チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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131 彼の周りで蠢く者

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実に珍しいこともあるもんだ。王宮に戻って聞かされたノールさんからのちょっとした懇願。ちょっとした…?

「ご、ごめんね、勝手にこんなこと…。で、でもアッシュ君も言ってたじゃないか。リッターホルムの領民に教育を施したいって!」

「言ったけど…、それもうリッターホルムだけの話じゃ無くなってるよね?」

「うぅ…」

「いいや。私は実に良い考えだと思うぞ。お前たちの言う立憲君主制には民衆の知的水準を上げることも大切なんだろう?良いことじゃないか!」


サボりたいがためユーリを唆したケネスは再び椅子に括りつけられた。ほんとに浅はかなんだから…
そのケネスが何故か乗り気でノールさんの後押しをする。…この顔…、ピュアな気持ちとは思えないな…


「殿下…。ようやくお分かりいただけたのですね。そうです。その通りです!」
「うむ。これもノールとアッシュのおかげだ。よってお前にはその話の通りに位を授けても良いと思っている」


ノールさんと僕のおかげ…?ほ~ら、やっぱり。怪しい…、怪しすぎる…。


「アッシュよ。王太子の名を持って命じる。リッターホルムに教育施設を建造せよ。そしてそこには将来性のある若者を王都からも送り込む。その責任者が…ノールだ。ノール、お前は責任をもってこの国の未来をしょって立つ若者を育てるのだ!位は…何にするか…、リッターホルム治下の一代貴族位とし勅命を持って教育長官に任命する!なぁに、これまでの恩に報いただけだ。礼には及ばん」

「で、殿下…」


「なにが「礼には及ばん」だ!王太子の名を持って命じるだって?王子にそんな権限あると思ってんの!魂胆は見え見えなんだよっ!…けどまぁいいや。悪い話でもないしね。大公に確認は取るけど、まぁその線で行こうか。」


こうしてリッターホルムに、聖王国初の平民参加型学術院、カレッジが誕生する事となった。
学費は給付型奨学金。ただし狭き門だ。当然だ。
急な話だったけど問題ない。少しずつリッターホルムを世間に解放していかなくては…。
そのためにも春になったら色々計画を進めないとね…、楽しみだな!






そんなご機嫌な僕と対照的に目の前には肩を落としたビョルンさん。

彼は先日の12家会議の後、リッターホルムに籍を移した元ルサンブール侯爵家の縁者で南西の領館でフットマンをしていた期待の若者だ。今はリッターホルムの従士となったが侯爵家の復興をかけ頑張っている。
その彼ともうひとり復興を目指すイングウェイさんを今回随行したのは社会見学も兼ねての事だ。
元侯爵家の縁者とは言え、彼らは平民として暮らしてきたのだ。高位の社会を覚えていく必要がある。いい機会だったのだが…

これはどうした事だろう…。


「それでどうしたって?そんなに気落ちして…。僕に出来ることなら力になるから元気出しなよ」
「ありがとうございますアッシュ様…。実は…」


彼、ビョルンさんのお母さんは、自分が元侯爵家に連なるものだという矜持の…早い話が余計な見栄の強いご婦人だったらしい。
実を粉にして働き早々に過労で亡くなった父親に代わり、彼ビョルンさんはその母親と幼い弟妹を給与の全てをはたいて必死に養っていた。
彼の勤める南西の領地、そこはとある侯爵家の領地。そこのお嬢様に気に入られたことで比較的いい稼ぎをもらっていたそうなのだが…
  

「私にも言わず母が令嬢から金を借りていたようで…、私が居る間は不問にしていただけていたようですがリッターホルムに籍を移したことで不興を買ったようで…、すぐにでも返せと、昨日お嬢様の滞在する王都邸から書簡が…。」

「ふぅん、じゃぁ返しちゃいなよ。足りなければ立て替えるよ?」

「それが元金だけだは駄目だと…」

「可愛さ余って憎さ百倍ってやつか。で、どれくらい?」

「いえ、その…」
「良いから言いなよ。埒が明かない。僕は面倒なのが好きじゃないんだ」

「その、返済は元金だけで良いから王都に居る間にお嬢様が主催する夜会へ…、アッシュ様を連れてこい…と。」


な、なんだと!


「聞いていい?というか聞かなくては。そのお嬢様の名前は?」


「ビルギッタお嬢様、オーケソン侯爵家の一人娘でもあられるビルギッタ・オーケソン令嬢でございます。」

「あいつかー!」






💀--------------------------------


この秋王都に駆け巡った信じられない話。

あのリッターホルムの毒公爵、ユーリウスが、小さな子供を娶ったというのだ。
もちろんその子供は子供の様に見えるだけで子供ではない。…だが男だ。ユーリウスの暇を満たす小姓。
この聖王国において婚姻は異性同士で行うもの。いくら人々から忌避され孤独とはいえ…、そこまで追い詰められたか、ユーリウスよ。ふふ、実に愉快な事…。

なのにこの胸騒ぎは…?

ユーリウスに呪詛を吐くカルロッタは世を儚んで逝ってしまった。気の強い貴族の女であればわたくしを恨み、怒り、闇に落ちると思っていたのに…思いのほか脆弱だこと。
だが計画の為の予備なら他でもない、カルロッタ自身が用意してくれた。とびきりうってつけの代用を。

王都に置き去りにされたユーリウス。父親も、母親も、使用人の情すら取り上げて下地は十分仕上がった。歴代にも、ここまで世間から忌み嫌われたリッターホルム公は居なかったはず。偶然とはいえあの聖王はなかなかいい仕事をしてくれたわね。そして最後の仕上げはリッターホルムで。そう思っていたのだけれどね…さようならカルロッタ…。

けれどあの日マテアスに会う為王都へ来たユーリウスの感情が抜け落ちた顔ときたら…どれほど傑作だったか。これで計画に狂いはないと確信できた。あの瞳は日一日と暗く、深く、憤怒と怨嗟で深淵に沈んでいく…。


ある日社交界デビューの為に大公閣下に連れられやって来たユーリウス。
ビルギッタに「あの毒公爵が躾の悪い子供を連れだってやって来たのよ、身の程知らずな」そう聞いてどれほど驚いたか。
ユーリウスにとって唯一の頼れる大人、大公閣下の遠縁の知り合いの子供。ユーリウスを心配してあの大公閣下が遊び相手を用意した。王都での噂など何も知らない田舎の子供を…。

偶然かしら…?その子供が現れてから思ったように上手くいかない…。

リッターホルムへの出入りはより一層固く閉ざされ私とマテアス、そして息子は決して立ち入れなくなってしまった…。あの関所の役人め…。端た金では動かないなどと…。いいえ、そうでは無い。
毒公爵への恐怖は予想以上に効きすぎたのだ…。誰もユーリウスには近づかない、ユーリウスを怒らせない…、つまりリッターホルムには決して逆らわない。…誤算だった…。

ユーリウスを孤独に堕とすためどれほど駒を動かしても直接関与できなくてはすべてが半端な結果となる。

そして王城での地震。その場にあの子供が居たのはやはり偶然などでは無い!では地震はあの子供のスキル…?農家の子だという話…、では土を操るスキル…。小賢しい農夫の子め!
なんにしてもあの地震によって聖王はユーリウスを受け入れてしまった…。そしてこの婚儀…。


会わなければならない。その小さな農家の子供に。




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