9 / 91
9.婚約破棄成立
しおりを挟む
婚約破棄の手続きのため、しばらくはバタバタと忙しい日を送っていた。
最終の段階で本人達と其々の家長がサインをする書類がある為、久しぶりにノックスと顔を合わせることになった。
最後に会ったのは、浮気現場に出くわしたあの日だ。それ以降は、会うつもりも無かったので彼の置かれた状況など知る由も無かった。
久しぶりに会った彼は、目が虚でやつれていた。誰が見ても、その憔悴っぷりには驚くほどだった。
一言も発せずに淡々と書類にサインをしていく。チラッと見るものの、彼はずっと下を向いていた。
最終確認の末、正式に婚約破棄が成立した。
では、とお互いが席を立つ…その時、視線を感じふと顔を上げた。
その先には、ノックスが潤んだ目でアリスティアを見つめていた。目が会うと、声を出さずに口元だけで「ごめん」と動かした。
そして、ゆっくりと立ち上がり綺麗に一礼した。
その礼は全員が出ていくまで上がることはなかった。
そんな彼に向かってアリスティアは最後になるであろう言葉を告げる。
「私の知る、ノックス・ハイルデンは努力家でとても優しい人でした。そんな彼と支え合い温かな家庭を築けることを楽しみにしていました。一緒にはなれませんが、貴方の幸せを願っています。
お仕事…無理なさらずに。お身体をご自愛ください。さようなら、ノックス様」
誰もいなくなった部屋からは、悲痛に泣き叫ぶ声が響いていた。
無事に全てが終え、幸いな事に彼とは年齢が5歳も離れていたため学園生活で顔を合わせることは、まず無い。それが、何より有難かった。
ただし、浮気相手のテルザは同じ学年の為これこらも顔を合わす事があるだろう。
まぁ、そちらは正直どうでもよかった。
今日は久しぶりの学園だ。
いつも通りに登園すると…やたらと声をかけられる。
不思議に思いつつ、教室に入ると仲の良い令嬢たちが声をかけてきた。
「アリスティア様、ごきげんよう!」
「ごきげんよう!ビビアン様、シンシア様」
「ふふ!朝からモテモテね!」
「本当ですわ!皆様、アリスティア様のお話ばかりですのよ!」
「あら…どうしてかしら?確かに朝からよく声をかけられますけれど…?」
「「…!!! まぁ、それはアリスティア様が婚約破棄なさったからですわ!」」
「…!そうでしたわね。正直、手続きがいろいろと面倒でして、やっと解放された気になっておりましたので、すっかりどの様に見られるか失念しておりました…」
そう。完全に忘れていたが、婚約破棄したことでアリスティアは優良物件、第一位に名乗りを挙げたのだ。
まだ婚約をしていない令息達の目付きが、今までとは違ってくる。
アリスティアは先手を打った。
皆んなに聞こえるように宣言する。
「しばらくは婚約をせずに、静かに暮らしたい!」と。
しかし、受け取る側は少し違う見解で理解した。
「では、しばらくは楽しく遊べそうですわね!」
シンシアはそう言うと、ニマニマと微笑んでいた。
最終の段階で本人達と其々の家長がサインをする書類がある為、久しぶりにノックスと顔を合わせることになった。
最後に会ったのは、浮気現場に出くわしたあの日だ。それ以降は、会うつもりも無かったので彼の置かれた状況など知る由も無かった。
久しぶりに会った彼は、目が虚でやつれていた。誰が見ても、その憔悴っぷりには驚くほどだった。
一言も発せずに淡々と書類にサインをしていく。チラッと見るものの、彼はずっと下を向いていた。
最終確認の末、正式に婚約破棄が成立した。
では、とお互いが席を立つ…その時、視線を感じふと顔を上げた。
その先には、ノックスが潤んだ目でアリスティアを見つめていた。目が会うと、声を出さずに口元だけで「ごめん」と動かした。
そして、ゆっくりと立ち上がり綺麗に一礼した。
その礼は全員が出ていくまで上がることはなかった。
そんな彼に向かってアリスティアは最後になるであろう言葉を告げる。
「私の知る、ノックス・ハイルデンは努力家でとても優しい人でした。そんな彼と支え合い温かな家庭を築けることを楽しみにしていました。一緒にはなれませんが、貴方の幸せを願っています。
お仕事…無理なさらずに。お身体をご自愛ください。さようなら、ノックス様」
誰もいなくなった部屋からは、悲痛に泣き叫ぶ声が響いていた。
無事に全てが終え、幸いな事に彼とは年齢が5歳も離れていたため学園生活で顔を合わせることは、まず無い。それが、何より有難かった。
ただし、浮気相手のテルザは同じ学年の為これこらも顔を合わす事があるだろう。
まぁ、そちらは正直どうでもよかった。
今日は久しぶりの学園だ。
いつも通りに登園すると…やたらと声をかけられる。
不思議に思いつつ、教室に入ると仲の良い令嬢たちが声をかけてきた。
「アリスティア様、ごきげんよう!」
「ごきげんよう!ビビアン様、シンシア様」
「ふふ!朝からモテモテね!」
「本当ですわ!皆様、アリスティア様のお話ばかりですのよ!」
「あら…どうしてかしら?確かに朝からよく声をかけられますけれど…?」
「「…!!! まぁ、それはアリスティア様が婚約破棄なさったからですわ!」」
「…!そうでしたわね。正直、手続きがいろいろと面倒でして、やっと解放された気になっておりましたので、すっかりどの様に見られるか失念しておりました…」
そう。完全に忘れていたが、婚約破棄したことでアリスティアは優良物件、第一位に名乗りを挙げたのだ。
まだ婚約をしていない令息達の目付きが、今までとは違ってくる。
アリスティアは先手を打った。
皆んなに聞こえるように宣言する。
「しばらくは婚約をせずに、静かに暮らしたい!」と。
しかし、受け取る側は少し違う見解で理解した。
「では、しばらくは楽しく遊べそうですわね!」
シンシアはそう言うと、ニマニマと微笑んでいた。
2
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う
ノルジャン
恋愛
「堕ろせ。子どもはまた出来る」夫ランドルフに不貞を疑われたジュリア。誤解を解こうとランドルフを追いかけたところ、階段から転げ落ちてしまった。流産したと勘違いしたランドルフは「よかったじゃないか」と言い放った。ショックを受けたジュリアは、ランドルフの子どもを身籠ったまま彼の元を去ることに。昔お世話になった学校の先生、ケビンの元を訪ね、彼の支えの下で無事に子どもが生まれた。だがそんな中、夫ランドルフが現れて――?
エブリスタ、ムーンライトノベルズにて投稿したものを加筆改稿しております。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる