鳥籠の中で僕たちは舞う

箕田 悠

文字の大きさ
上 下
50 / 107
第三章

8

しおりを挟む
 秋良に起こされ、脩は目を擦りつつもオフィスに戻る。結局、おにぎりは食べかけのまま、コンビニの袋に入れる羽目になってしまった。

「すみません……邪魔しちゃって、俺がいたからあんまり寝れなかったんじゃないんですか?」
「いや、大丈夫。起こしてくれてありがとう」

 逆に秋良がいてくれたから、寝過ごさずに済んだのかもしれない。タイマーをかけるのを忘れてしまうほどに、眠気が勝っていたのだ。
 自席に腰を降ろし、脩は先程までの業務の続きに戻る。

「世良先輩、明日から帰省するの?」

 草刈がいつの間に戻ってきたのか、ひょっこりとパソコンの隙間から顔を出す。

「なんで、いるんだ?」
「なんでって、俺の席ここだもん」

 せっかく静かで平和だったのにと、脩は深い溜息を吐き出す。

「明日から俺に会えないというのに……相変わらず、つれないなぁ」
「会わないほうが、精神衛生上良いから」
「普通そこまで言うか……俺はお前の事好きなのになぁ……」

 草刈の寂しげな声を聞かないふりして、脩は業務を進めていく。
 二人のやり取りを横目に、秋良も苦笑いしつつ、業務を進めているようだった。
 明日から五日ほどの休暇に入るが、秋良はどう過ごすのだろうか。帰省するのかと聞いた時は、浮かない顔でまだ分からないと言っていた。
 自分と血の繋がりがあるかもしれない秋良は、一体どこが地元なのだろうか。まさか、世神子村だったりして……そこで、背筋に悪寒が走る。考えれば考える程、額に冷たい汗が滲んでくる。そんなはずはないだろうし、仮に分家の人間だったら何故隠すのかも分からない。さすがに分家の人間が、本家の人間を知らないはずはない。集まりには分家も参加しているのだから……。
 嫌な思考を振り払い、脩はなんとか終業時間に間に合わせるべく業務に集中した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18+BL】空に月が輝く時

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:128

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,219pt お気に入り:93

足音

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:12

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,519pt お気に入り:846

fate

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:37

今日見た夢とあの日見た夢

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:57

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,349pt お気に入り:14

処理中です...