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第六章「帰省」
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しおりを挟む警察官と早朝から並んで歩くだなって異様な状態に、僕は緊張で言葉数が減ってしまう。加えて相手は神近くんが最も苦手とする相手でもあった。お母さんが言っていた兄弟仲があまり良くないというのも聞いてしまった今、昨日のような『良い人』というだけではないのだろうと警戒してしまう。
「智代と仲良くしてくれているみたいだね」
そんな僕の気持ちを知る由もなく、お兄さんはのんびりとした口調で言った。
「はい。神近くんと同じ同好会に入っているので」
別段隠す必要もないだろうと、僕は正直に伝える。
「同好会?」
聞いていないのだろうか、お兄さんが不思議そうな顔をして問いかけてくる。
「えぇ、パズル同好会です」
「ああ。そういえば昔よく、パズルで遊んでたことがあったかなぁ」
どこか懐かしそうに口元を綻ばせているお兄さんに、僕はやっぱり疑問ばかりが脳裏に浮かんでしまう。表情の一つ取ってしても穏やかで、優し気な雰囲気が漂っているのだ。
ふと、そういえば歳が六歳も離れていると神近くんのお母さんは言っていた。それならもしかすると、歳のせいで話題や考え方が噛み合わなくて、微妙な距離感のまま歳を重ねてしまったのかもしれない。
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