双子の転生先は双子でした

cc.

文字の大きさ
52 / 112
Chapter 1

49*王弟は双子について学ぶ

しおりを挟む
「義姉上、どうかそれぐらいで…」


そう言って、チラッと移した視線の先には、父ライオネルに急かされて必死に書類に目を通している陛下がいた。
そして、その陛下を見つめる目には"兄上が居た堪れません"とでも言いたいような、王弟アレキサンダーの表情が見て取れた。

母と共に、クスクスと笑い言いながら「分かりましたわ!」と、話を切り上げる王妃シャーロットからは、なんとも言えない愛おしさが感じられた。
要するに、自他とも認めるなのである。

そんな、おしどり夫婦の弟であるアレキサンダーは、常にこの2人に『結婚!結婚!』と言われて過ごしてきた。正直なところ、家臣以上に結婚を勧めてくるのは、間違いなく陛下と王妃なのだ。
だからこそ、今現在…
ただの衣装合わせの、この場に2人がいるのだ。

普段、滅多なことでは他人と接触しないアレキサンダーが、辺境伯家の双子に衣装の依頼をしたと聞いて、今度の夜会で心を射止めたい女性がいるのではないか?と、考えたのだ。
もちろん、実際そんな女性はいない。
でも、興味を惹かれる双子なら目の前にいた。
アレキサンダーは、採寸をされている間、書類に目を通しながらも、テキパキと動くアシュリーの動きを感心するかのように眺めていた。
漸く、衣装合わせも終えた頃、アシュリーは最後の仕上げに入るといい、何人もの針子を連れ立って部屋を出て行った。
アレキサンダーは、執事から「お寛ぎ下さい」とお茶を出され、ソファーへと腰掛けた。辺境伯家へ来てから、初めて座れた瞬間だった。
「ふぅ~」と、息を吐き肩の力を抜いたところで、待ってました!とばかりに、今度はネイルを終えたナタリーがアレキサンダーの背後へとやってきた。

「殿下、髪型なんですけど…」

そう言うなり、ナタリーはコームを取り出しアレキサンダーの髪をいじり始めた。もはや、"着せ替え人形"の様な衣装合わせを終えたばかりのアレキサンダーに、抵抗する気力は持ち合わせていなかった。頭上では、ナタリーがブツブツと何かを唱えている。
アレキサンダーは、そんなナタリーに「好きにしてくれ」と、一言伝えると先ほどまで目を通していた書類へと視線を戻した。
それから、暫くナタリーはアレキサンダーの髪を好き勝手に弄っていた。その為、気付くのが遅れたのだ。

シャキーン!

耳元で、金属が重なる様な異質な音が聞こえたと思った瞬間…

アレキサンダーの手元の書類の上に、パラパラと煌めく様な金髪が落ちてきた。

「「「「!!!!!」」」」

静まり返る部屋中の視線が、一気にアレキサンダーへと集まった。
すぐさま、振り返ろうとしたアレキサンダーの頭を、ナタリーがガシッと抑えながら「動かないで!」と言われれば、髪を切られたことは間違いではなく、意図的なことだと理解できた。

「私に任せて!いい感じにするから♪」

もはや、殿下に対してタメ口で言い放ったナタリーは止まらなかった。
そもそも、王族の髪を本人の許可なく切った時点で、王族侮辱罪とかに問われてもおかしく無いのだが…
当の本人は、ノリノリでハサミを動かしていた。アレキサンダーは、何も言えないまま自身の髪が切られていくのを呆然と見ていた。
シャキン、シャキン、っと心地の良い音が部屋中に響き渡る。

そして、ハサミの音が止むのとほぼ同時に、アシュリーが「終わったよ~!」と、部屋に戻ってきた。


「あれ?やっぱ結局切ったんだ!」

「うん!こっちの方がいい感じでしょっ!」

「うん!イケメン増しだね!
でも、絶対切らせてくれないかと思ってた!良く切らせてくれたね?」

「あぁ、先に『好きにしていい』って言われてたの!」

「そっかそっか!でも、こっちの方がコレに絶対似合うわ!!」

「でしょっ!!決めた衣装見た時に、絶対切ろうと思ったもん!」


自身の頭上で、楽しそうに繰り広げられる会話を聞きながら、今後は安易に「好きにしていい」等とは口に出さないと決めたアレキサンダーだった。








しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

悪役令嬢に転生したみたいだけど、皇子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、皇帝が邪魔してくるんですけど……

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
お父様に助けられて公爵家の一員となって元気に暮らしていたユリアの元に、宗主国の皇帝から帝国の学園に留学するようにと使者がやってきた。お兄様はユリアを守ろうと四天王の一人の赤い悪魔に戦いを挑むが、負けてしまう。仕方なしに、ユリアは帝国に留学することに。一人で留学する事に不安を感じるユリアだが、兄姉達が一緒に留学してくれる事に!ハンブルク王国では無敵の5兄妹だが、宗主国の帝国ではどうなるのか? 銀色の髪のユリアの正体は如何に? 今全ての謎が解き明かされます。 『悪役令嬢に転生したみたいだけど、王子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、ヒロインが邪魔してくるんですけど……』の続編で帝国留学編です。 無敵の5兄妹の前に現れる最凶の帝国四天王と極悪非道な皇帝。 ユリアとお兄様達の運命や如何に? 今回の敵は最凶です。 ラストは果たしてハッピーエンドかそれとも涙無しには読めない展開になるのか? 最後までお付き合い頂ければ嬉しいです

処理中です...