愛に縛られ、愛に溺れる

箕田 はる

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 無難にカレーにしようかと思いつき、途端に水瀬は顔を顰める。鳴河もよくカレーを作ってくれたことを思い出し、複雑な感情が込み上げてしまう。
 かといって、他に何が良いかも思いつかずに、結局はカレーの材料を片手に水瀬はマンションへと向かった。
 エレベーターで六階に上がり、貰った合鍵を使って部屋に足を踏み入れる。相変わらず綺麗に整理されたリビングで、水瀬は荷物をテーブルに置くと上着を脱いだ。ワイシャツの袖を捲り、ひとまずはキッチンで手を洗う。
 自炊は基本しないという久賀のキッチンは、水回りは使われた形跡が少ない。唯一、コップが逆さまでカゴに入っているぐらいだった。調理道具がないという懸念もあったが、一応は揃えられているようで棚を開くと綺麗な状態で置かれていた。
 家主がいないにも関わらず、勝手なことをするのは気が引けるが、後で謝ればいいと棚から鍋や食器を取り出した。道具が一通りそろったことを確認し、早速調理に取りかかる。
 先に米を炊いておこうと、新品同然の炊飯器にといだ米をセットする。ご飯が炊けるまでの間に、カレー作りに取りかかった。
 辛いのが苦手かどうか分からなかったこともあって、あえて中辛を選んでいた。もし、カレーが苦手だと言われたら最悪泊まっている間に自分で食べるしかないなと、今さらながら嫌な想像に苦笑する。
 淡々と調理を進めながらも、鳴河の隣で野菜の下処理などを手伝っていたことを思い出していた。
 レストランのキッチンに移った鳴河が、腕を磨きたいから練習台になってもらいたいと言ってきたのは、水瀬が大学三年の終わり頃のことだった。
 きっかけを作った張本人ということもあって、水瀬は断り切れずにいた。それにあの頃は、元彼である同級生に騙されお金を搾取されていた時期と重なっている。
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