【完結】浮気した婚約者を捨てた公爵令嬢は想いを寄せられていた男達に溺愛される

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9.婚約破棄成立

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婚約破棄の手続きのため、しばらくはバタバタと忙しい日を送っていた。
最終の段階で本人達と其々の家長がサインをする書類がある為、久しぶりにノックスと顔を合わせることになった。
最後に会ったのは、浮気現場に出くわしたあの日だ。それ以降は、会うつもりも無かったので彼の置かれた状況など知る由も無かった。

久しぶりに会った彼は、目が虚でやつれていた。誰が見ても、その憔悴っぷりには驚くほどだった。
一言も発せずに淡々と書類にサインをしていく。チラッと見るものの、彼はずっと下を向いていた。
最終確認の末、正式に婚約破棄が成立した。
では、とお互いが席を立つ…その時、視線を感じふと顔を上げた。
その先には、ノックスが潤んだ目でアリスティアを見つめていた。目が会うと、声を出さずに口元だけで「ごめん」と動かした。
そして、ゆっくりと立ち上がり綺麗に一礼した。
その礼は全員が出ていくまで上がることはなかった。
そんな彼に向かってアリスティアは最後になるであろう言葉を告げる。

「私の知る、ノックス・ハイルデンは努力家でとても優しい人でした。そんな彼と支え合い温かな家庭を築けることを楽しみにしていました。一緒にはなれませんが、貴方の幸せを願っています。
お仕事…無理なさらずに。お身体をご自愛ください。さようなら、ノックス様」

誰もいなくなった部屋からは、悲痛に泣き叫ぶ声が響いていた。


無事に全てが終え、幸いな事に彼とは年齢が5歳も離れていたため学園生活で顔を合わせることは、まず無い。それが、何より有難かった。
ただし、浮気相手のテルザは同じ学年の為これこらも顔を合わす事があるだろう。
まぁ、そちらは正直どうでもよかった。

今日は久しぶりの学園だ。
いつも通りに登園すると…やたらと声をかけられる。
不思議に思いつつ、教室に入ると仲の良い令嬢たちが声をかけてきた。

「アリスティア様、ごきげんよう!」

「ごきげんよう!ビビアン様、シンシア様」

「ふふ!朝からモテモテね!」

「本当ですわ!皆様、アリスティア様のお話ばかりですのよ!」

「あら…どうしてかしら?確かに朝からよく声をかけられますけれど…?」

「「…!!! まぁ、それはアリスティア様が婚約破棄なさったからですわ!」」

「…!そうでしたわね。正直、手続きがいろいろと面倒でして、やっと解放された気になっておりましたので、すっかり失念しておりました…」

そう。完全に忘れていたが、婚約破棄したことでアリスティアは優良物件、第一位に名乗りを挙げたのだ。

まだ婚約をしていない令息達の目付きが、今までとは違ってくる。

アリスティアは先手を打った。

皆んなに聞こえるように宣言する。

「しばらくは婚約をせずに、静かに暮らしたい!」と。

しかし、受け取る側は少し違う見解で理解した。


「では、しばらくは楽しくですわね!」

シンシアはそう言うと、ニマニマと微笑んでいた。



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