チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
98 / 277
連載

130 兄弟模様

しおりを挟む
「おっ、いたいたユーリウス!良いこと教えてやろう。」

「殿下…」


今回の滞在から妙に馴れ馴れしくなった王太子であるケネス殿下。系図上では遠縁にあたる。アッシュが何やら調べている呪いの根幹、この国の始まり。その始まりの一族を率いた長の3人の子供が私と殿下と姫殿下の祖先だとか言っていたが…不愉快極まりない。

実のところ私は以前よりこの男が好きではなかった。

いつも違う女性を侍らせて、不真面目で不道徳で、そのうえ王家にありながら治世に無関心で、聖王に言われるがまま〝制約”スキルを展開するときでさえ、その表情を見れば何も考えていないのが見て取れる、そんな愚かな王太子。


そのケネスは何が気に入らないのか、大叔父上と共に参内すればいちいち私の元までやって来てはどうでもいい嫌味を並べ立てた。
忌々しそうに道を開け私を避ける貴族たちと違い、自ら近づき大叔父上まで巻き込んでどうでもいい嫌がらせをしていく迷惑かつ面倒な男。あの頃どれほど放っておいてほしいと思ったことか…。
だが大叔父上は窘めることもなさらなかった。今にして思えば相手にもしていなかったと言う事だろう。

その後いろいろあったわけだが、気が付いたらいつの間にかアッシュはケネス殿下と親しく話す仲に…。アッシュ…何故なんだ!君の寛大さには恐れ入るよ!

先に婚姻を済ませておいて本当に良かった…。この国において不義密通は死罪もあり得る重罪。大叔父上が大鉈を振るう今、たとえ王族であろうと無罪とはいかないだろう…。

そのケネス殿下が私に何の用だというんだ!


「王都の郊外にある水路にかかる橋を知っているか?それからあの橋の上で恋人同士がキスをすると永遠が約束されるという言い伝えを…」

「 ‼ 」

「そしてその橋の欄干に南京錠を掛け、その鍵を水路に投げ込むのだ。愛の儀式として。婚姻したからさして興味はないか?いいや、お前はそんな奴じゃない。どうだ、行きたいだろう。」

「 … 」

「だがその橋はもうすぐ修繕のため一時的に閉鎖される。行くのなら今しかない!」
「そっ…!」

「アッシュを誘って明日にでも行ってはどうだ。善は急げだ!屋台なども出てにぎやかだぞ。あいつは喜ぶんじゃないか?なにしろ田舎者だからな。…それから行くなら…ノールも連れていけ…」


なるほどそういう事か。講義をさぼりたいのだな。なにしろこの1週間。アッシュとノールはつきっきりで、文字通り、本当に椅子に括り付けて殿下に政治を学ばせていた。
時折聞こえる殿下の叫び声に今では誰もその周辺には近寄らなくなったとか…。私も一度覗いたが…、様々な心配は杞憂に終わった。決して本人には言わないが、ノールに𠮟責される殿下に同情したのは否めない。

…いいだろう。


「物言いは気に入らないがその案には乗ってやろう。」








「もう!ユーリウス様まで巻き込んで…殿下ったら。」

「まぁまぁノール。君にも気晴らしにちょうどいいだろう?何しろ殿下の授業と自分の講義で全く休暇がないじゃないか。」
「そうだけど…」

「アッシュ君も言っていたよ。切り替えは大事だってね。せっかくなんだ、楽しもうじゃないか」


サボり魔の殿下がすすめる王都観光。意外にもユーリウス様はその提案をお受けになられた。
今までなら王都へ来ても決して大公邸から出ることなど…ましてや観光などなさらなかったのに。なんという変化だろう。婚姻されてからより一層外に目を向けるようになっておられる。これが愛の力…。愛とはこれほどまでに人を強くするのか…

7歳まで王都で過ごしたとはいえユーリウス様は公爵家の王都邸、その敷地のさらに離れから決して出ることはなさらなかったという。

つまりこれはユーリウス様にとっても初めての王都観光。アッシュ君の手を取り浮足立っておられる。ふふ。微笑ましい。


「アレクシ。お前も好きに見てまわるがいい。ノール、アレクシを頼む」

「いえ、私はユーリウス様のお側に」
「今からゴンドラに乗るんだよ。ユーリがどうしても乗りたいって言うから。くるりと一周してくるからゆっくり見ておいでよ」


水路を巡る小さなゴンドラ。恋人同士の定番中の定番…、ユーリウス様ってば意外と浪漫チック…



「お言葉に甘えていこうかアレクシ。一周だけでも一刻はかかるんだよ、あのゴンドラは」

「仕方ない…、じゃぁ屋台でも見に行くとしよう」


でも…、こうして歩くのも悪くないな。ミルウィ橋の市場。たくさんの屋台が立ち並んで…、父上に手を引かれてガラクタの骨董を見た事、そんな子供の頃を思い出す…。


「あっ、アレクシ!あれ!羊の丸焼きだよ。行こう!」

「あ、ああ。ははは、ノール、今日は随分はしゃいでるんだな。でもそうだな。ここは心が躍る」

「ふふ、そうでしょ。でもなぜ今日はこんなに人が…、あっ、修繕の為の閉鎖!だからこんなに集まって…」

「おや?…ノール、あれ。ロビン君じゃないかい?」
「えっ?本当だ。ロビ、…あれは…」

ロビンの視線の先、そこには母親を連れだった一人のご令嬢が…ロ、ロビンってば…。そういうお年頃なんだね…。
なんだか兄として誇らしいような、手が離れて寂しいような、はたまた先を越されて悔しいような、そんな気持ちを味わいながら後ろから小さな声をかけた。

「兄さん!珍しい場所でお会いしますね。アレクシ様もご一緒と言うことはユーリウス様とアッシュさんも…」
「ああ。今はゴンドラで遊覧中だ。」

「素敵ですね。そう言えば兄さん、今日いらした訳では無いのでしょう?うちには戻られないのですか?」
「王城で殿下の御教育に携わっていてね。時間が惜しいんだ」

「殿下の…。そうですか。そのような大役を…。信頼されているのですね。母上もきっとお喜びでしょう」


ロビンの口から母上の名を聞き、僕はふと考えた。
母とは前回の帰省時にも少し口論になってしまった。母には長子である僕を嫡男として家名を負わせるというお考えがどうしても捨てきれないのだ。
何度も何度も話しているのに…後継にふさわしいのはロビンであると。長子だから、ただそれだけで不適当な者に跡を継がすなど…、アッシュ君の言葉を借りるならならまさに愚の骨頂!

これは好機かもしれない…。

少しリッターホルム式に毒されている気もするが…、穏便に納得していただくのを待っていては機を逃しかねない…。


「ロビン、では母上に伝えてくれるかい。兄は平民の教育に従事し知識水準を高めるよう殿下、そして公爵閣下、…えぇと、それから直に国王となられる大公からも、き、教育主管の大任を仰せつかったと。その為の大きな教育施設をこれからリッターホルムに…作る予定で、…その…と、特別な位を賜るためショーグレンの名は負えません、と。」

「⁉」

「そうなのですね…!す、凄いことです兄さん!」
「ロビン、お前にはショーグレンを背負ってもらわねばならなくなるが…、覚悟は良いね」

「もちろんですとも兄さん。王族方からの信頼篤き兄さんの名を汚す事無いよう、必ずやショーグレンはこのロビンが守って見せましょう!」





ロビンと別れ橋の袂へと戻る道すがら、アレクシが笑いながら問いかけてきた。分かってるくせに…


「いつの間にそんな大層な任を仰せつかったんだい?」





しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。