チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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78 彼の心配

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朝一番で告げられるのは子爵の訪問。朝の散歩の途中らしい。優雅だな…。
でもその手には、全然優雅じゃない物を携えている。

「子爵、何ですかそれ?」
「ブッケが君の魔剣を奪ったと聞いたのでね…、これはその代わりにと。空いてしまった剣置き台が寂しかろうと思ってね。…これまでの礼の代わりになるとは思わぬが、気持ちばかりだ…。」

「へぇ~、剣かぁ…。鑑定結果は?」
「大公の商会に入って来たのだ。紛い物ではないよ。鑑定もまごうことなき〝救世の剣”とでた。」

「救世の剣…」

「息子を救ってくれた君にぴったりだと思ってね。どうかね。貰ってくれるかね」
「喜んで!」

そうそう。あの魔剣の台には何か置こうと思ってたんだよね。気が利くな、子爵。
そう言えば元々は友人の多い気の良い人だと言ってたっけ。こういうマメなところが人好きしたんだろう。なら、友人も戻っているかもしれないな。なんとなく子爵には憎めない愛嬌がある。…ブッケ教授とは違う意味で…。




でもまぁ、今ここで出来ることはもうなさそうだ。全てじゃないけど謎の大筋は掴めた気がする。
そうと決まればテリトリーに戻って、僕のブレーンたちと対策会議だ。

方針は決まった。王家なんかにこれ以上好きにさせるものか。
ユーリの血清はユーリが作る。制約だと?それを今から考えるんだ!

だけど念のため、もう一つ保険をかけておこうかな。
みんなスキルを変化させた。WEB小説の毒公爵だって変化させた。より凶悪に。
ならもっとこう、ユーリの毒だって良い感じに変化をさせれば…。そうだよ!薬は毒に、毒は薬に。毒薬変じて薬となる…。

ユーリの毒は、『毒薬変じて薬となる』んだ!


「ねぇユーリ、リッターホルムに帰ったらユーリもスキルの特訓をしよう。」

「特訓?自制の訓練でなく?」

「違う。毒を薬にするイメトレ。ユーリのスキルが変われば…、王家に献上しなくても良くなるよ、きっと。制約も外れるかも。」

「出来るだろうか…、そんな事。」

「スキルは…、思いの強さで変化する。常識で考えられ無いほどの強い強い思いがあればきっと!」

「強い想い…。そうだね、アッシュが手伝ってくれればきっと…。」

「手伝い…。い、イメトレに、…必要かな?手伝い…」

「必要だよ。アッシュだけが私に強い想いを抱かせてくれる。」
「どんな?」

「…口では言い難いな…。私もいつまでも子供ではないと言うことだよ」


イメトレに手伝い…、ユーリは何をイメトレする気だろう…。子供ではない…?、想像がつかないな。


とはいえ一筋縄でいかないことは分かっている。ユーリのスキルはただのスキルじゃない。それは呪われたスキルだから…。
それでも諦めずやれることはやっておくんだ。僕とユーリとゆかいな仲間、みんなの明るい未来のために。

国の滅亡を防ぎ、リッターホルム公爵領を、本物の桃源郷にするために!






リッターホルムに戻る、そう告げに大公の部屋へと向かう途中、家令のベイルマンさんを見かけふと足を止め問いかけてみる。


「ねぇベイルマンさん。大公はユーリに対する高位貴族の態度、何とも言わないの?大公は偉い人でしょ?」

「旦那様、大公閣下は社交界からはすでに離れておりますしね。それに…、」
「それに?」

「彼らも初めからああではなかったのです。先代の公爵様、ユーリウス様のおじい様の代までは敬遠気味ながらも最低限の礼は尽くしておいででした。当時リッターホルムで行われていた年に一度の狩猟の会。それにも皆さま、慇懃無礼ではありましたが参加しておみえでしたよ。」

もちろん知ってる。カルロッタ公爵令嬢が、…マテアスと出会った運命の日だ。

「ですがカルロッタ様が気を乱されたことと、その…ユーリウス様も以前は少々…、マテアス殿が社交界で愚痴をこぼされるために皆から誤解されておりましたし、ユーリウス様ご本人が人前に出ぬ以上、多少訝しがられるのは致し方なしとお思いのようですな。」


マテアス…、お前が余計な真似をするばっかりに…。

でもそうか。高位貴族のユーリを見る目、それを大公は知らないんだな。社交界を離れて久しいし、大公が一緒の時はみんな大公閣下の顔色を窺って取り繕ってたし。

ならば進言せねばなるまい。





「と、言う訳でね、社交界はユーリに優しくないと思うんだ」

「…ううむ、王家がそのように足元を見ておったとは…。ユーリウスに優しくない、か。だがそれは彼らのせいだけではなかろう。彼らも騙されておると言うことであろう。彼らは家門を、領を存続させるため必死になっておるのだ。」

「…まあね。それを言ったら諸悪の根源は王家だ…。」

「私はもっとも恵まれておるのかもしれぬ。毒スキルに連なる家門として優遇され、そしてその負の部分は弟がすべて引き受けてくれた…。私は常に後ろ暗さを抱えておった。弟ジョナスに、どう詫びれば、報いればいいのかと。だからこそユーリウスの為ならなんでもしよう。だが古き家門の彼らは腹を割って話せる友人でもあるのだ。彼らは国のあり方を憂う、とても真摯な貴族なのだよ」

国を憂う真摯な貴族…、だから王家に疎まれているのか。この国も末期だな。
でもそうか、…そうだな。彼らだって被害者なんだ。呪いと、そして王家からの…。なんだ、立場は同じじゃないか。


「わかった。じゃぁ…もし大公にその病の件で相談を持ち掛けてくるものが居たら直接リッターホルムに来るよう言って。向き合って話して、誤解を解いてくれるなら…、考えてもいい。大公に免じてね。」



都合よく搾取されるつもりは無い。交換条件、それはユーリの名誉回復。これは譲れない。絶対にだ!









「ねぇアッシュ、君はいろいろ陰で動いているようだけど、危険な真似はやめて欲しい。」

ガタガタ揺れる馬車の車内でユーリがそのキレイな顔を曇らせる。
心配性なユーリ。
でも心配には及ばない。僕にはWEB小説という攻略ガイドがあるからね。…それは言えないけど。


「危険なんかない。ユーリ、大丈夫だよ。マテアスが僕を狙ったのは、ユーリの周りを飛ぶ羽虫を…、例えが悪いな、将を射んと欲すれば先ず馬をってやつで、僕になにかあるって気付いたわけじゃない。王家だって、もし僕の存在を知ったって、ユーリが寂しさのあまり側においてる農家の子としか思わないよ。」

「そう?だけど気を付けて。聖王は…本当に怖い方だ。そして手癖の悪い王子の事も、いいね、決して侮ってはいけないよ。」




ふふん。侮ることになるのはどちらかな。きっと王家は僕なんか歯牙にもかけない。

そこにきっと、勝機がある。




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