36 / 121
36
しおりを挟む「別に疑ったわけじゃないんだ。ただ、せっかくの君の休みを潰してまで、俺の好きなことに付き合わせるのはどうなのかと思っただけだ」
「そんなこと言ったら、僕も同じでしょ。久賀さんの休みを僕が独占しているんですから」
水瀬はやや呆れ気味に口にした。久賀は遠慮が過ぎるのだ。これではいつか、別の意味で破局を迎えてしまう。
「それは違う。俺は君といれて充実しているんだ」
「僕だって同じ気持ちですよ。久賀さんといれて、良い休日だと思ってますから」
落ちていた久賀の視線が、水瀬に向けられる。探ると言うより、何処か不安を滲ませていた。そんな弱気な久賀は、珍しくともあまり見たくはない。
「そろそろ行きましょうか」
水瀬が立ち上がると、久賀も立ち上がった。
支払うと言った久賀を制して、ここは水瀬が持つ。つい先日に、良いホテルに泊まらせて貰ったばかりなのだ。
「今日は僕が奢ります。こないだのお礼です」
案の定渋る久賀に、「それなら来週は会いませんよ」と告げる。
唖然とする久賀に、水瀬はここぞとばかりに続ける。
「これじゃあ上司と部下じゃないですか。僕はプライベートではちゃんと恋人でいたいんです。久賀さんにばかり負担を強い続けるのは辛いって、思うことはおかしいことですか?」
久賀はしばし黙り込むも、分かったと息を吐く。
「どうも君のことになると、俺は少し過剰になってしまう。ブレーキをかけてくれて助かる」
「そうですね。もし、僕が結婚詐欺師とかだったら、久賀さんは骨の髄までしゃぶられて、無一文になってるかもしれませんね」
冗談めかしに水瀬は口にするも、内心は久賀の過保護っぷりは目に余るものがあった。
「そうだな……でも、君にだったら良いかもしれない」
「甘いですね、久賀さん。柏原が聞いたら、卒倒するかもしれませんよ」
柏原だけでなく、他の社員が知っても卒倒するはずだ。
0
あなたにおすすめの小説
禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる