チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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86 彼と出発前夜

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出発を明日に控え、僕はいつまでも作戦を練る。

王宮…、王宮か。

WEB小説での王宮の場面、勇者の冒険と毒公爵の苦悩の間にチョイチョイ挟まれていたそれ。

第一シーンは勇者の召喚。
国の王様、小説では聖王とは言われてなかったが、その王様の50歳の誕生日。王宮にはいろんな道化師たちが呼ばれていた。王様を楽しませるために。

その道化師たちの一団に紛れてやってきた得体の知れない老婆。その老婆は王様に一枚の羊皮紙をさしだした。
「わたしは占い師、王にとって大切な予言を授けよう。そなたには今から災いが降りかかる。それを防ぎたいのなら異世界より勇者を呼び寄せ、伝承に従い旅立たせるのじゃ」そう言って召喚陣の描かれた羊皮紙を手渡した。
下らぬ戯言だと一笑に付され、老婆は最後まで話すことを許されず役人の手で城外へと放り出された。
だけど王様だけはその羊皮紙をこっそりしまい込み、誰も見ていない王の私室で陣の中心に血を一滴落とし発動させたのだ。
だけどその場には何も現れず…、怒りと羞恥で王は私室をぶっ壊した…。

って、くだり。小説のかなり冒頭、はじめて王様が登場するシーンだ。
その容姿などに言及はなかったがやたらと豪華な衣装は詳細に記されていた。投稿者にアパレル関係者でもいたんだろうか。
私室であーでもないこーでもないと、衣装にケチをつけまくる王様の様子といい、召喚に失敗して(と、思い込み)やっぱり私室でキレまくってる時点でお察しってやつだ。二面性のある王様だなと思ったのを覚えている。
今考えればなるほどだが、当時は勇者もののファンタジーでは定番としか思わなかったな。

そして次に登場するのは言わずと知れた、石板のシーン。
学院で発見された石板。王様は王宮の知識人、博士に命じその石板を解明させる。まさかブッケ教授だとは思わなかったが。

そして解き明かされた石板。

人であり人ならざる者
狭き世界の者を4人集めよ
彼らは助言を与えるだろう
深淵の淵には不死が寄り添う
望むものよ 不死を捉えよ

…そういえば今世のブッケ教授はどう訳したんだろう?聞いてなかったな。今度確認しなくちゃな。


そして三度目の登場はわりと早い。
学院で発見された古文書。その古文書を見つけた生徒Aを勇者と確信し、生徒Aを王宮へ…、あっ!そうか分かった!
何故生徒Aが自分を勇者と思ったか、何故王様が生徒Aを召喚した勇者と信じて疑わなかったか、それは…

生徒Aが躊躇なくその古文書を読んだからだ!

だって…、だって…、

あの古文書には、日本語でルビがふってある…。
古文書の中身が投稿がされた時、マメな投稿者は古代文字を創作した。それも50音全部。だけどそのままじゃ読めないからルビがふってあったのだ。

日本からの召喚者にしかあれは読めない…。その古文書と勇者の読み解いた内容、それが真実であるかどうか確認したのが王家付きの官吏、鑑定の魔法を使える…、あ、あれはもしかしてショーグレン子爵かっ⁉そうだ!子爵は宮廷貴族だったじゃないか!
うっそだろ…、ブッケ教授に続いて子爵もWEB小説に出てたなんて…、モブだけど。

び、びっくりしたけどそれはまぁいい。
とにかく、だから小説の王様は彼を勇者と信じ、石板を見せ旅立たせたんだ…。


…あー…、けど今世の召喚者、少し残念な感じだしな。自分から転移者だとか言いまくって…、よくあんなチャラいの信じたよ。普通あり得ないでしょ…。
あれを真に受けるなら聖王も相当残念ってことだ。そうかもな。サル山の大将であり続けた裸の王様は自分を錬磨することをやめて久しい。

あれ?もしかして…勝機はあるって思ってたけど、むしろ勝機しかなかったりする?


………、ふっ。王への対面が楽しみでしかないな…。






「ユーリ、もう寝ちゃった?ごめんね、遅くなって」


いつまでも仕事部屋で悶々としていた僕を、ユーリは律儀に待ってくれている。健気だ…。

「寝る訳無いよ。君が居ないのにどうやって眠れって?」


染み付いたトラウマって恐ろしいな。ユーリにはいつまでたっても抱き枕が必要なんだから…未だ僕にしがみつかないと眠れないユーリ。いくら身体が大きくなったと言ったってユーリが大人になる日は…まだまだ先が長いな…。


「そうだユーリ、王宮で王様に解毒剤の事聞かれたら僕に丸投げしてね」

「まさかっ!とんでもない事だ。駄目だ、そんな」

「ううん。どうせ聖王はそれを知ろうとするし、どのみちいつかは僕にたどり着く。再度呼び出し食らっても面倒だしそのほうが早い。それに…」

「それに、なに?」

浮かない顔のユーリ…。きっと僕を心配してるんだろう。まったく優しすぎるのも考えものだ。


「ユーリは僕が守るって言ったでしょ。王家の呪縛から解放するって。これはその第一歩だ。王家程度どうにかできなくて古代の呪いがどうにかできるものか。大丈夫だって。シュミレーションならもう出来た。利回りリターンの計算もすんでる。僕は用意周到な男だよ?ね、ユーリ、大船に御乗船はいかがですか?」

「…私は君に守られてばかりだ。君を守れる大きな男になりたいと思っているのに…」

「ユーリ…」

男の子だもんね。守られてばかりは情けないとか、そんなこと思っちゃうのも仕方ないか。そういうお年頃ってやつ。

けど王城に行く前から落ち込まれても困っちゃうな。よし、こういう時は一人前の大人として役目を与えておくに限る。前世で母に渡した『思春期の取り扱い説明書』にも、確かそう書いてあったし。


「ユーリ、この世には持ちつ持たれつって言葉があってね。王家に関しては僕がユーリを僕が守る。だからユーリはそれ以外のことで僕を守って。そう、例えば猛々しい変質者(ブッケ教授)から僕を守ったり、羊の皮を被った獣(ナッツ)から僕を守ったり…。なんかね、時々身の危険を感じるの。ユーリなら僕を守れるよね?」

「いつの間にそんな…、誰だ!私のアッシュに。君は私が守るとも。ああもちろんだ!」


しまった。これ絶対名前言えないやつ…。





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