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第八章 火炎少女

第十話

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 私達はリズさんの移動魔法ベークシーによりプエルトリコに移動した。プエルトリコには三角結界の頂点の1つがある。古来よりここバミューダの海域にウラカーンは封じられていて封印が解けるたびに大暴れを始めるらしい。
 ウラカーンは他人を疎い妬み殺し合いを始める人間を嫌い、その存在を認めていない。人間など無に帰すべきと主張している。人間の存在を認めていないので人間を殺すことに何の躊躇も示さない。

「何これ!!」
「遅かったみたいね。」

 プエルトリコはカリブ海にあるリゾート地で美しいビーチが有り、街並みはスペイン風の建物が並び青、緑、黄色、ピンクなどで彩飾がなされ華やかな雰囲気を醸し出している場所だ。
 そんな風光明媚な街並みが見るも無惨な姿に変貌していた。街中が水に浸かり建物は押し流され、瓦礫や日用品、家具が浮かんでいる。私達が降り立ったサンクリストバール砦からは美しい街並み、海が一望できるはずだったが街は原型を止めていなかった。
 水は小高い丘の上にまで達したのか、丘の上で車が重なりあいひっくり返っている。よく目を凝らすといくつか残っている建物の屋上に何人か人が集まっているのが見え、そこに移動することにした。


「急に空が真っ暗になって大粒の雨が降り出したんです。でも、急な天候の変化はよくあることなのでその時点では誰も次に起こる異変なんて予想もしていなかったんですよ」

「そしたら急に海が干上がりだして、、私、初めて見ましたよ!いいや、私だけでなくその場にいる全員が初めてだったと思います。遥か彼方まで水が引いてまして、その珍しい光景にその場の全員が食い入るように海の方を見ていました」

「物珍しさに沿岸の方に向かう者までいました。そしたら急に現れたんですよ。大雨で視界が霞むなか、まるで城壁のような大波が現れ襲ってきたんです。大波は街を破壊しながらどんどん内陸まで上がって来て、沿岸沿いにいた人は皆んな流されて、波にのまれ沈んで見えなくなってしまいました」

「沿岸沿いの建物は粉々に破壊されて車もペッシャンコ。逃げ惑う人々を次々と飲み込みながら大波は私達の目前まで迫って来て、、私達はここで震えながらどうか神様怒りを鎮めてくださいと祈り続けていました、、」


「私は年寄りで、足も不自由だから諦めるつもりでした。そしたら私の孫が私を背負ってここに掛け上がってくれて、、」

「何度も何度も私を置いて逃げてくれと言ったんだけど聞き入れてくれなくて、、」

「波に追いつかれても必死に泳いで私をここに上げてくれました。しかし、そのあと力尽きて流されていったんです、、」

「私は呪いましたよ、、この世に神は居ないのかとね、、」


「私はこの建物の隣のここより少し低い建物に住んでいました。皆で屋上に避難したんですけど、母に言われ念のためと子供を連れこちらの高い建物の屋上に足の悪い母を置いて避難してきたんですよ、、」

「そしたら、、どんどん、、どんどん水が上がってきて私の住んでいた建物の屋上にまで水は達して、、」

「屋上にいた母たち家族が流されていく姿をただただ、、見ていることしか出来ませんでした、、」

「ちくしょー!!ウラカーンめ!!」

 涙ながらに話す街人達の言葉に、怒りをあらわにしルーシアさんは大声を出す。

「惨いわね、、」

 リズさんはそんなルーシアさんを後ろから包み込むように抱き締めた。リズさんは必死で怒りを押さえているのか、泣いているのか、体が震えていた。

「それ程の大津波がなぜこの街を?ウラカーンが復活したとき、海底で何か起こったのでしょうか?」
 ひょうが海の方を見つめ疑問顔をする。

「恐らく、海上に出ようとして海底を強く蹴ったのでしょうね」

「蹴った?蹴っただけですか?それだけでこんな被害が?」
 リズさんの言葉を受け入れる事が出来ず私は声を荒げた。

「ええ、そうよ。想像もつかないことでしょうけど、我々人間が及びもつかない領域にいる。だから彼等は神と呼ばれているのよ」

 神とは何なのだろうか?神様とは我々を導いてくれる存在ではなかったのだろうか?
 その圧倒的な力を前にし我々人間はただただ恐怖し、震えることしか出来ないのだろうか?
 私達はこれからこの絶大な力を持つ神を敵にまわし戦いを挑まなくてはいけないのだろうか?
 到底勝てるとは思えない。止めさせた方が良いのではとの感情が込み上げてくる。しかし、止めたところでどうなるというのだろうか?ウラカーン放っておけばこの街のような街が増えるだけになってしまう。
 この人達は本当に神に抗える力を持っているのだろうか?今は信じるしかない。この不思議な人達の事を、、。
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