【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

文字の大きさ
7 / 497
1章 お爺ちゃんとVR

007.お爺ちゃんと続シークレットクエスト

 取り敢えずシャーロットさんとはその場で別れ、ジキンさんと二人でやれるところまでやろうと相談しあう。
 どうも彼は過去に女性問題で悩んできたようで女性の目があると心休まるときがないのだとか。


「すいませんでした。私が軽率でしたね」

「いやいや、協力者を募るというのは素晴らしい案です。ただし男二人の中に女性が一人というのは自分たちは良くても相手はそうは思ってくれない時がありますから」


 それで以前浮気と誤解されたと彼は苦々しく語った。


「さて、振り出しに戻りましたけどどうします?」

「無論、やるだけやりましょう。目的は未だブレずにあの中にありますから」

「ですね。つい目先のものに心奪われがちになりますが僕たちには時間がたっぷりあります。でしょう?」

「そうでしたそうでした。なまじ体が若返ると勘違いしていけませんね」


 そう、なまじ疲れを知らない肉体を得ると心を優先しがちになる。
 それが前へ前へと心を突き動かしていく。
 想像以上に自分は気を急いていた事にジキンさんによって気づかされ、一息つく事にした。


「その前に儲けた分で小腹を満たしませんか? あの屋台からの匂いでさっきからお腹が鳴りっぱなしでして」

「立ち食いですか? 良いですね。お供しますよ」


 その屋台は細かく切った部位を竹串に刺し、焼くだけというシンプルイズベストな串焼きをうりにしていた。
 なんの動物の肉を扱っているか判別がつかないものの、肉の焼ける匂いというのはなんとも腹を空かせる物だと再確認する。
 ここ最近肉料理とは縁がなかったので余計に美味しく感じた。

 合計で5本の串焼きを平らげ、柑橘系のジュースで胃の奥に流し込む。ゲームの中なのに腹に貯まるような気分にさせられるのだから不思議だ。これは流行る訳だ。だが同時に危険だとも思う。
 皆が皆、寝食を忘れてゲームに夢中になり過ぎてしまう危険性があちこちにある。そこで利用規約を思い出す。


「ああ、だからログイン制限があるのか」

「なんの話です?」

「このゲームが魅力的すぎてログアウトしたがらない者がいるのではないかと懸念をしてました」

「成る程。息子や孫などはここに住むと言ってましたしあながち間違いではないのかもしれませんよ?」

「怖いことを言わないでくださいよ。ただ、うちの孫娘もログイン時間を減らされるのはこの世の終わりだなんて顔をしますし概ねその通りなのでしょう」


 話に決着をつけ、ギルドへと再び向かう。
 相変わらずゴミ拾いクエストは人気がないのか受け放題になっている。なにせ報酬が安いし、時間もかかる。
 前へ前へ目先を向ける若者達に人気がないのは頷けた。
 彼女には悪いことをしてしまったな。
 ふとシャーロットさんのことを思い出して心の中で謝罪する。

 境遇が似ていたとはいえ、彼女は若年層だ。
 年寄り扱いされている私たちと違って目的だってまた違う。
 それを強要に近い形で協力させたのだ。悪いのは私だな。
 再確認してようやく自分が悪者だと気づくあたり、まだまだ妻に苦労をかける事になるだろうなと自覚する。

 再度クエストを受け、シークレットクエストを発生させる。
 そしてこのゲームの奥深さをこれでもかと再認識する。
 発生したクエストはこの前のものとは別のものだった。


〈シークレットクエスト:壁外清掃を開始しますか?〉
[YES / NO]


「まさかのランダム要素でしたね」

「ええ、逃した魚がより大きく感じます」

「では再度クエストをやり直しますか?」

「いいえ。これは良い機会です。謹んでお受けしましょう。それに私達は暇ですしね」

「そうでしたそうでした。自分たちのペースで、ですね?」

「はい」


 時間があるからこそ、このクエストの先は気になる。
 それに前回と同様に報酬が美味しければ問題など無いのだ。

 時間にして30分。
 パーフェクトに近い形でクエストを達成する。
 一度失敗をしたというのもあって、二人とも気合の入れ方が違った。挽回しようとする気持ちが今回の成功につながったのだと思います。
 すると、普通ならばここでクエスト達成が出るはずなのですが……


〈シークレットクエスト:壁外清掃を高得点で達成しました〉

〈続シークレットクエスト:壁内チェックⅠを開始しますか?〉


 そこにあるのは似て非なるもの。
 横でジキンさんもこう来ましたかと呟いている。


「もちろん、受けますよね?」

「当然です。なんせ他にやることもないですし。ⅠがあるならきっとⅡもあるでしょうし」

「ですね。思わぬところにたどり着きそうで今からドキドキしてますよ」

「私もです」


 二人して特に臆することもなくシークレットクエストに参加する。
 これが失敗したらと考えるのはバカバカしいのでやめにしました。
 私はこのゲームに風景写真を撮りたいがためだけにログインし、その過程を楽しむだけの暇を持て余した老人なのだから。

 だから失敗は失敗として楽しむ事にしました。
 成功だけがこのゲームの楽しさではないと思うんですよ。
 失敗して、気をつけて、考えを改めるのも同じ一歩です。

 どうも私は自分ではそうは思ってないだけで頭でっかちのようですし? 隣で何食わぬ顔で私の趣味に付き合ってくれる彼のためにも絶対に最高のショットを撮ってやるつもりです。
 それを撮るまでは終わらせませんよ、こんなに楽しい事は。

感想 1,316

あなたにおすすめの小説

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無実の罪で謹慎中ですが、静かな暮らしが快適なので戻る気はありません

けろ
恋愛
王太子妃候補だった伯爵令嬢エレシア・ヴァレンティスは、ある日突然、身に覚えのない疑いをかけられ、婚約破棄と無期限謹慎を言い渡される。 外出禁止。職務停止。干渉禁止。 誰がどう見ても理不尽な処分――のはずだった。 けれどエレシアは、その命令を前にして気づいてしまう。 誰にも呼ばれない。誰にも期待されない。誰にも干渉されない。 それは、前世で決して手に入らなかった“静かな時間”そのものだと。 こうして始まった、誰にも邪魔されない穏やかな謹慎生活。 一方その頃、彼女を切り捨てた王城では、思わぬ方向へ事態が転がり始めて――? これは、無実の罪で閉じ込められた令嬢が、皮肉にも理想の生活を手に入れてしまう物語。 叫ばず、争わず、ただ静かに距離を取ることで完成する、異色の婚約破棄ざまぁです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。