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しおりを挟む「水瀬さんが先輩で良かったって、思ってるんですよ」
真剣な面持ちで告げられ、水瀬は腰の据わりが悪くなる。
「どうしたの急に……ほら、早く頼まないと休憩時間なくなっちゃうよ」
そう促すと、やっと柏原が慌てたようにメニューに視線を走らせる。
お互いに注文を済ませ、しばらくは仕事の話で意見を交わし合った。
食事が運ばれてくると、互いにフォークを手に取る。柏原の言うとおり、濃厚なクリームが絶品な一皿だった。
水瀬が絶賛すると、柏原が嬉しそうな顔をする。
「他にもメニューが色々あるんですけど、パスタが美味しいんですよ。このかにクリームパスタも美味しいんですよ」
柏原の手元にあるオレンジがかった色合いのパスタも、上にカニが乗っていて美味しそうだった。
「良かったら、また来ませんか? 今度は是非、他のも食べてみてください」
柏原の誘いに、水瀬は笑顔で頷く。
終始和やかなまま食事をしていると、ふいに柏原がそういえばと言ってフォークを置く。
「課長なんですけど――」
周囲を見渡し、声を潜める柏原に水瀬は眉を寄せる。
「結婚するんですかね?」
突拍子もない発言に、水瀬はフォークを皿に落とす。嫌な音が響き、水瀬は慌てて「ごめん」と謝る。
「驚くのも無理はないですよね。もしかしたら、僕の勘違いかもしれないんで、ここだけの話にしてください」
そう前置きしてから柏原は、動揺する水瀬に向かって続けた。
「先週の日曜日なんですけど――」
それから柏原は大きな駅が近くにある通りを口にする。
「彼女と買い物がてらそこに行ったんです。そしたらビルから女性と一緒に課長が出てきたんです。びっくりして遠くから見てたら、一階にあるディスプレイを二人で見てたんです」
コーヒーを一口飲むと、柏原が自分を落ち着かせようとしてか息を吐く。
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