28 / 29
#28
しおりを挟む
……黒歴史だ。それも殿堂入りレベル。
もし一緒に居たのがみっちーだけだったら、明日からは何も無かったように接してくれるだろうし、七海ちゃんは……まぁ、どうでもいい事は忘れてくれそう。問題は颯太だ。あいつなら絶対後でネタにして笑ってくる。
「マジでやらかした……ありえる?いや、ありえなーいでしょ!」
自分でもよく分からない一発ギャグを決めながら(滑ってる気がするけど)、また深い溜息を吐く。
ファミレスを出て横断歩道を渡ったら、小さな公園が見えたから来てしまった訳なんだけど。誰も座っていなかったブランコに腰掛け、足を着いたまま小さく揺れていると、何だか家出してきた子どもみたいな気持ちになってきた。
ハンバーグステーキ代でだいぶお金使っちゃったから、もう帰りの交通費しか残ってない。でも今はまだ家に帰りたくないし、何か別の事して今の気持ちを晴らしたい気分。
「……冷たっ!」
ぼんやりしていた時、何かがポツっと頬に落ちてきた……水?
空を見上げると、真っ黒い雲が広がっていた。
これは直ぐに一雨来そうだな……でも近くにある商業施設はさっきのファミレスだけだし、公園内にある藤棚で雨宿りするしかないか。
ブランコを降りて藤棚の下に行った途端、バケツをひっくり返したように突然土砂降りの雨が降ってきた。そういえば私、傘持ってないじゃん……どうやって帰ろう。夜まで降り続いたら帰れなくなる。
地面が濡れていくのを眺めていると、見慣れた靴が視界に入ってきた。
「……何してんの」
顔を上げると、そこには髪を少し濡らしたけいちゃんが息を切らして立っていた。藤棚に入ってきて私の隣に来るという事は、彼も私と同様に雨に降られたらしい。
「けいちゃんの方こそ、部活はどうしたの?」
「今日はミーティングだけだったから早く終わった。お前はみっちーとファミレス行ったと思ってたけど」
けいちゃんって、カバンからタオルを取り出して髪を拭くだけでも絵になるなぁ……やっぱりイケメンは最強だわ。
「行ったよ。ハンバーグステーキ食べながら、みんなに私の病み期を話した」
「太るぞ」
「余計なお世話ですぅー」
ていうか、病み期についてはスルーですか。泣くぞ。
「……濡れてないんだな」
「は?」
「ずっと此処に居たのか」
「……さっきまでブランコ漕いでた」
なんか、まともにけいちゃんと話すのが久しぶりすぎて狂うな……いつも怒られてたし、貞子スタンプ送られたりするし……原因はいつも私か、反省しよ。
「公園で孤独になるより、俺らの事頼った方がいいと思うけどな」
「誰がぼっちやねん」
「んな事言ってねーだろ」
「孤独=ぼっちだもん!」
「……それ友達いない奴が言うセリフだぞ。とにかく、そろそろ雨弱くなってきたから帰るぞ」
ごめんなさいね、私は非リアなんですよ。貴方はリア充なのか知りませんけど。雨止むまで待てば良いのに、アウトドア派にとって小雨と曇りと晴れは同じ気象なんですかね。
「私濡れたくないから残るよ」
「タオルでも被っとけ。行くぞ」
「ちょ、おわっ!?」
イスラム教の女性がしてるみたいにタオルを巻かれたかと思ったら、腕を引かれてそのまま走り出した。
いやちょっと待て!!!県で1番の瞬足と50m走クラス最下位が、一緒に走っちゃダメだと思うんですけど!?私を引きずる気ですか!?
「遅いな、担ぐぞ」
……はい???
フワッという感覚と共に、けいちゃんの顔が近くなった。えーと、これは俗に言う、お姫様抱っこってやつですね……やだもう恥ずかしすぎて死にそう。
「お、下ろして!頑張って走りますから!」
「俺より50m走5秒も遅い奴と、雨の中ゆっくり走ってられるか」
「……ご最もです」
前言撤回、ファミレスでの出来事はまだ可愛かったわ。こっちの方が黒歴史だし余裕で殿堂入りする。
……まさか人生初のお姫様抱っこをけいちゃんにされるとは。
駅の近くに来た時、人気が無い路地裏で下ろされた。
「……ありがとう、ございました」
「どういたしまして」
上の方に雨避けがあるから此処に居ても濡れる心配は無いけど、けいちゃんの服は既にびしょ濡れだった。私はお姫様抱っこされてたからセーフですね。
「えっと……タオル洗って返すね」
「別に返さなくても良いけど。100均だし」
「じゃあ100円払います」
「いらない。そこのロータリーから駅まで雨避けあるから、全力疾走で行けば殆ど濡れないと思う。まぁ愛華の事だし多少は濡れると思うけど」
「頑張れば濡れないし……」
「俺は向こうでバスに乗るから。じゃあな、風邪引くなよ」
私にそう言いながら、けいちゃんは路地裏を出て走って行った。遠くで開かれた黒い傘の下で、肌が透けた白いシャツが色っぽく見えた。イケメンって濡れるとさらにイケメンだよなぁ。これが「水も滴る良い男」か……って、あれ?
「なんで傘持ってたのに、一緒に濡れて帰ったんだろう……?」
もし一緒に居たのがみっちーだけだったら、明日からは何も無かったように接してくれるだろうし、七海ちゃんは……まぁ、どうでもいい事は忘れてくれそう。問題は颯太だ。あいつなら絶対後でネタにして笑ってくる。
「マジでやらかした……ありえる?いや、ありえなーいでしょ!」
自分でもよく分からない一発ギャグを決めながら(滑ってる気がするけど)、また深い溜息を吐く。
ファミレスを出て横断歩道を渡ったら、小さな公園が見えたから来てしまった訳なんだけど。誰も座っていなかったブランコに腰掛け、足を着いたまま小さく揺れていると、何だか家出してきた子どもみたいな気持ちになってきた。
ハンバーグステーキ代でだいぶお金使っちゃったから、もう帰りの交通費しか残ってない。でも今はまだ家に帰りたくないし、何か別の事して今の気持ちを晴らしたい気分。
「……冷たっ!」
ぼんやりしていた時、何かがポツっと頬に落ちてきた……水?
空を見上げると、真っ黒い雲が広がっていた。
これは直ぐに一雨来そうだな……でも近くにある商業施設はさっきのファミレスだけだし、公園内にある藤棚で雨宿りするしかないか。
ブランコを降りて藤棚の下に行った途端、バケツをひっくり返したように突然土砂降りの雨が降ってきた。そういえば私、傘持ってないじゃん……どうやって帰ろう。夜まで降り続いたら帰れなくなる。
地面が濡れていくのを眺めていると、見慣れた靴が視界に入ってきた。
「……何してんの」
顔を上げると、そこには髪を少し濡らしたけいちゃんが息を切らして立っていた。藤棚に入ってきて私の隣に来るという事は、彼も私と同様に雨に降られたらしい。
「けいちゃんの方こそ、部活はどうしたの?」
「今日はミーティングだけだったから早く終わった。お前はみっちーとファミレス行ったと思ってたけど」
けいちゃんって、カバンからタオルを取り出して髪を拭くだけでも絵になるなぁ……やっぱりイケメンは最強だわ。
「行ったよ。ハンバーグステーキ食べながら、みんなに私の病み期を話した」
「太るぞ」
「余計なお世話ですぅー」
ていうか、病み期についてはスルーですか。泣くぞ。
「……濡れてないんだな」
「は?」
「ずっと此処に居たのか」
「……さっきまでブランコ漕いでた」
なんか、まともにけいちゃんと話すのが久しぶりすぎて狂うな……いつも怒られてたし、貞子スタンプ送られたりするし……原因はいつも私か、反省しよ。
「公園で孤独になるより、俺らの事頼った方がいいと思うけどな」
「誰がぼっちやねん」
「んな事言ってねーだろ」
「孤独=ぼっちだもん!」
「……それ友達いない奴が言うセリフだぞ。とにかく、そろそろ雨弱くなってきたから帰るぞ」
ごめんなさいね、私は非リアなんですよ。貴方はリア充なのか知りませんけど。雨止むまで待てば良いのに、アウトドア派にとって小雨と曇りと晴れは同じ気象なんですかね。
「私濡れたくないから残るよ」
「タオルでも被っとけ。行くぞ」
「ちょ、おわっ!?」
イスラム教の女性がしてるみたいにタオルを巻かれたかと思ったら、腕を引かれてそのまま走り出した。
いやちょっと待て!!!県で1番の瞬足と50m走クラス最下位が、一緒に走っちゃダメだと思うんですけど!?私を引きずる気ですか!?
「遅いな、担ぐぞ」
……はい???
フワッという感覚と共に、けいちゃんの顔が近くなった。えーと、これは俗に言う、お姫様抱っこってやつですね……やだもう恥ずかしすぎて死にそう。
「お、下ろして!頑張って走りますから!」
「俺より50m走5秒も遅い奴と、雨の中ゆっくり走ってられるか」
「……ご最もです」
前言撤回、ファミレスでの出来事はまだ可愛かったわ。こっちの方が黒歴史だし余裕で殿堂入りする。
……まさか人生初のお姫様抱っこをけいちゃんにされるとは。
駅の近くに来た時、人気が無い路地裏で下ろされた。
「……ありがとう、ございました」
「どういたしまして」
上の方に雨避けがあるから此処に居ても濡れる心配は無いけど、けいちゃんの服は既にびしょ濡れだった。私はお姫様抱っこされてたからセーフですね。
「えっと……タオル洗って返すね」
「別に返さなくても良いけど。100均だし」
「じゃあ100円払います」
「いらない。そこのロータリーから駅まで雨避けあるから、全力疾走で行けば殆ど濡れないと思う。まぁ愛華の事だし多少は濡れると思うけど」
「頑張れば濡れないし……」
「俺は向こうでバスに乗るから。じゃあな、風邪引くなよ」
私にそう言いながら、けいちゃんは路地裏を出て走って行った。遠くで開かれた黒い傘の下で、肌が透けた白いシャツが色っぽく見えた。イケメンって濡れるとさらにイケメンだよなぁ。これが「水も滴る良い男」か……って、あれ?
「なんで傘持ってたのに、一緒に濡れて帰ったんだろう……?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる