チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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102 彼のお味見

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このビリヤードルームから本邸へは柱列によってつながっている。そしてそこから眺める庭先は、なかなか良い感じに整えられている。薔薇が無いのは言うまでも無いけど…。

朝の心地よい空気を吸いながら本館へと足を踏み入れる。別荘だからかな?リッターホルムの屋敷より少し乙女っぽい気がする。

本日の指示とやらを出すため本邸に行ったユーリを探し、少しばかり急ぎ足の僕を呼び留めるのは聞き覚えのある声。


「アッシュ元気だったかい?来ているのは知っていたんだけどね。離れには近づくなって言われててねぇ。公爵様は挨拶も要らないって言うし、そんなの不敬じゃないのかい?って言ったんだけどね。変わり者だね、あの公爵さまは。なんにしても元気そうで良かった。あんたちっとも変わらないからすぐわかったよ。」

「何言ってんの?ほらすごく男らしくなったでしょ?背だってちょっと伸びて!」
「伸びた内に入んないでしょうが、その程度。何ミリだい?」
「うっ!」

この歯に衣着せぬ物言いなのは母さんとも仲の良いリーネおばさん。3年前のあの日、ここで何があったのか、僕に教えてくれたのがここで雑役婦をしているこのおばさんだ。雑役婦と言っても少人数しか常駐して居ないこのお屋敷では、その少人数ですべてをこなす。
掃除、洗濯、庭掃除、そしてシェフが居ない間の炊事まで。めったに人の来ないこの別荘では、シェフは滞在時だけ屋敷から連れてくるんだとか。今回同行したシェフ、もちろんサーダさんではない。サードシェフだ。
歩きながらおばさんはシェフのお料理がいかに美味しかったか熱弁している。なんでもユーリが食べなかった本邸の食事は使用人みんなで平らげたらしい。


「ほら、公爵様がお待ちだよ。公爵様、アッシュをお連れしました。」

「アッシュ、彼女も君の知り合いかい?」
「僕って言うより母さんのね。っていうか、ここでは全員顔見知りだよ。出入りの業者だって長い付き合いの人しか来ないんだから」

「随分徹底してるんだね。過去の当主は何故ここをつくったのかな?アッシュ君、きみ聞いてるかい?」
「さぁ?特に考えたことも無かったけど…。単純に品質保証的な何かだとばっかり」

そう、確かそんな感じに聞いている。リッターホルムへの客人の中にはリッターホルム産の食料を嫌がる人が居るからここで食料を作るんだと。
ずいぶんな言い草だと思ったものだけど…、でもサーダさんは単純にマァの村から運んだ野菜はどれも美味しいと言ってくれた。子爵の鑑定でも、よその野菜よりも栄養価が高いって判定が出て嬉しかったのを覚えてる。ここの野菜は僕の前世の知識によって大きく甘く瑞々しい。他より栄養価が高いのも当然だ。だからてっきりその技術流出を防ぐためとばかり…。でも、もしかしたら何かあるのかもしれない。頭の片隅に置いておくことにしよう。


「アッシュ君、朝の散歩がてら君の実家に寄ったんだが…」
「家に?」


「ああ。タピオ君の手伝いでもと思ったんだが足手まといみたいであきらめたよ。それでだね、夫人が後で中央広場に顔を出すようにと。」

「中央広場?またカッコつけて…。ただの原っぱなんだけどね。もう、母さんってば」


すぐいいカッコしようとするのはどうにかならないかな。謙虚な僕とはえらい違いだ。ホントにもう。





その母さんが言うところの中央広場、そこでは夏至祭の準備に余念がない。

このマァの地の夏至祭、それはとても賑やかなお祭りだ。たくさん並べられた料理とお酒、一日中かがり火を焚き、その周りで大人も子供も、真昼間から夜が更けるまで、女性は花冠を、男は柏葉の冠を頭に乗せて一日中飲んで歌って踊りあかすのだ。

その中でも最も大切な儀式。それが朝露の祈り。
祭りの明けた翌朝、その年選ばれた二人が、御神木のある禁制区へと立ち入りその葉を濡らす朝露を集める。そして前夜のかがり火で出来た灰にその朝露を含ませ、豊穣を願い畑に撒くという、早い話、灰は肥料だから…、けどとても神聖で光栄なお役目。

今年は誰がやるんだろう…?兄さんだったりして…。





「アッシュ!公爵様!こっちこっち!」

祭りの象徴、花冠を作りながら母さんが僕を呼ぶ。っていうか、ユーリまで大声で呼ぶの止めてよ…。

「母さん。それで?僕を呼びだしてどうしたの?」

「せっかくここに居るんだからお祭りに出す苺のケーキ作ってちょうだいよ。母さんが作っても良いんだけど、甘いお菓子はあんたが作ったのが一番美味しいからね。久しぶりに食べたいわ。母さんは芋を蒸かすから頼んだわよ」


それは単純に甘味おかげなのだが…、メープルは定期的に送っているけど母さんはけちけち使うから…。いや、堅実と言っておこうか。


「分かった。じゃぁユーリとイチゴ採りに行っていい?あ、それからユーリもお祭り参加するから簡易の四阿作ってってタピオ兄さんに言っといてよ。」

「よう!アッシュ坊。相変わらずちいせぇなぁ。」

「はぁ?これから伸びるの!小さくないよ!」

「3年前から言ってんじゃねぇか。それより四阿だろ?わざわざタピオに頼まなくてもおじさんが作ってやるよ。」


声をかけてくれたのは3軒隣のトマシュおじさん。父さんの飲み友達だ。3軒隣と言ってもまあまあ離れてるからね。酔っぱらって道に落ちてることも珍しくは無かった。しょうのない大人たちだ。


「アッシュくん、君の言った通り、本当に皆知り合いなんだね。ここは本当に気持ちの良いところだ。」

「アレクシさん、そうでしょ。ここはおとぎの国だからね」



その日は日が暮れるまで、イチゴにラズベリー、ブルーベリーにジューンベリー、いろんなベリーを採りまくった。どうせなら一気に作ってみんなに配っとけばいいかと思って。そのほうが日持ちするしね。

離れに戻ってさっそくジャムやコンポート作りに着手する。そんな僕からユーリは離れない。子供みたいなユーリ。甘い匂いに釣られたのかな?仕方ない…、ちょっとだけだよ?



「はいユーリ、味見だよ。あーん」

パクッ!

「うん、甘くて美味しいよ。」

お夕食前だからね。小さく切ったバケットに乗せたんだけど…、ユーリってば指ごといっちゃう?食いしん坊め。

「ふふ、頬にもついてるよ。」ペロッ

…しかしここへ来てから毎夜繰り広げられるこのラブコメ感は何だっていうんだ…。ホントにもう…







そして問題の翌朝…。

昨日に続いて2回目だしね。今朝はもうちょっとだけ踏み込んでやってみようか…いや、やっぱり、そんなにすごいことは…、ばか!そのための練習じゃないか!ユーリの望みは凄く濃厚で激しくて終わりの無いキス…。あれ?いつの間にそんなことに…。とにかく、ここにいる間にするのは約束なんだから、び、ビビッてどうする!せっかくユーリは寝てるんだし、今のうちに慣れとかないとダメでしょうが!
為せば成る!せーの!



あ~あ~、もう、ユーリってば胸のボタン外れちゃって…。風邪ひくよ?止めといてあげなくちゃ。意外と寝相悪いんだから…。いつものしかかって来るし…。
…気を取り直して、せーの!



ん?やっぱり今日も少し口が開いてるな…。鼻呼吸出来てないんだろうか?喉痛めるから良くないよね、こういうの。今度診てあげようかな…
…それより…、こん、今度こそ。せーの!



ちゅ…そうだ。この間唇噛まれたんだった。お返しに僕も!ダメだ、そんなことしたら起きちゃう…。じゃぁ代わりに今朝は僕がお味見を…ペロッ…うひっ!な、なんかイケナイ気分…。はぁ…何か…オキシトシンとセロトニンが分泌されて、フワフワして…なんて幸福感…。んー…、って、ストープッ!

う…

「と、トイレ…」


バタン、パタパタ、ガタッ!バタバタバタ…ドタッ…バタバタバタ…




「アッシュ…、まだ何もしてないじゃないか。はぁ…未成熟にも程があるだろう…、手洗いに行きたいのはこちらの方だ。全く…」




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