食材、燃料にできる食材をそれぞれ覚えさせた。
 火の扱いは焚き火まではしていたようだが、調理の知識がほぼない人にもできるように串に刺して炙る焼き代を加工する。
 串なんかは腰から下げてるナイフで削れば代用は可能だ。

 川には魚が泳いでるのでトラップを使った簡単な確保術とその調理法を教えた。
 腸は取った方が安全だが、生で食っても胃腸が丈夫な獣人達は基本生食なので、俺は人間向けの調理法を提供した。


「あとこの果実、集めて発酵させれば酒になりますよ」

「本当か!?」

「ええ、量を確保して貰えるなら俺たちの方で加工しますがどうします? 街に入れない現状、気分を高揚させる手段はあるに越したことないと思いますが」

「頼む! 酒は勇者教会が根こそぎ持ってっちまって俺たちは楽しみを奪われて牙をもがれてしまった」


 そりゃ武力を持った奴が酔っ払ったら手に負えないもんな。
 あれ? ひょっとして追放されたこの人たちって至極真っ当な理由で街から追放されたんじゃね

 今更になって一方だけの話を聞くのは危険だなと思った。
 シグルドさんの件がなかったら同情するところだったぜ。
 危ねぇ。


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