青空サークル

箕田 悠

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「眼鏡くんもこの学校の生徒?」
 なーこがこの学校に現れた理由が、そこで非業の死を遂げたからであるのならば、眼鏡くんもその可能性が否定出来なかった。
「正直、俺はこの学校に通っていたか分からない。見える景色も全て変わってしまっているし、学校の名前に見覚えもない。もしかすると、名前が変わったという可能性も考えられるが……」
 眼鏡くんが顔を歪ませる。時間が経ちすぎてしまっているのだから、どうしても当時の痕跡を追うのは難しい。だけど、簡単には諦めたくなかった。
「調べてみるよ。学校じゃなくても、何かこの場所にあって、そこで――」
「いや……俺は家で死んだんだ。それも病死だ」
 この場所との繋がりがないと分かり、ますます分からなくなってしまう。
「家が立っていたのが、ここだったとか?」
 長い年月が経っているし、ここは確か創立七十年ぐらいだったはずだ。それ以前に、住宅地であったとしてもおかしくはない。
 それなのに眼鏡くんは、深刻な顔で首を横に振る。
「ここは東京だろ。俺が住んでいたのは千葉なんだ」
 三人で暗い顔で俯く。まだなーこの方がここにいることの説得力がある。
「眼鏡くんはいつからここに居るんだっけ? 誰かについてきたとか?」
 なーこが眉を下げたまま、眼鏡くんに聞く。
「そうか。他の誰かについてきたんだったら、ここに来てもおかしくない」
 その可能性があるだけに、僕は少しだけ希望が見えた。
「いや……気付いた時にはここにいたんだ。場所は図書室だったが――」
「無意識に取り憑いていたとか?」
 なーこがさらっと聞いてくれる。僕がそんなこと聞いたら、何だか気まずいだけに有り難かった。
「あり得ない。無意識に取り憑いてたとして、もっと前に意識があったはずだ」
「うーん」
 再び三人で考え込む。しばらくは無言のまま、時間が流れる。最初に沈黙を破ったのは眼鏡くんの溜息だった。
「もういい。俺の事は気にせず、なーこの方に専念してくれ」
 眼鏡くんが諦めを口をしたところで、なーこが「何言っちゃってんの」と目をつり上げる。
「諦めんの早すぎだし。まだ一時間も経ってないんだよ。眼鏡くんの大好きな男の矜持はどこに行っちゃったわけ」
「……しかし」
「男ならそんな弱気になってどうすんのよ。あんだけホッシーに、男ならどーのこーの言っといてさぁ」
「諦めるにはまだ早いと思う。きっと他に何か手がかりが見つかるはずだから」
 なーこの勢いに乗っかる形で、僕も訴える。
「……そうだな。簡単に弱気になっては、せっかくホッシーの気持ちが蔑ろになる」
 眼鏡くんの表情が少しだけ和らぐ。
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