やり直しの神子は長生きしたい

kozzy

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古の神殿都市 ②

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ウル様が見つけたそこは神殿の裏手にあたる場所で…そこには泉があった。
神子に禊はお決まりの行事。泉があるのは想定内だ。

「見て。泉の水が外に伸びてる」
「ウルリッヒ様、先ほどの広場に貯水槽がありました。恐らく清浄な水として飲用していたのではないでしょうか」

なるほど。湧き出る泉はみんなのもの。古代は人々に優しい…。

よし!水源確保ー!

その泉の向こうには何やら柵で囲った一帯がある…

「これは…霊廟?」
「王城で言う墓所のようなものか」

「おそらく病で亡くなった人々の魂をここで鎮めたのでしょう…」

その場にいた傭兵、騎士、全員が一瞬怯むが、何千年も前の病原菌なんか漂わないってば!ガタイ良いくせに気の小さい…

そこへいくと静かに祈りを捧げる本物の神子と現役学生はさすがだ。(この国の学生は修道士と大差ないからね)

「オスヴァルト様こちらへ」

移動を促す騎士の声に短い土の階段をあがると、そこにあったのは古の王?君主が住んでたらしい設えの建造物。宮殿とまでは言えない規模だが、壁や柱に掘られた見事な装飾からして見るからに貴人の住まいだ。

「見てくださいオスヴァルト様。壷や陶器がそのまま残っています」
「エド、それは使えそうか」
「ええ、問題ありません」

「すごく立派…ここがオスビーの屋敷だね」
「ウーリ、では君の住居もここだ」
「んー…一緒に住むの?」
「嫌か?」
「ううんイヤじゃない」
「では共に。私たちは運命共同体だと言っただろう?」

同居決定。
二か月宿の部屋を共にした僕たちには特別な絆が芽生えている。今さら別々って言うのもなんかちょっと寂しいしね。

「ねえエ、ウルリッヒ様」モジ
「どうしたのエミル」テレ

お互いなかなか慣れないなあ…

「さっき丘の斜面に釜戸のある家を見つけたよ。あそこに住んでもいい?」

「うーん…オスビーの従者エドと僕の世話係エミルはここに住まないと。調薬もあるし」
「…パン屋はダメ?」
「両親にもここでメイド長と執事見習いお願いするつもりだったんだけど」
「そうなの⁉ 」
「二人は元々メイドとフットマンだもん。使用人の長は僕が安心できる人、そうでしょ?」

男爵が寄越してくれた使用人たちに不満は無いし信用はしているが…ここは神子特権を最大限に使わせてもらう!

「ふふ、なら良かった」
「釜戸の家はエミル家の別宅にしよう」
「いいの?」
「もちろん。ねえエミル。落ち着いたらそこでパン焼こうか?広場で売ろう!二人で!」
「わぁやりたい!」

神殿都市最初の商業施設はエミルのパン屋に決定!



「オスヴァルト様、ウルリッヒ様。こちらの建物もご覧ください」

当主の住まいらしき建物の横には飾り気のない大きな建物がある。整然とした柱廊をもつ四角い建物にずらりと並んだ扉。
二階建てのその建物は一階中央に大きな入口があり、その両翼と二階は外観を見るに全て独立した部屋に思える。つまり集合住宅?

門柱に掘られた文字。残念ながら僕たちには読めない古代文字…
ここで活躍するのが、そうだね、エドヴィンだね。

「お任せください。ええと…あ!」
「なんて書いてあったの?」

「…『神子の館』…と」

神子の館?だから何ってことでもないけど…もしかして古代の神子って大勢いたの?

「私が調べた文献によれば古代の神子は奇跡の具現者ではなかったと記されていました」
「え!そうなの?」

「ええ。奇跡の神子が発現したのは東の地へ移ってからだと。古の地で神子の務めとは神の世話人であったのですよ」
「修道士のようなものか…」

神…王…西の伝承において〝王”という名称はまだ使われていない。そこには常に〝君主”と記されている。では神子が世話したのは何者だったのだろうか…

気がつけば何かを考えている様子のウル様。

「エミル…何か知ってるの?」
「え、ううん。ただナンナーの当主が「ナンナーの祖先が神から西の地を奪った」って…」

ナンナーは神子の系譜。つまり古の神子。古の地で君主…神?の身のまわりを世話していたなら…つまりどういうことだ?

「ウーリ、その言葉の意味だが…私の考えではナンナーの祖先があの病に関係したと言うことではないか」
「関係…」

「ナンナーの祖先が最初の発病者だとか、そういうことでしょうか…」

エドは思案を巡らせ始めるが、それを制止したのはオスヴァルトだ。

「エド、ここは人目がある。それはまた夜にでも話し合おう」
「畏まりました」




あとは倉庫のような小さな丸い建物が幾つか。別の場所に見つけた家畜小屋を厩舎にすることにしてざっくり確認はおわり。

騎士たち、そして貴公子やその従者、護衛たちはみな貴族、または元貴族だ。さすがに丘の家屋では厳しすぎるため臣下としてこの部屋を割り当てることにした。中央には共同の広い部屋もあり、鉄製の調理器具が残された厨房までも備えている。ここは良い宿舎だ。なんて幸運。

そして傭兵と一般使用人の人たちだが、一部神殿に常駐し残りは斜面の民家を割り当てた。清掃修繕は各自にお任せ、拡張自由だ。

その後数日間かけて発見された貧民は何と十数名。彼らにも一番小さな家々を与え正式に農奴契約をすることになった。

「痩せ細った彼らで、草木の枯れる暑期をおそらく越せなかっただろう。病どころか飢えによって」
「早く太ってくれないかな。労働力は一人でも惜しい」

オスヴァルトがこっそり受けていた報告では、ところどころで何体もの白骨を見つけたとか。ゾォッ…
彼は神官長と相談して、使われていない一画に白骨を埋葬し丁寧に弔ったようだ。



足りないものは山ほどある。
でも取り敢えず住む場所だけは無事確保できた。
ここからもっとも近い、中央部を治めるグレーデン伯爵の弟さんと事前に繋がりができたのは実に幸先良い。
物資の調達は彼を通して行うことになる。まずは農具と工具からだ。

「しばらく食事は配給制にするとして…狩りとか出来るかな?漁はどうだろう?どこかから海に出れそう?」
「隅々まで調査するには時間がかかる。焦るなウーリ」

「考えることが山済みで…」
「それを考えるのは私の仕事だ。ははは、やりがいがある。胸が躍るよ」


全然快適でない瓦礫まみれの『朽ちた神殿』。
それでもオスヴァルトの表情はあの青い海を照らす太陽のように燦々と輝いていた。





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