もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴

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七章 もふもふファミリーと闘技大会(本編)

81 闘技大会①エントリー

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いよいよ待ちに待った闘技大会当日。
事前にチケットを買っておいたので慌てずに席まで辿り着ける。

「さすが帝都だな。客席のすぐ近くに屋台を置いて購買欲を誘ってきやがる」

お弁当を持ってきてるのに、誘惑に負けたと降参するキサム。
トラネはプロフェンぐるみを抱っこしながら試合開始を待っていた。

「キサム。始まるよ!」
「あの串肉うまそうだな。ちょっと買ってくる」
「あ、もう」

行っちゃった。
こんな開けた空間で肉の焼ける匂いを蔓延させたらキサムみたいな食いしん坊は食いついて当たり前。それなりに行列ができていた。

「あら、ルークさん。偶然ですね」
「アセトお嬢様?」
「プライベートできてますのでアセト、で構いませんわ」

隣の席にはアセトさんが座る。貴族なら貴族専用の席があるんじゃないだろうか? 護衛の人はゴトーさんではなくなっていた。

「噂は聞いてるよ、妹が世話になったそうだね」

ニコニコと笑う人は、アセトお嬢様のお兄さんだったみたいだ。

「本日はご観戦ですか。平民の僕たちと同じ席で大丈夫なんですかね?」
「君は面白いことを言うなぁ。ここは貴族席だよ? 平民の席はあっち」
「え、僕たち席間違えてる?」

慌てて席番号を確認するが、東側-230と言う数字は一緒だった。ならばなぜこんなことが起こったのかと言えば、それは手配した人が貴族だからである。

「いや、間違えてないよ。キミ、英傑の一人であるビーストテイマーストナのサポーターなんでしょ?」
「ストナさんとは仲良くさせていただいてますが、英傑というのは初耳です」

そんなすごい人だったんだ、あの人。
兄さんと同じ匂いがしてたのでダメ人間認定してたけど、今度からはもっと敬わなくちゃ。
そういえば赤いバンドしてたもんね。

「ストナ=アイビー。彼女は英傑でありながら侯爵家のご令嬢でもある。そんな彼女からのチケットを手配したのなら、君たちも貴族の身分を与えられるのさ。喜ばしいことだよ?」

貴族じゃないかとは思っていたけど、予想よりだいぶ高い位置にいたね、ストナさん。

「そんなすごい席だったんですね、ここ」
「どのように取り入ったのか、是非お話を聞きたいものだね。彼女は貴族に対してどこか距離を置きたがる。どうやって心を開かせたのか、すごく興味があるんだ」

グイグイ来るなぁ、この人。アセトお嬢様はどこか距離を置きたがるイメージだったけど真逆だ。

「お兄様! ダメですよ! ルークさんが困ってます」
「と、妹に怒られてしまった。観戦しながらでもゆっくり語ろうじゃないか。申し遅れたね、私はカロナール。カロナール=アミノフェン子爵だ。父上から正式に子爵の名を引き継いで、今日はこの席で将来抱えるだろうAランク冒険者を見定めにきた。キミのお名前を聞かせてくれるかい?」

さっきお嬢様から僕の名前を聞いておきながら聞くってことは、聞きたいのは名前だけじゃないんだろうな。

お貴族様だしなぁ、こうやって近づいてくるってことは既に裏を取ってる可能性も高いか。なら、ある程度は話しちゃってていいかな。どうせ遅かれ早かれバレるし。

トラネは他人のフリしながらプロフェンぐるみをモフってる。
この……! キサムもキサムで帰ってこないし。

はぁ、しょうがない。自分一人で乗り切るか。
どうもお兄さんは僕に興味がおありのようだ。

「ルークと言います。バファリンの街でDランク冒険者と、商業ギルドの方で毛皮修復師を名乗らせていただいてます。そのほかに『うさぎのお宿』と言うテイムモンスターのカフェを経営しています。どうぞよろしくお願いします、カロナール様」

これでどうだ?
魔導具師の方は敢えて隠した。
元皇帝陛下の師事を受けたなんて現役貴族に聞かせたら大目玉だもんね。

「へぇ、まだ子供なのに店舗経営者だったとは。それにテイムモンスターのカフェ? なるほど、共通点はそこか。今日はテイムモンスターは?」
「観客席にまで連れ込むのはマナー違反かと思いまして(ニャンジャーの里)に預けてます」
「(厩舎に)預けてる? 成る程。確かに、闘技大会に出るのでもないのに観客席にテイムモンスターを持ち込むのを嫌う貴族も多い」
「ええ(貴族席だなんて知らなかったけど)マナーですから」
「そうだね、マナーだ」

はっはっはと笑い合いながら席に着く。
もう終わった? と言う顔でトラネが顔を覗かせた。
そのほっぺを両側で掴み取ってやりたくなったけど我慢した。

「はいよー。出前一丁上がりだ!」

肝を冷やすやりとりの後、キサムの能天気な声が真上からかかった。
お弁当持参なのにやたら買い込んできてる。
この子、自分が無駄遣いしてるって感覚がないのだろうか?
帰りに報酬をもらえるからって、手持ちを使い切らなくてもいいだろうに。

「いやー、なんかこのバンドに店主さんがびびっちまってさ。なんかいっぱい奢ってくれたぜ?」

掲げるバンドは白。皇族、またはそれに連なるものに贈呈される身分証だった。
それに興味を示すカロナールさん。人が悪いなぁ、といつの間にか席をアセトお嬢様と変えて肘を突いてくる。

「まさか皇族関係者だったとは」
「オーレン皇子とバファリンでよくしていただいたので」
「だからってその全員がそれをつけられるわけではない。だが君たちはつけてるね?」

なんか面倒なこと嗅ぎつけてないかな、この人。
悪巧みを思いついた兄さんみたいな顔してる。
こんな人が子爵について大丈夫なのかな?
ロキぐるみをギュッと握る。

「おや、それは妹が言っていたぬいぐるみだね。少し貸してもらえるかい?」

むんず、と頭を掴んで持ち上げた。
ちょっと、勝手に取らないで!
まだ貸すって言ってないのに取り上げられる。

「おぉ、きちんと重さがある。それに独特の匂いとこの毛並み……出回ってるハンターラビットの毛皮と同質と見るが、どうだい?」

なんて言うか失礼な人だなって印象が拭えない。
さっきからアセトお嬢様はソワソワしてるし。

「僕は毛皮修復師です。その技術をどこに活かすかは僕の勝手に思いますが?」
「全くもってその通りだ。ちなみに買いつけるならこれはいくらになるんだ? 私も一つ欲しいな」
「まずはお作りするのにそれなりの期間を頂きます。そしてアセトお嬢様より平民と同じ価格はあまりにも安いとおっしゃられたので、お嬢様のつけた値段を貴族基準とするようにクエストを受けさせてもらいました」
「つまりうちの妹の一声で基準が変わるのだな?」
「はい。ただ大量生産はしてませんので、大量に発注されても製作期間を問わずにお待ちいただくことになります」
「ふぅむ。友好の印に貴族達に配ろうとしたがダメか」
「あまり大量に受注はしない約束でコーエンさんやザイムさんにお願いしてますから」
「待て待て待て。どうしてここでサプリ家の財務大臣のご子息の名が上がる?」

はて? サプリ家とは一体?

「これは知らないって顔だな? 全くどんな人脈を築いてるんだ。皇族にサプリ家、更にはアイビー家だと? 私なんかの出る幕はないではないか! 急用を思い出した、私は実家に戻る。アセトはここで観戦してなさい」

言うだけ言ってうるさい人は出ていった。
良かった観戦中も質問攻めだったら気苦労でロキぬぐるみが禿げるところだったよ。リアルと違ってぬいぐるみだから抜け毛がすごいんだ。

「お兄様もお忙しそうですね」
「きっとルークさんを囲うつもりで来たのだと思う。ゆくゆくはアイビー家と仲良くしたいって魂胆が丸見えね」
「でもそれどころじゃなくなった?」
「ルーク君の人脈が手に負えないってわかって急遽対策を考えにいったのでしょうけど、気にしなくていいわ」
「お貴族様って大変なんですね」
「お兄様は何かと予定通りに行かないと気分を損ねる方なので」

ああ、わかるよ。次男のタイレノール兄様も似たような感じだった。当たり散らしはしないけど、重積に押し負けちゃうタイプ。
アスター兄さんみたいにお気楽でもないからひつよういじょうにかんがえりゃうんだ。

「それとさっきはごめんなさいね?」
「いや、それだけ僕の存在を貴族間で扱いかねてるってことでしょ?」
「え、ええ」
「正直に言って僕達がランクをDから上に上げない理由もそこに起因するんだよね。Cになるとギルドを通さずにクエストを受けられるようになる。Bになれば直接貴族から。Aに至れば皇族から。冒険者ってそう言うふうにできてるんですよ」
「だからルークさんはDにいるんですね。でも皇族から直接クエストが回ってきてませんか? それってつまり……」

そこから先は内緒です、と唇の前で人差し指を伸ばす。

「そもそも他者にどうこうできる存在ではなかったのね」
「強いのは僕たちではなく、テイムモンスターの方なんですが。そのテイムモンスターのお世話を僕たちが好き好んでしてます。故に『ブリーダーズ』僕たちのパーティー名です」
「なるほど、じゃあトーナメントの一番端にあるブリーダーズというのはルークさん達の事なんですね」
「はい?」

アセトお嬢様からの指摘に、僕は初めて会場に目をやった。
予選を抜けた後にはシードを含む何も記されていない箇所があった。

最初は空欄だったその場所に、なぜか僕たちのパーティー名が記されている。

「あ、ほんとだ。ねぇルーク聞いてた?」
「知らないよ。ロキ達おいてきちゃったよ?」
「こりゃ主催側の悪ふざけか?」

串肉を頬張りながらキサムが咎める。
食べるのやめなさい。出番はだいぶ後だけど、優勝者と直接戦うことになるみたいだ。

主催者から闘技大会に大量の欠員が出たため、予選は行わずこのまま本戦に出場する旨が出された。

第一試合の一組目は兄さんのところの『ハイゼリーエース』。対戦相手は全員が筋骨隆々の大男である『ベアーズ』というパーティ。全大会Bランク3位についた凄腕だ。

二組目~四組目は知らない人たち。

五組目にストナさんBランク5位VSBランク2位の『スピアーズ』

六組目~十組目は知らない人となった。
こう考えると知らない人ばかりだ。普段から如何にBランクの人達に興味ないのかバレてしまったね。

第一試合で20人を10人に絞り、第二試合で10人を五人。
第三試合で僕たちは端数の人と戦う。

そして優勝者とも戦い、前大会Aランクとも戦う流れだ。

なぁにこれぇ。

何がダメかって勝っても負けても出番が回ってくるところ。
何この理不尽。エントリーではなく、順番制なのは勝ち抜く自信があるって信じられてるってことなの?

それが前日にクエストを終えた人達に割り振る試合かって怒りたくなる。


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