チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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104 彼と夏至祭

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「居た居た、母さん、あっ、シルバおばさん、それにチルダおばさんも。わぁ、会いたかったー。元気?また太ったんじゃない?あ痛!」

昨日に続き今日も広場へとやって来た僕達。せっかくの夏至祭。見てるだけよりユーリも参加させてあげたくて…、それなら準備からの方がいいでしょ?だから一緒に柏葉の冠を編もうと張り切ってやってきたのは大きなターフの下。日差しが強すぎるとしなっちゃうからね。
それにしても相変わらず母さんのげんこつは痛い…。


「アッシュ!余計なこと言うんじゃないわよ!」

「アッシュ坊は相変わらずだねぇ。まぁ口の減らない。」
「あんたがいつまでもチビだから、おばさんが代わりに大きくなってあげたのよ。」

「チッ、チビじゃない!僕にはまだ伸びしろがあるんだから!」
「なんの伸びしろよ?母さんはとっくに諦めたわ。それより準備手伝ってくれるんでしょ?」

腕組して呆れる母さんと憤慨する僕。くすくすとお上品なユーリはアレクシさんと二人、珍しそうに冠作りを眺めている。


「冠を編む?そりゃぁいいけど公爵様が編むのかい?アッシュ坊、あんた…」
「だって…」

「いい考えじゃないの!準備から参加した方が楽しめるってもんよ。じゃぁそこでみんなに混じってお座りよ。」


苦笑いのアレクシさん。ユーリは興味津々といった感じでとても微笑ましい。さすがにこの村の威勢のいいご婦人方には苦手もくそも無いらしい。あ…もしや女性としてカウントをしてな…ゲホンゲホン…


この村の人口は100人足らず。内成人してるのは70人くらいだ。リッターホルムの荘園が500人強って思うと約8割か。もっともリッターホルムの人数、領都はカウントしてないんだけど。
大小80個の冠。あと残りは3分の1。明日までなら楽勝だな。

この時期ほとんどの人手は畑にとられてしまう。草木のぐんぐん育つこの季節、野菜は間引きを、果実は摘果をするのが『有機農法 コツと裏技』あれで学んだ大事なコツだ。それをどれほど説明してもみんな納得しなくって…、コツコツと説得し続けたのもいい思い出だ。今ではみんなコツコツと地味な作業でも手を抜いたりしない。

納屋にかかりきりの兄さんの分まで父さんは一日中畑に居る。それでも疲れないんだから無限体力スキル様様だ。


それにしてもアレクシさんってば葉っぱぐしゃぐしゃじゃないか。ユーリは?…ちっとも進んでない。

「ユーリ、ここはこうするんだよ。」
「なかなか難しいね。こうかい?」
「うまいうまい!」


「これはまた、仲の良い事だね」
「ほんとにねぇ」


仲良し…、もちろんだ。僕とユーリは誰よりも仲良し…。そうだ!いい事思いついた!
御神木に朝露を採りに行く儀式。あれを僕とユーリで行かせてもらえないだろうか。どうせ御神木には行こうと思ってたんだし…、領主権限で強引に立ち入るよりも堂々と行けるならそのほうが良いに決まってる。

御神木の周辺。実はあそこは禁制区になっていて祭事の時しか立ち入れないのだ。といってもロープが張られる訳でも、罰がある訳でも無い。全ては村民の良心に委ねられる。ちなみに僕はコソコソ出入りしていた。何故ならそこでメープルを作っていたからだ。良心?あるに決まってる。きっとどこかには。


「ねぇ母さんおばさん。お祭りの朝露の祈り、僕とユーリでやっちゃダメ?もう巫女と巫、決まってるだろうけどそこをなんとか。せっかくだからユーリに体験させてあげたいし…、それにあれはすごく親しい二人でやるんでしょ?僕とユーリにはぴったりだ!」

「アッシュ坊、あんた、あれはね」
「親しいっていうか、そのね」

「ぜひやらせていただきたい。朝露の祈り、屋敷に来ている夫人から聞いたのだよ。誓いを立てた二人で行う儀式だと」

へぇ、ユーリがこんなに前のめりに…それにしても知っていたとは驚きだ。リーネおばさんから聞いたのか。いつの間に…。誓いを立てた二人ねぇ…。初耳だけど、僕とユーリは聖約で結ばれた二人だよ?まさに申し分なしだ。

「けどねぇ公爵様…」

「ぜひお願いしたい。無理は承知だが、巫に決まっていた男女にはそれ相応の詫びはしよう。どうだろうか。」
「お願い母さん!」

「やれやれ。じゃぁ村長に話してくるかねぇ。」

良かった!これでユーリはお祭りを楽しめるし、問題なく御神木へ行ける。一挙両得だ!





「って訳でしてね。いいかしら、うちのと公爵様に任せちゃって」
「そりゃぁ公爵様がお望みなんだ。良いに決まってるが…、巫は結婚の誓いをたてた男女がやるものだろう?ロブンさんや、それでいいのかい?」

「いいもなにも、ただの儀式でしょうに」

「だが儀式を行った二人は生涯睦まじく暮らすんだって言い伝えがあるんじゃなかったかい?そりゃアッシュがここへは戻らないってことだろうに。アッシュは公爵夫人…なんだそりゃ…になるって事か?男なのにかい?」

「まぁねぇ…、けど公爵様は最初からそのつもりで来られたんでしょうよ。それにいまさらアッシュが何になろうが私は何とも思わないわよ」

「そりゃ確かだ。アッシュには今までどれほど驚かされてきたことか!それを思えば公爵様と結婚くらい可愛いものか!」



向こうの方から大きな笑い声が聞こえてくる。あれは母さんと村長だ。まったく母さんの笑い声はいつも大きいんだから。
でもその笑い声こそ良い結果の知らせだとすぐに分かった。




そしてついに夏至祭が始まる。

朝早くから大人たちは準備に大わらわだ。ユーリを四阿に残して僕も手伝いに奔走する。
男たちはかがり火のやぐらを組み、女性陣は料理やお酒を運び、子供たちも飾りつけにはしゃいで全員参加型の祭りは幕を開ける。

夜まで絶やす事の無いかがり火。その周りで歌い踊る人達。
高校の文化祭、僕が通ってた高校じゃファイヤストームなんて無かったけど、少し憧れだったんだよね。だからこの夏至祭が僕は毎年楽しみだった。

「ユーリ!一緒に踊ろうよ。ね、行こう!」
「踊れるかな?私は夜会でも踊った事は無いんだよ」

「いーんだって。ダンスは気合いだ!」

「そうそう。リズムに乗って楽しめばいいんですよ、公爵さま。アレクシさん。」


タピオ兄さんが酔っ払って悪友たちとアレクシさんを引っ張っていく。苦笑いのアレクシさん。兄さんお手柔らかにね…。ああ心配だ…。

「にいさーん!イッキとかさせちゃダメだからねー!」


次々お酒を注がれているアレクシさん。それを横目に僕とユーリはダンスの輪に入る。気ままに体を動かして、見よう見まねで踊りを楽しむ。疲れたら四阿に戻って、お菓子や、みんなが持ち寄った御馳走でお腹を満たし、そしたらまた踊って、…その繰り返し。ユーリはお酒だって飲んだりして。僕はお酒もどきだけど。

なのにいつの間にか酔っぱらってたのは何故?ユーリにしがみついて爆睡してたのは大失態…。
明日は儀式のために朝早いからと、背負われた帰った事すら記憶には無いとは…。


けど酔ってやらかすのもお祭りの醍醐味と、言えなくも無いよね?…多分。






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