鳥籠の中で僕たちは舞う

箕田 悠

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第一章

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 脩が再び部署に戻ると、秋良は既に戻ってきていた。脩の席に座っている草刈と、何やら熱心に話込んでいるようだ。
 二人が島崎と脩の姿に気がつくと、草刈が秋良の背を叩く。脩が訝しく思っていると、秋良が立ち上がり青ざめた顔で島崎と脩の元へと近づいてくる。

「先程は、すみませんでした」

 頭を下げる秋良に、島崎は軽く肩を叩くと「気にするな」と唇の端を少し上げた。

「田端は肩の力が入りすぎだ」
「……はい」
「もっと世良を頼れよ」

 そう秋良に言い残し、島崎は自分の席に向かった。残された脩は秋良を促し、自分たちの席に戻る。

「世良先輩ったら、もっと後輩を大事にしなきゃ駄目じゃないかー」

 脩の席を陣取っている草刈は頭の後ろに手をやり、脩を見つめてくる。

「人の席で何やってるんだ……」
「何って、世良先輩の代わりに田端くんの相談に乗ってたんだよ。なぁ?」

 草刈が、秋良に同意を求めるように問いかける。

「……はい。ご迷惑をおかけしました」

 秋良は脩に向き直ると、頭を下げる。

「……別にいい」

 脩は思わず声音が低くなってしまう。ほんの一瞬だけだが、嫌な気持ちが沸き上がってきたのだ。
 自分は手取り足取りまでとはいかないものの、秋良の指導係として一緒にやってきたつもりだ。それなのに草刈には相談出来て、自分には頼って来なかった。
 ふと、ヤキモチを妬いているみたいだと気づき、脩は眉間に皺を寄せ思考を振り払う。

「仕事したいから、お前は早く自分の席に戻れよ」

 脩は軽くため息を吐き出し、草刈に冷たい視線を向ける。

「はいはい」

 やっと草刈が腰を上げ、自分の席へと戻っていく。なんとか奪い返した席に腰を降ろし、同じく自席に着いた秋良に視線を向ける。

「再来週に出張に行くんだけど、一緒に来てほしい」
「……良いんですか?」

 顔色を伺うように、秋良が眉尻を下げ不安げに脩を見つめてくる。

「いずれは担当になるかもしれないから。いろいろと見ておいた方が良いと思う」
「分かりました。よろしくお願いします」

 秋良は頭を下げると、パソコンに向き直る。脩も遅れを取り戻そうと、画面に目を向けた。

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