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しおりを挟む覚悟はしていたつもりだが、これで最後だと思うと気持ちが沈むのは否めなかった。
テレビをつければ気を紛らわせそうだったが、妙に落ち着かなくて水瀬はボトルを弄んだ。
ふいにベッドが沈み、水瀬ははっとして隣を見る。いつの間にか鳴河が戻ってきていて、水瀬の隣に腰掛けていた。水瀬とは違い、バスローブ姿ではなく、ワイシャツにスラックス姿だった。
疑問を訴える間もなく、鳴河の指が水瀬の頬を捉える。
「理玖さん」
顔を近づけられ、水瀬はそれを拒むことなく目を閉じる。
「理玖さん……好きです」
布団に押し倒されながら囁かれ、水瀬は何度も降り注ぐキスに喘ぐ。
「どうしても……俺とやり直してはくれませんか?」
すぐ間近で問う鳴河に、水瀬は視線を逸らす。気持ちが揺らぎそうになるのを押さえ、水瀬は首を縦に振った。
「……そうですか」
鳴河が諦めを示すように息を吐く。バスローブの紐が解かれ、熱い掌が身体を這う。胸を締め付けるような感情の中に、少しだけ欲望の灯が灯る。
重ねた唇を割られ、舌先が滑り込んでくる。濡れた甘い感覚に、水瀬は鳴河の首に腕を回す。失恋したばかりですぐに、違う男に縋ろうとする自身の欲望に嫌悪はあった。それでも寂しさや後悔を少しでも浄化するには、今はこれしかなかった。
唇を離した鳴河は水瀬の首や鎖骨に、何度も唇を寄せる。小さな痛みを何度も感じ、痕を残されているのだと分かった。
自身の証を残そうとする鳴河に愛おしさすら覚え、水瀬は止めることはしなかった。
「ぁっ……なるかわっ」
いつもより丹念な愛撫に、水瀬は思わず鳴河の腕に触れる。直接的な刺激を避けるような鳴河に、もどかしさを感じていた。
鳴河が顔を上げる。欲に濡れた鳴河の目に、水瀬が縋りそうになったとき――テーブルに乗せていたスマホが振動する音が部屋に響く。
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