102 / 497
2章 お爺ちゃんとクラン
086.お爺ちゃんとチェインアタック②
しおりを挟むオクト君とパープルの協力もあって、ランクE迄にはすぐにかけ上がれた。
ちなみにこのポイントは一定数たまるとランクアップができますと出てくるが、途中でどれだけ貯まったのかを見ることは出来ないようだ。
運営としてもそればかりに終始してほしくないという考えなのだろう。
しかし次のEからDに上がるまでは10000を提示され、その量に頭が痛くなってくる。
ランクCに至るまでにあと二回以上この数字以上も上げていかなきゃいけないなんて。今から頭が痛いよ。
「お疲れ様です、お義父さん。すっかりバインドはモノにできたようですね」
「お陰様でね。しかし今から次を考えると頭が痛くなってしまうよ」
「それだけ大変ってことなんです。でもチェインアタックを知らない人はもっと大変ですよ?」
「確かにそうだね。その上で連撃回数を増やせていければ良いんだけど」
「そればかりはパーティメンバー次第です。もう少しやられていかれますか? 僕たちはまだ時間に余裕がありますし」
チラリとオクト君がパープルを見る。
見られた彼女はまだ時間は平気だよとうなずいた。
とてもありがたいけど、さすがに悪いよ。
私は二人の協力を断ることにした。
「いや、やめておこう。いい加減に疲れてきたのもあるし、あとは探偵さんと暇を見て進めていくよ」
ふと顔を上げると彼は待っていたよとばかりに片手を上げて振り返った。
いちいち様になるんだ、この人。
「そうですか、それは残念です。ではパープル、クランに戻って仕事の続きでもしようか」
「そうね。お父さん、いい息抜きになったわ。また呼んでくれたらいつでも駆けつけるから!」
なんだい、君達も息抜きをしてたんじゃないないか。
帰る娘達を見送り、親友へと振り返る。
「さて、探偵さん」
「そうだね。我々は我々のしたいことをするとしよう」
探偵帽を目深くかぶり、彼は目を光らせた。
それから私達が何かをしたとすればエネミーを目標としたサッカーである。
お前ボールな、と単的に言われたボール型エネミーがかわいそうに思えるかもしれないが、あいつらは放っておくと勝手に増えたり仲間を呼んでくるんだもの、自分の身は自分で守らないとね。
ただし今回はチェインアタックをあまり意図せずに完全に遊びでやっている。
オクト君から言わせれば無駄の極みかもしれないね。
でも彼もエネミーの立ち位置に気がついたようだ。
「探偵さん、やはりこのエネミーは……」
「うん、君も気がついたか少年。私も蹴り飛ばしたり踏んづけたりして気がついたよ。この子達、とあるスキルの成長を促してるようにしか思えない」
「やはりそうですか。実は私にも成長途中のスキルがめでたく解放されました」
「お、どんなのです?」
「はい。空をめぐる能力であるスカイウォークです。これが今オープンされました」
「能力は読んで字の如くですか?」
「はい。息を止めてる間中、スタミナ関係せずに空に足場を作り続けるものです。上位版の空歩ですよ、これは!」
私は今では息咳切って空へと駆け上がれ、上昇気流にも乗れるようになれました。
「だろうね。私はマーシャルアーツ派生のキックから空を駆ける『瞬歩』なるものを派生させた。これの本質は壁を蹴り上げながら敵のフィールドも自分のフィールドに持ち込むことかもしれない」
「面白いですね。しかし手を使わないと思ったらマーシャルアーツだったとは! 足癖の悪さはコミックを彷彿とさせますね
「違うよ」
「ではなんと?」
「手はいざという時に秘密道具を出すのに使うので、基本戦闘は足だよ、少年」
「なるほど。ではここらでチェインアタックの検証を進めていきますか?」
「そうだね。技の鍛錬はいつの日も大事だ。特に自分の武器となる!」
「乾坤ッ!」
「──一擲!」
掛け声はコミック版の少年探偵アキカゼとその仲間が連携を取る時の為のものだ。意味は大博打に出るときの四字熟語で、アキカゼ達がそれほどまで追い詰められる相手に対しての礼儀の言葉らしい。
よくぞ私をここまで追い詰めた。だがこれだけがアキカゼハヤテの全てだとおもうなよ! と、時には大博打に出るスタイルもあった。
少年探偵アキカゼはそれまではどんな難事件でも華麗に解決してみせる強者の姿しか描かれていなかったから。
だからこそ私を含む読者の多くはこの言葉の意味をあまりよく知らずとも使う。
こんな風にコンビネーションを組むときになんかね。
探偵さんの蹴り上げたボール型が宙を舞い1HIT!
それを真横から壁に叩きつけるように私がオーバードライブシュートで2HIT!
そこへどこからか駆けてきた探偵さんが膝を突き上げてフィールドの壁に突き上げて3HIT!
ここまでにバインドアタックは一切してない。
どれもエネミーに攻撃を一切させない行動を意識した。
つまり相手に行動させないことこそがチェインアタックの真骨頂なのだと私や探偵さんは思い至っていたのだと。
2人で3HIT以上を考えるなとオクト君は言う。
けれどそうではなく、むしろ積極的に狙っていくのがこのゲームの楽しみ方なのかもしれないと私は思った。
だってスキルはこんなにも自由なのだから。
「少年、次は何をしたい?」
「そうですね。探偵さん、空の上にご興味はおありですか?」
「はい。空の大海に人は誰しも憧れるものです。コミック3巻のセリフを抜粋しました。似てました?」
「それをそこで言うから台無しですよ」
「はっはっは! 君と僕の仲じゃないか」
探偵さんは快活に笑い飛ばし、私は疲れた笑みを貼り付ける。
永井君は昔から調子に乗せると人を振り回す。
そんな永井君を連れて行った先はマナの大木の麓。
樹上3000メートルの場所。
頂上まではまだまだ先。
出だしは良かったんですけど、途中でスタミナが切れたようで、私の方を恨みがましく睨みつけながら声をかけてきました。
「少年、いきなりこんな無理難題を突きつけてどういうつもりだい? こちとら始め立ての初心者だよ? 何でもかんでも君と同じポテンシャルを求めないで欲しいね。聞いたよ、君、ここで相当ヤンチャしてるそうじゃない? それに付き合わされる人の身も考えなさい!」
私と同じ景色を見ながらバテていた。
そのお言葉、さっきの君にお返しするよとばかりにジト目でかえしておく。
しかしやっぱり無理だったか。呼吸系のスキルなしでマナの大木に登らせるのは……どざえもんさんですら垂直移動持ってなくてアレでしたし。
「探偵さんならいけるとおもってたんですが」
「無茶言わないで! スキルの育ってる君と比べられちゃ敵わないよ。戦闘にだったらいくらでも付き合うから」
「じゃあそれで」
「すこぶる不服そうだね?」
「気のせいですよ。頼りにさせて貰ってます。ちなみに私はここから落ちても死なないけど、探偵さんはどうです?」
「ここから大地へショートカットさせようと言うのかね、君は」
「はっはっは。冗談ですよ」
少し舌打ちしまして、永井君の手伝いました。
スタミナをすこぶる消費したであろう彼は、街に戻るなりマンゴードリンクを飲み干していました。
やっぱり彼はマリンと似たような動き回るタイプみたいだ。
永井君の回復を待ちながら私は、ランクをEからDまで上げるのに全力を出すのだった。
チェインアタックを意識したらあっという間だったよ。
永井君もノリノリで蹴り飛ばしてたしね。
家族やマリンが今の彼を見たらどう思うだろう?
だって彼、役に入り込みすぎると興奮しだす変人ですし。
さて、今日の私のログインもこれでおしまい。
明日は久しぶりにジキンさんでも誘って桜町の朝の散歩もしてもいいかな?
そんな風に考えながらログアウトする。
永井君の参入でますます私のAWO生活に張りが出てきたぞぉ!
12
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!
ゆるり
ファンタジー
【書籍化!】第17回ファンタジー小説大賞『癒し系ほっこり賞』受賞作です。
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です)
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様でも公開しております。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる