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1章 お爺ちゃんとVR
007.お爺ちゃんと続シークレットクエスト
取り敢えずシャーロットさんとはその場で別れ、ジキンさんと二人でやれるところまでやろうと相談しあう。
どうも彼は過去に女性問題で悩んできたようで女性の目があると心休まるときがないのだとか。
「すいませんでした。私が軽率でしたね」
「いやいや、協力者を募るというのは素晴らしい案です。ただし男二人の中に女性が一人というのは自分たちは良くても相手はそうは思ってくれない時がありますから」
それで以前浮気と誤解されたと彼は苦々しく語った。
「さて、振り出しに戻りましたけどどうします?」
「無論、やるだけやりましょう。目的は未だブレずにあの中にありますから」
「ですね。つい目先のものに心奪われがちになりますが僕たちには時間がたっぷりあります。でしょう?」
「そうでしたそうでした。なまじ体が若返ると勘違いしていけませんね」
そう、なまじ疲れを知らない肉体を得ると心を優先しがちになる。
それが前へ前へと心を突き動かしていく。
想像以上に自分は気を急いていた事にジキンさんによって気づかされ、一息つく事にした。
「その前に儲けた分で小腹を満たしませんか? あの屋台からの匂いでさっきからお腹が鳴りっぱなしでして」
「立ち食いですか? 良いですね。お供しますよ」
その屋台は細かく切った部位を竹串に刺し、焼くだけというシンプルイズベストな串焼きをうりにしていた。
なんの動物の肉を扱っているか判別がつかないものの、肉の焼ける匂いというのはなんとも腹を空かせる物だと再確認する。
ここ最近肉料理とは縁がなかったので余計に美味しく感じた。
合計で5本の串焼きを平らげ、柑橘系のジュースで胃の奥に流し込む。ゲームの中なのに腹に貯まるような気分にさせられるのだから不思議だ。これは流行る訳だ。だが同時に危険だとも思う。
皆が皆、寝食を忘れてゲームに夢中になり過ぎてしまう危険性があちこちにある。そこで利用規約を思い出す。
「ああ、だからログイン制限があるのか」
「なんの話です?」
「このゲームが魅力的すぎてログアウトしたがらない者がいるのではないかと懸念をしてました」
「成る程。息子や孫などはここに住むと言ってましたしあながち間違いではないのかもしれませんよ?」
「怖いことを言わないでくださいよ。ただ、うちの孫娘もログイン時間を減らされるのはこの世の終わりだなんて顔をしますし概ねその通りなのでしょう」
話に決着をつけ、ギルドへと再び向かう。
相変わらずゴミ拾いクエストは人気がないのか受け放題になっている。なにせ報酬が安いし、時間もかかる。
前へ前へ目先を向ける若者達に人気がないのは頷けた。
彼女には悪いことをしてしまったな。
ふとシャーロットさんのことを思い出して心の中で謝罪する。
境遇が似ていたとはいえ、彼女は若年層だ。
年寄り扱いされている私たちと違って目的だってまた違う。
それを強要に近い形で協力させたのだ。悪いのは私だな。
再確認してようやく自分が悪者だと気づくあたり、まだまだ妻に苦労をかける事になるだろうなと自覚する。
再度クエストを受け、シークレットクエストを発生させる。
そしてこのゲームの奥深さをこれでもかと再認識する。
発生したクエストはこの前のものとは別のものだった。
〈シークレットクエスト:壁外清掃を開始しますか?〉
[YES / NO]
「まさかのランダム要素でしたね」
「ええ、逃した魚がより大きく感じます」
「では再度クエストをやり直しますか?」
「いいえ。これは良い機会です。謹んでお受けしましょう。それに私達は暇ですしね」
「そうでしたそうでした。自分たちのペースで、ですね?」
「はい」
時間があるからこそ、このクエストの先は気になる。
それに前回と同様に報酬が美味しければ問題など無いのだ。
時間にして30分。
パーフェクトに近い形でクエストを達成する。
一度失敗をしたというのもあって、二人とも気合の入れ方が違った。挽回しようとする気持ちが今回の成功につながったのだと思います。
すると、普通ならばここでクエスト達成が出るはずなのですが……
〈シークレットクエスト:壁外清掃を高得点で達成しました〉
〈続シークレットクエスト:壁内チェックⅠを開始しますか?〉
そこにあるのは似て非なるもの。
横でジキンさんもこう来ましたかと呟いている。
「もちろん、受けますよね?」
「当然です。なんせ他にやることもないですし。ⅠがあるならきっとⅡもあるでしょうし」
「ですね。思わぬところにたどり着きそうで今からドキドキしてますよ」
「私もです」
二人して特に臆することもなくシークレットクエストに参加する。
これが失敗したらと考えるのはバカバカしいのでやめにしました。
私はこのゲームに風景写真を撮りたいがためだけにログインし、その過程を楽しむだけの暇を持て余した老人なのだから。
だから失敗は失敗として楽しむ事にしました。
成功だけがこのゲームの楽しさではないと思うんですよ。
失敗して、気をつけて、考えを改めるのも同じ一歩です。
どうも私は自分ではそうは思ってないだけで頭でっかちのようですし? 隣で何食わぬ顔で私の趣味に付き合ってくれる彼のためにも絶対に最高のショットを撮ってやるつもりです。
それを撮るまでは終わらせませんよ、こんなに楽しい事は。
どうも彼は過去に女性問題で悩んできたようで女性の目があると心休まるときがないのだとか。
「すいませんでした。私が軽率でしたね」
「いやいや、協力者を募るというのは素晴らしい案です。ただし男二人の中に女性が一人というのは自分たちは良くても相手はそうは思ってくれない時がありますから」
それで以前浮気と誤解されたと彼は苦々しく語った。
「さて、振り出しに戻りましたけどどうします?」
「無論、やるだけやりましょう。目的は未だブレずにあの中にありますから」
「ですね。つい目先のものに心奪われがちになりますが僕たちには時間がたっぷりあります。でしょう?」
「そうでしたそうでした。なまじ体が若返ると勘違いしていけませんね」
そう、なまじ疲れを知らない肉体を得ると心を優先しがちになる。
それが前へ前へと心を突き動かしていく。
想像以上に自分は気を急いていた事にジキンさんによって気づかされ、一息つく事にした。
「その前に儲けた分で小腹を満たしませんか? あの屋台からの匂いでさっきからお腹が鳴りっぱなしでして」
「立ち食いですか? 良いですね。お供しますよ」
その屋台は細かく切った部位を竹串に刺し、焼くだけというシンプルイズベストな串焼きをうりにしていた。
なんの動物の肉を扱っているか判別がつかないものの、肉の焼ける匂いというのはなんとも腹を空かせる物だと再確認する。
ここ最近肉料理とは縁がなかったので余計に美味しく感じた。
合計で5本の串焼きを平らげ、柑橘系のジュースで胃の奥に流し込む。ゲームの中なのに腹に貯まるような気分にさせられるのだから不思議だ。これは流行る訳だ。だが同時に危険だとも思う。
皆が皆、寝食を忘れてゲームに夢中になり過ぎてしまう危険性があちこちにある。そこで利用規約を思い出す。
「ああ、だからログイン制限があるのか」
「なんの話です?」
「このゲームが魅力的すぎてログアウトしたがらない者がいるのではないかと懸念をしてました」
「成る程。息子や孫などはここに住むと言ってましたしあながち間違いではないのかもしれませんよ?」
「怖いことを言わないでくださいよ。ただ、うちの孫娘もログイン時間を減らされるのはこの世の終わりだなんて顔をしますし概ねその通りなのでしょう」
話に決着をつけ、ギルドへと再び向かう。
相変わらずゴミ拾いクエストは人気がないのか受け放題になっている。なにせ報酬が安いし、時間もかかる。
前へ前へ目先を向ける若者達に人気がないのは頷けた。
彼女には悪いことをしてしまったな。
ふとシャーロットさんのことを思い出して心の中で謝罪する。
境遇が似ていたとはいえ、彼女は若年層だ。
年寄り扱いされている私たちと違って目的だってまた違う。
それを強要に近い形で協力させたのだ。悪いのは私だな。
再確認してようやく自分が悪者だと気づくあたり、まだまだ妻に苦労をかける事になるだろうなと自覚する。
再度クエストを受け、シークレットクエストを発生させる。
そしてこのゲームの奥深さをこれでもかと再認識する。
発生したクエストはこの前のものとは別のものだった。
〈シークレットクエスト:壁外清掃を開始しますか?〉
[YES / NO]
「まさかのランダム要素でしたね」
「ええ、逃した魚がより大きく感じます」
「では再度クエストをやり直しますか?」
「いいえ。これは良い機会です。謹んでお受けしましょう。それに私達は暇ですしね」
「そうでしたそうでした。自分たちのペースで、ですね?」
「はい」
時間があるからこそ、このクエストの先は気になる。
それに前回と同様に報酬が美味しければ問題など無いのだ。
時間にして30分。
パーフェクトに近い形でクエストを達成する。
一度失敗をしたというのもあって、二人とも気合の入れ方が違った。挽回しようとする気持ちが今回の成功につながったのだと思います。
すると、普通ならばここでクエスト達成が出るはずなのですが……
〈シークレットクエスト:壁外清掃を高得点で達成しました〉
〈続シークレットクエスト:壁内チェックⅠを開始しますか?〉
そこにあるのは似て非なるもの。
横でジキンさんもこう来ましたかと呟いている。
「もちろん、受けますよね?」
「当然です。なんせ他にやることもないですし。ⅠがあるならきっとⅡもあるでしょうし」
「ですね。思わぬところにたどり着きそうで今からドキドキしてますよ」
「私もです」
二人して特に臆することもなくシークレットクエストに参加する。
これが失敗したらと考えるのはバカバカしいのでやめにしました。
私はこのゲームに風景写真を撮りたいがためだけにログインし、その過程を楽しむだけの暇を持て余した老人なのだから。
だから失敗は失敗として楽しむ事にしました。
成功だけがこのゲームの楽しさではないと思うんですよ。
失敗して、気をつけて、考えを改めるのも同じ一歩です。
どうも私は自分ではそうは思ってないだけで頭でっかちのようですし? 隣で何食わぬ顔で私の趣味に付き合ってくれる彼のためにも絶対に最高のショットを撮ってやるつもりです。
それを撮るまでは終わらせませんよ、こんなに楽しい事は。
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