君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第四章「嫉妬」

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「先輩……とうとうやっちゃいましたね」

 僕が部室に入ったと同時に、神近くんが不機嫌そうな言葉と共にパズルのピースを机に放り投げた。

「何が?」

「何がじゃないですよ。先輩の後ろに女性がいます」

 神近くんの言葉に、僕は金縛りにあったかのように動きを止める。神近くんが頭を抱え込み、それはもう深い深い溜息を吐き出した。

 季節はまだ夏真っ盛りだ。にも関わらず、部室の冷房のせいなのか、それとも僕についている霊のせいなのか……僕の背筋は凍りついたように、全身が一気に冷え切っていた。

「どうして……」

 心当たりといえば、姉に憑いていた霊しか思い浮かばない。でも、神近くんの家に泊まってから一週間以上が経っている。それにあれから何事もなく、平和な日々を送っていたのだ。

 ただ最近になって、暑さのせいか元々ないに等しい体力がさらに減ったように感じてはいた。

 それでも同好会の活動が週に三回ほどで、この部室に来ては神近くんと向かい合ってパズルをして帰る、という他の部活には申し訳ないほど平和で楽な活動内容だった。

 なのに今更何で、しかも何故僕に取り憑いているのかわからない。戸惑いよりも恐怖で、僕はぺたりとその場に座り込む。

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