もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴

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二章 ゴミ拾いともふもふ生活

20 説得と逃亡

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僕はロキに変身し、全員に変身姿をお披露目した。
最初に違和感に気づいたのは兄さんだ。

「おい。どうして服のサイズが縮んでるんだ?」
「実は変身以外にもスキルが出てきたんだよね。兄さんに飲ませたお水あったでしょ?」
「一時間で効果が切れるあれな」
「それ。似たようなものを拾い続ける事でスキルとして昇華出来るのが僕のゴミ拾いの真骨頂みたい」
「ゴミ拾いでも十分優秀なのにまだまだ凄くなるのか、お前は?」
「僕がなんの憂いもなくゴミ拾いスキルを活かせたのは兄さんのお陰だよ。ロキ……この姿の時の僕ね? 彼がああも無謀だったのはこの姿になったらわかる。すごくパワフルで、誰も追いつけない脚力。有頂天になるのも無理はないと思った」
「だからあんな目にあった?」

僕はうんと頷き、当時に思いを馳せた。

「彼は自分の能力を過大評価していた。誰にでも通用すると思っていたんだ。でも意外な弱点があった」
「それが、数の暴力か」
「僕ならきっと怯んじゃう。僕は臆病だからね。でも兄さんが守ってくれるなら、多少の無茶でもやってみようと思う」

これから、もう一匹のハンターラビットを手懐ける。
目撃情報が上がった以上、冒険者ギルドも静観しない筈だ。
そしてこの周辺を管轄している領主である父が追い求めている以上、しつこく追い詰める事が確定してしまった。

僕に課せられたミッションは、彼女を見つけられる前に救い出し、仲間として引き入れる事。そして時に匿ってもらう事だ。
ただし一緒に同行できるかどうかは僕次第。
兄さんには色々面倒をかけてしまう。

「死ぬんじゃないぞ?」
「言ったでしょ、僕は臆病なんだ」

笑い、覚悟が決まる。
変身するな。兄さんは最初に僕にそう釘を刺した。
それでも変身してしまったのは僕のせい。
責められたって仕方のない事。だと言うのに兄さんは困った顔をして僕の都合を引き取った。
自分たちがどれだけ困ろうと、『兄貴だから、弟は世話してやんなきゃ』と笑う。

ただ僕より数年早く生まれただけなのに。
僕は果たして妹たちに兄らしい事をしてあげられていただろうか? 実家での思い出は今は薄く、冒険者生活の方が色濃くなってしまっている。

今の僕は弟で、これから兄になりに行く。
ロキ。ソニンを説得しに行く。付き合ってくれるか?
『人間に協力するハメになるとはな』みたいな感情が浮かび上がるが、不意に『背に腹は変えられんか』と理解の感情が上がった。

自身の油断でミスを犯したハンターラビットは、人間から狡賢さと臆病さを学んで少しだけ成熟した精神を育んでくれた。
あとは僕次第だ。

後ろ足に力を入れると、真上に矢のように加速し。すぐに兄さんたちが見えなくなった。
木々を掻い潜り、ソニンを探す。
目撃情報があった時点で人前に姿を現したか、それとももう捕まった可能性があるかもしれない。

『フン、なんで弱いじゃない。こんなのをありがたがって寄越していたなんてお兄ちゃんもツメが甘いわね』

声が、聞こえる。
口調、そしてロキの耳を通じてようやく拾える時点でソニンのものだ。
そこには当時のロキを彷彿とさせる情景が広がっていた。
純白の毛皮を返り血で汚しながら、ボア肉に食いつくソニンの姿があった。
周囲にはイキリ立つボア達。

あの子は、あの種族は考えると言う事を知らないのか?
そしてボア垣の奥にはビッグボアが静かに佇んでいた。
いや、静かにではない。怒りを堪えている姿だ。
食う為の戦いなら弱い自分が悪かったで済む。そんな感情が読み取れる。

人間側による勝手な考察とは違い、モンスターのルールは弱肉強食。だが食う以外の殺戮はお互いに生存の領分を越える

分水領は、ここから先だ。
誰彼構わず遊び感覚で手にかけるなら、ロキのように大きな犠牲を出しても仕留めると言う覚悟がビッグボアから見られたのだ。

そしてハンターラビットとは2度と分かり合えない。見つけ次第殺す行動しとるだろうと僕の頭に感情が流れてくるようだった。
会話ができないからってあまりにも短慮が過ぎる。
殺伐しすぎなんだよね。

親兄弟を殺されたら誰だって気が立っても当然か。

『ふーん、あたしとやりたい奴が居るんだ? いいよ、おいで。軽くあしらって上げ──ふぎゃ!』

上空から飛び降りるなり、ソニンの脳天にチョップを叩き落とす。その場で昏倒する妹分を抱き抱え、今まで取得したスキル群を総動員して負傷したボア達の傷を塞ぎ、怒りを鎮静化させた。

『もう少し、手綱を握っておいてくれ。度々あったら敵わん』

ビッグボア側から言葉が届く。それはぼやき?
それとも意思の疎通?

『済まない。こいつは外の世界に興味津々でな。なまじ強いもんだから恐れ知らずで困ってる』
『! 言葉が通じるのか』
『今、聞こえるようになった。相互理解が合って初めてリンクが繋がるのだろう』
『そうか。今まで生きてきてこんな不思議なことはない』
『だろうな。僕もだ』
『次来た時は、容赦なく殺すとそこの個体に伝えておいてくれ』
『いや、もう拠点を移す。人間達がこいつを探している。なんでも毛色が違うと言う理由で剥製にしたいそうだ』
『人間達は性懲りも無く我らが両分に土足で踏み入るな』
『全くだ。お互いに気をつけよう、森の主よ』
『此度の施し、痛み入る』
『気にすんな、こいつを匿った時点で俺の責任もある』

語っていくうち、言葉にロキが宿りだす。
弟の時の僕とは違い、兄さんのような自信に満ち溢れた言葉が漲った。

俺。

それがロキの一人称。
僕とは違うハンターラビットととしての生き様。
妹を守る兄としての仕草だった。

気がつけば絆レベルが上がっている。
僕の変身は、いつでもロキになれる状態からいつでもロキに変われるものとなった。
僕の意思は残りつつ、ロキの相談役として作用する。

『よろしくな、相棒。自我を取り戻すまで随分と世話になった』

ううん、こちらこそ。守って貰ってばかりじゃ見えない世界を教えて貰った。だから僕にとってはかけがえのない成長だったと思うんだ。そう伝えると、満更でもない、みたいな返事が返ってくる。

気絶したソニンを連れて兄さんのところに戻ると、僕達は逃げるように拠点にしていた街を立った。
まだお世話になった人にろくに挨拶も終えてない。
けど、そんなこと言ってられる状況じゃなくなっていた。

「親父の兵隊が乗り込んできたぞ。馬車は用意した」

ずらかるぞ。
兄さんの言葉に頷き、僕はロキのままソニンを連れて獣用の檻に入った。見せかけの首輪をはめ、飼われてる状態を維持しながら国境を超えた。

男爵領は国の最南端。隣の国まで出張って来れないので、逃げる先は決まって隣国だった。
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