クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~

双葉 鳴

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五章

20_それぞれの進路③

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 旧グルストン領を抜けて、旧ドラグネス領へと赴く。
 なんでここがドラグネス領かわかるかって?
 殺風景でなんもないからだ。
 生えてる植物は龍果くらいで、それを見つけた時アリエルに連絡すると、部下のロギン率いる旧ドラグネスの勇者達が引き取りに来る。

 まだまだ世界中に生き残ってる龍果は多く、殆どが野生化。
 元々モンスターなので野生化もクソもないが、アリエルの農園は完全養殖らしいから、野良のは野生という認識だ。
 使役してるかしてないかの差だな。

「このなんの役にも絶たないと思われたクソモンスターが、未来で貴重なタンパク質になろうとは誰が思おうか」

「冴島君、言い過ぎよ」

「本当のことじゃない」

 薫のいつもの毒舌が冴え渡る。委員長がいつになく近い距離感で宥めた。もしかしてこの二人? だなんて邪推が捗る。

「実際、自分の力を暴力以外に使おうと思ったのは成長だと思うぞ?」

「そうですわね、元々は食べるのに困ってああなってしまった方々です」

 ナイス杜若さん! 阿吽の呼吸って奴だな。
 陰口になりかねない話題の軌道修正に成功したぞ。

「それに比べてムーンスレイの人達はどこまで行っても暴力だけどね?」

「今更変えられないんでしょうね? 育った環境の差って奴よ」

 が、薫は何か不満があるのか愚痴愚痴言い出した。
 こりゃもうダメだ。何かしら鬱憤が溜まってるんだろう。
 俺は杜若さんと見合わせ、なんとか宥める方向へとシフトする。向こうの顔がちょっと赤すぎる気がするが、今はそんなこと気にしてる場合じゃないぜ。

「薫、どうしたんだよ最近。なんか悩みあったら聞くぞ?」

「そんな悩みってほどのもんじゃないけどさ。僕自身があまり成長できてないって実感してるからこそ、全く成長できない人を探して満足感を得ているというか、そんな自分が嫌だというか……そんな感じ」

「だからって他人の揚げ足とってたって何も変わらないぜ?」

「分かってるよ。でも雄介や杜若さんみたいにこれをやりたい! っていうのが全然見つからないんだ」

「それは多分自分がなんでも出来るという自信があるからこその傲慢だと思うわよ?」

「錦さんまで……僕はみんなが思ってるほど万能じゃないよ?

 どうやら薫は自分だけやりたいことが見つかってないことで焦りを感じてるみたいだ。
 グルストン王国があった時、俺たちは四人揃ってレギュラーから外された。戦力外通告を受けたわけだ。
 だからみんな仲間だって絆を育んで来れたわけだが、元の世界に行って帰ってきた時に歪みができてしまった。

 それが将来何になりたいかの夢。それを叶えるための努力だ。
 俺たちは朧げながらもそれを捉え、薫は捉えきれずにいる。
 たったそれだけのことを悩んでしまっていたらしい。

「でも実際のところ、俺たちそんな大それた夢とか持ってないぞ。な、杜若さん?」

「そうですわね。やってみたい、だからやってみた。それだけなんですのよ冴島さん。別にわたくし達、これで商売まで上手くこなす自信はありませんの。あまたある未来を手繰り寄せて、自分に見合う商売を考えうる中で実践して取り捨て選択しているに過ぎませんわ」

「そうなの? 将来それで食べていくとかじゃないの?」

「あのなぁ、薫。料理が上手く作れるだけで店とかやれるわけないだろ? よーく考えてみろよ。俺はガチャがあるから魔素さえあればいくらでも材料を復元出来る。でも現実世界じゃそれができない」

「そりゃあね」

「正直、料理に取り組んでるのはこの世界で楽しく過ごすための可能性の一つでしかないんだぜ? まだまだ長い人生を送るんだ。今回やりたいことがないくらいなんだ。次回、やってみたいことにチャレンジする。たったそれだけのことだぜ?」

「そうなんだ。確かに雄介の天性の持ち味を活かすのに料理は良いのかもね」

「だからお前も朧げながらに浮かんだやってみたいことがあったら遠慮なく言っていいぞ? 俺たちも協力するから。な、みんな?」

 委員長と杜若さんへ振り返れば、二人とも強く頷いた。
 気持ちは同じ様だ。
 前回こっちに来た時に助け合った仲間を、これっぽっちのことで仲間はずれになんかしねーって。
 正直、商売のイロハは後から薫に教わるつもりで居るんだぜ?
 だから自信がないとか言ってほしくなかったよ。
 俺に比べたらお前はいざという時に頼れる男なんだぜ?

「分かった。その時が来たら言うよ」

「おう! で、この道はどこに続いてるんだ?」

 屋台を引っ張る俺がいうと、後についてきた三人のジトっとした視線が刺さった。

「私達、阿久津君についてきただけよ?」

「ええ、右に同じく」

「もう、雄介は僕たちがいないとまるでダメなんだから」

 薫が嬉しそうに言った。
 そうなんだ、俺はガチャが回せて、料理が作れるだけのダメ人間なんだ。だからそれがなくなれば一番やれることがなくなる男でもあるんだぜ?
 何故か全員から頼りにされてるけど、その期待は幻想だから。
 自分で言ってて悲しくなってくるが、これが現実なんよな。

「面目ねぇ。正直俺はこの程度でしかないんだわ。これからも全力で頼っていくから頼むぜ?」

「仕方ないわね。でも、阿久津君のそれは嫌味よ? 阿久津君を程度と呼んだら私達が霞むもの」

「ええ、そのイメージ次第でなんでも再現する能力は皆喉から手が出るほど欲するものですよ?」

「本当だよね、雄介の能力っていいとこ取りの権化みたいな奴だもん」

「なんかそうやって聞くとあれだよな。自分の能力を自分が一番わかってないってやつを俺は推したい」

 そういうとみんなの顔が一瞬真顔になり、吹き出す様に笑い合う。

「ふふ、確かにそうね。私の識別も、大した能力じゃないって思ってるのは私くらいのものよね」

「いや、一度通った道を覚えて、敵か味方か判別して、更に有用な食材も記憶して置けるとかチート以外の何者でもないんだが?」

「あれずるいよね? 商人だったら絶対手放せないよ。錦さん居るだけで億万長者になれるよ!」

「わたくしではきっとその膨大な知識を活かし切ることができませんわ。なので由乃の天性は由乃だからこそ活かせるものなのだと思います」

「そ、そうなのね?」

 自分の能力が他人からどう思われてるかを知り、ちょっと恥ずかしげに俯く委員。なんだか今日の彼女は随分可愛い。
 杜若さんの美容院にかかった女子はみんないい匂いするし、それか?

「それを言ったらみゆりの能力も十分チートよ?」

「あら、そうなのですか?」

 やはり、本人がその能力をあまり理解していないという典型の返だ。

「杜若さんのカウンセラーはムーンスレイとドラグネスの天敵なところがあるからね。真の実力を無かったことにするのは正直チート以外の何者でもないよ」

「そうそう、荒ぶる暴漢や俺たちに敵意を向けてくる相手の抑制、さらには悪感情を向けてくるモンスターの排除まで。杜若さんが居るといないじゃ冒険だって安心してできないくらいだったぜ?」

「それ以外できないので、頑張って散布した甲斐がありました」

「なんだかんだで薫の商人もチートだよな」

「そんなことないと思うけど?」

「いや、ぶっちゃけ俺達が冒険者ギルドで交渉したら追い払われておしまいだったよな?」

「そうね、あれは冴島君の交渉術が上手だったからこその賜物よ」

「それに戦闘でも役立って居ましたわ。相手の弱点を見破るスキルでしたか。あれで効率よくモンスターを倒して居ましたわね。わたくしはエンカウントさせない能力ですが、冴島さんのは効率よく倒すのに特化していると思いますわ」

「そんなことないと思うけど」

「ただなー、倒す相手が戦場ではモンスターで日常では商人、そして王様にすら弱点を見つけて交渉ふっかけるのがみてられなかったというか」

「それは忘れてよ。若気の至りって奴だよ」

 お前まだ若いだろ?
 何過去のことにしようとしてんだ。
 と、そんなところに遠方から厄介ごとが降って湧いた。


「ようやく見つけたぞ! グルストンの勇者よ!」

 知ってる顔だった。
 確かムーンスレイの将軍の、ノヴァさんだ。
 けどその後ろから更に追いかけてくる影からは剣呑な気配がした。

「ノヴァ様ーー!! 逃しませぬぞー!」

 獣の耳を持つ半獣人の少女が、俺たちを見定めて武器を構えた。徒手空拳を良しとした獣人が武器?
 時代が変われば、獲物も変わるか。
 しかしあってそうそうに臨戦態勢とは只事じゃねぇな。

「どうする?」

「話をして、それからだな。一人客になりそうな相手がいる」

「その背後にあきらかにこちらを敵視してる方もいらっしゃいますが?」

「あれくらいの敵視、浴びすぎてそよ風にしか感じねぇよ。可愛いもんじゃんか」

「阿久津君は最前線に居たものね。肝の座り方が私達と違うのよ、みゆり」

「別にそんなんじゃねぇけどさ。さ、開店準備と行こうぜ」



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